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[SVC28-P10] 炭素安定同位体組成から推定する九州八丁原地熱地帯の炭化水素ガスの起源
キーワード:八丁原地熱地帯、炭化水素ガス、炭素安定同位体比
地熱とは地球内部の熱をさし,火山周辺にはマグマや高温貫入岩体を熱源として高温の地熱地帯が発達している.日本は世界有数の火山国であり,地熱資源に富んでいる.地熱資源は地下から高温の流体を取り出して利用することから,地熱資源の開発には地熱地域の地下の調査が不可欠である.地化学探査では,地熱域や周辺で採取される温泉水や噴気ガスなどを分析することで地熱貯留層の存在や分布・温度を推定する.八丁原地熱域において液体試料による地化学探査は行われてきているものの地熱流体のガス化学については報告が少ない.本研究では八丁原地熱発電所の地熱井および発電所周囲の噴気ガスを採取・分析することで八丁原地熱地帯の地熱ガスの起源・挙動を推定することを目的とする.
八丁原地熱発電所およびその周辺の噴気ガスを採取し,噴気ガス中の二酸化炭素の炭素安定同位体比(δ13C-CO2)と濃度,炭化水素ガス(メタン,エタン, プロパン)の炭素安定同位体比(δ13C-CH4, -C2H6, -C3H8)と濃度を測定した.
八丁原地熱井のメタンの炭素同位体比(δ13C-CH4)は-29 ~ -26‰ (平均 -28‰,n=4),メタン/エタン濃度比(C1/C2)は56 ~ 479 (平均 235,n=4)であった.周辺の試料のδ13C-CH4は-30 ~ -23‰ (平均 -25‰,n=20),C1/C2は53 ~ 1256 (平均 374,n=20)であった.これらの試料は一般的な熱分解起源に対してδ13C-CH4,C1/C2が大きい値をとった.このようにδ13C-CH4,C1/C2が一般的な熱分解起源メタンに比べて大きいメタンの起源として,1)熟成の進んだ有機物の熱分解により生成した熱分解起源メタンと,2)熱分解起源メタンと非生物起源メタンの混合の二つの可能性が考えられる.
上記の2つの可能性についてδ13C-CH4, -C2H6, -C3H8を用いて考察した.各炭化水素ガスの炭素同位体比の平均値を比較すると,各炭化水素ガスの炭素同位体比の平均はδ13C-CH4= -26‰(n=34),δ13C-C2H6 = -23‰(n=22),δ13C-C3H8 = -21‰(n=5)となり,炭素数が小さいほどδ13Cの平均値が小さくなっていた.これは熱分解起源炭化水素ガスの特徴であり,八丁原地熱井およびその周辺の試料は非生物起源ではなく,熱分解起源である可能性が高い.
δ13C-CO2とδ13C-CH4の間の炭素同位体分別を用いた炭素同位体交換平衡温度計により見かけ平衡温度(Horita, 2001により計算)を求めた.八丁原地熱井の見かけ平衡温度は平均386 ℃(n=6),周辺の試料の見かけ平衡温度は平均418 ℃(n=24)になり,報告されている地熱貯留層の温度よりも高い温度を示した.八丁原地熱地帯では,有機物の熱分解により発生したメタンが貯留層以深の高温下で同位体交換を起こし平衡となり,これらのガスが地表まで上昇し,噴気ガスとして噴出している可能性がある.
八丁原地熱発電所およびその周辺の噴気ガスを採取し,噴気ガス中の二酸化炭素の炭素安定同位体比(δ13C-CO2)と濃度,炭化水素ガス(メタン,エタン, プロパン)の炭素安定同位体比(δ13C-CH4, -C2H6, -C3H8)と濃度を測定した.
八丁原地熱井のメタンの炭素同位体比(δ13C-CH4)は-29 ~ -26‰ (平均 -28‰,n=4),メタン/エタン濃度比(C1/C2)は56 ~ 479 (平均 235,n=4)であった.周辺の試料のδ13C-CH4は-30 ~ -23‰ (平均 -25‰,n=20),C1/C2は53 ~ 1256 (平均 374,n=20)であった.これらの試料は一般的な熱分解起源に対してδ13C-CH4,C1/C2が大きい値をとった.このようにδ13C-CH4,C1/C2が一般的な熱分解起源メタンに比べて大きいメタンの起源として,1)熟成の進んだ有機物の熱分解により生成した熱分解起源メタンと,2)熱分解起源メタンと非生物起源メタンの混合の二つの可能性が考えられる.
上記の2つの可能性についてδ13C-CH4, -C2H6, -C3H8を用いて考察した.各炭化水素ガスの炭素同位体比の平均値を比較すると,各炭化水素ガスの炭素同位体比の平均はδ13C-CH4= -26‰(n=34),δ13C-C2H6 = -23‰(n=22),δ13C-C3H8 = -21‰(n=5)となり,炭素数が小さいほどδ13Cの平均値が小さくなっていた.これは熱分解起源炭化水素ガスの特徴であり,八丁原地熱井およびその周辺の試料は非生物起源ではなく,熱分解起源である可能性が高い.
δ13C-CO2とδ13C-CH4の間の炭素同位体分別を用いた炭素同位体交換平衡温度計により見かけ平衡温度(Horita, 2001により計算)を求めた.八丁原地熱井の見かけ平衡温度は平均386 ℃(n=6),周辺の試料の見かけ平衡温度は平均418 ℃(n=24)になり,報告されている地熱貯留層の温度よりも高い温度を示した.八丁原地熱地帯では,有機物の熱分解により発生したメタンが貯留層以深の高温下で同位体交換を起こし平衡となり,これらのガスが地表まで上昇し,噴気ガスとして噴出している可能性がある.