日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC28] 火山の熱水系

2024年5月30日(木) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:藤光 康宏(九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門)、神田 径(東京工業大学科学技術創成研究院多元レジリエンス研究センター)、谷口 無我(気象庁気象研究所)

17:15 〜 18:45

[SVC28-P05] 統合物理探査による九重火山深部地下構造と地熱概念モデル (第2報)

*西島 潤1北村 圭吾1相澤 広記1石橋 純一郎2辻 健3池田 達紀1副田 宜男4、稲垣 陽大4、齋藤 博樹4、佐藤 龍也5、大里 和己5 (1.九州大学、2.神戸大学、3.東京大学、4.西日本技術開発(株)、5.地熱技術開発(株))

キーワード:九重火山、大岳・八丁原地熱地域、超臨界地熱資源、地熱系概念モデル、熱水流動シミュレーション

大分県中部に位置する九重火山は、現在も活発な噴気地域が存在し、1995年には水蒸気爆発を起こした活火山である。本地域では新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による超臨界地熱資源量評価(九重地域)が2021年より進行している。本プロジェクトでは九重火山深部に推定される低比抵抗域(Aizawa, 2022)の辺縁部に存在が推定されている超臨界地熱貯留層の位置や形状をMT探査、反射法地震探査などの地球物理学的調査だけではなく、地質学的、地球化学的調査も実施し、その結果を既存調査データと統合することにより本地域の深部から浅部までの熱水流動概念モデルの作成し、深部超臨界地熱資源量評価に取り組んでいる。
 昨年は、本地域の比抵抗分布(Aizawa et al., 2022)を中心に重力異常から推定される重力基盤構造、噴気・地獄のガス同位体分析(Ishibashi et al., 2022)等の結果に基づいて作成した本地域の地熱系概念モデルについて報告した。本概念モデルから八丁原地域に存在する断層の一部は基盤深部まで続いており、深部からのマグマ性流体の流路になっている可能性が推定された。また、本地域に掘削された坑井の温度分布から、黒岩山の西側に高温部が検出されており、観測された震源位置はこの高温部に多く検出されている。このことから黒岩山西部には深部からマグマ性流体を伴った高温の地熱流体の上昇路が存在することも考えられる。
 本プロジェクトでは昨年の報告後に、反射法地震探査、地化学の追加調査、黒岩山で新たに確認された新しい年代の火山活動の形跡(副田ほか, 2023)など新たな知見が得られたことから、これらの結果を加えて、概念モデルの更新を行なった。また、更新された概念モデルを基に3次元熱水流動モデリングを行った結果、深部貯留層と地熱開発が行われている八丁原・大岳地域浅部貯留層について温度・圧力を概ね説明することができるモデルを推定した。本報告では更新された概念モデル及び熱水流動モデリング結果について報告する。