17:15 〜 18:45
[SVC28-P04] 九重地熱地域における遠地地震の自己相関関数を用いた地下構造の推定
キーワード:地熱、地震波干渉法、自己相関、九重
従来の地熱発電よりも数倍の生産能力を持つとされている超臨界地熱システムが九重地熱地域に存在する可能性があり、これまでに様々な調査が同地域で行われてきた。分解能の高い探査方法として、反射法地震探査が挙げられるが、高価で大掛かりな機器を用いたとしても地熱地域の複雑な地下構造により、明確な地層境界面が得られないことも多い。本研究では、九重地熱地域で観測された自然地震に対し、受動的かつ低コストで実施できる地震波干渉法を用いた反射面のイメージング手法を適用し、九重地域の深部の基盤構造を明らかにすることを目的とする。
本研究では、地下深部の構造を推定するために、低周波が卓越するマグニチュードの大きい遠地地震の地震波データを用いた。まず九重地域に設置された地震計で観測した地震波データに、0.05 Hz〜1.2 Hzの低周波域のバンドパスフィルターを適用することで、低周波域の地震データを抽出した。このデータに対し地震波干渉法に基づく自己相関処理を行うことで、各地震計直下からの反射信号を含む自己相関関数が得られた。この自己相関関数には往復走時2秒から4秒に明瞭な信号が見られ、近傍の地震計間との整合性を考慮しながら各地震計の往復走時を求めた。さらに反射面までのP波速度を3.3 km/secと仮定し、地震計から反射面深度までの距離を求め、各地震計の標高から、求めた地震計から反射面深度までの距離を引くことで海抜以下の反射面深度を求めた。その結果、調査地域の南側では深度が約1.5 km〜3 kmと比較的浅い深さに反射面が存在し、北側へ向かうにつれ深度が深まり、最深部では深度が約5kmに達した。
本研究で求められた反射面深度の結果と過去に行われた重力探査で推定された基盤岩深度の結果を比較すると、調査地域の南西側では比較的深度が浅く、北東側になるにつれ次第に深くなるという全体的な傾向が一致していた。この基盤の深まりは、重力探査により推定された猪牟田カルデラに起因する凹部に対応していると考えることができる。本研究により求めた反射面深度は重力探査による基盤深度と概ね整合的であるため、遠地地震の自己相関により抽出した反射波は基盤上面からのものであると考えられる。
本研究結果より、地震波干渉法に基づく遠地地震の自己相関解析は、地熱地域において低コストで広範囲の基盤構造の推定に有効であると考えられる。地熱地域では微小地震モニタリングのために長期の地震観測が実施されることが多いため、微小地震モニタリングを目的としたデータに本解析を適用し新たな付加価値をもたらすことができると考えられる。
謝辞:本研究では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)の委託事業「超臨界地熱資源量評価(九重地域)」で取得した地震計データを利用させていただきました。
本研究では、地下深部の構造を推定するために、低周波が卓越するマグニチュードの大きい遠地地震の地震波データを用いた。まず九重地域に設置された地震計で観測した地震波データに、0.05 Hz〜1.2 Hzの低周波域のバンドパスフィルターを適用することで、低周波域の地震データを抽出した。このデータに対し地震波干渉法に基づく自己相関処理を行うことで、各地震計直下からの反射信号を含む自己相関関数が得られた。この自己相関関数には往復走時2秒から4秒に明瞭な信号が見られ、近傍の地震計間との整合性を考慮しながら各地震計の往復走時を求めた。さらに反射面までのP波速度を3.3 km/secと仮定し、地震計から反射面深度までの距離を求め、各地震計の標高から、求めた地震計から反射面深度までの距離を引くことで海抜以下の反射面深度を求めた。その結果、調査地域の南側では深度が約1.5 km〜3 kmと比較的浅い深さに反射面が存在し、北側へ向かうにつれ深度が深まり、最深部では深度が約5kmに達した。
本研究で求められた反射面深度の結果と過去に行われた重力探査で推定された基盤岩深度の結果を比較すると、調査地域の南西側では比較的深度が浅く、北東側になるにつれ次第に深くなるという全体的な傾向が一致していた。この基盤の深まりは、重力探査により推定された猪牟田カルデラに起因する凹部に対応していると考えることができる。本研究により求めた反射面深度は重力探査による基盤深度と概ね整合的であるため、遠地地震の自己相関により抽出した反射波は基盤上面からのものであると考えられる。
本研究結果より、地震波干渉法に基づく遠地地震の自己相関解析は、地熱地域において低コストで広範囲の基盤構造の推定に有効であると考えられる。地熱地域では微小地震モニタリングのために長期の地震観測が実施されることが多いため、微小地震モニタリングを目的としたデータに本解析を適用し新たな付加価値をもたらすことができると考えられる。
謝辞:本研究では、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構(NEDO)の委託事業「超臨界地熱資源量評価(九重地域)」で取得した地震計データを利用させていただきました。