09:45 〜 10:00
[SVC29-04] 姶良カルデラにおける海底地盤変動装置と設置後の経過
キーワード:海底地殻変動観測、GNSS、姶良カルデラ
1.はじめに
九州南部の姶良カルデラ中央部の海底における火山性地盤変動の直接の計測を狙って設置された海底地盤変動観測装置とその観測データについて報告する。
海底地盤変動観測装置(以下、本観測装置と称する)は桜島の北東沖2.2kmの水深30mの場所に設置された。本観測装置は全長約40m、全重量は40tでそのうちアンカーは19tである。本体は海底に定置されたアンカーとそれにユニバーサルジョイントで結合されたブイから構成されており、ブイ頂部は水面上に露出する。本観測装置には計測システムとしてGNSS受信機システム4式とLTEモバイルルーター1台、300Wソーラーパネルと300Ahのリン酸鉄リチウムイオン電池からなる計測機器用電源が搭載されている。海中の障害物であることを示す航路標識灯も搭載され、日没後に点灯を実施している。
本観測装置の測位はブイ頂上のGNSSアンテナで行い、測位データはLTE回線を経由して陸上基地局(桜島火山観測所)に回収される。測位データの回収は原則として1日1回自動的に行われる。
2.測位方法と成績
本観測装置は2023年3月7日の設置以来翌年1月21日まで320日間にわたり1日以上の欠測なしに連続して測位を続けている。
本観測装置を連続運用するにあたり、測位のデータの回収からデータ編集、ポストプロセシングキネマティック解析、ブイ姿勢補正を経て海底のアンカー頂部の座標を導出する自動処理システムを開発し、桜島火山観測所に設置されたPC装置で運用している。本観測装置は風波などの外力によるブイの傾動を許す構造になっているために、ブイ頂部における測位結果にはブイの傾動に伴う変位が重畳している。このようなブイ姿勢補正には筒井ら(2022)で開発されたGNSSアンテナアレイを用いたアルゴリズムを検証の上(筒井ら、2021)採用している。
測位結果は単峰型の分布で水平方向の標準偏差0.17m、垂直方向の標準偏差0.017mであった。
測位結果の妥当性を検討するために、本装置の測位結果の上下成分を周囲のGNSS観測点のそれと比較した。周囲の観測点の上下成分は大局的にほぼフラットな経過を示しているのに対して、本観測装置の上下成分は時間の経過とともに沈下が増大しており、異なる傾向を示している。2024年1月末までの設置後311日間で約4cmの沈下を観測した。これは初期沈下と考えられる。
このことから本観測装置は本体そのものの局所沈下が進行していると考えられるが、局所沈下の動きがおさまれば初期の期待通りに年1cm程度の火山性上下変動を捉えることができるものと考えられる。
九州南部の姶良カルデラ中央部の海底における火山性地盤変動の直接の計測を狙って設置された海底地盤変動観測装置とその観測データについて報告する。
海底地盤変動観測装置(以下、本観測装置と称する)は桜島の北東沖2.2kmの水深30mの場所に設置された。本観測装置は全長約40m、全重量は40tでそのうちアンカーは19tである。本体は海底に定置されたアンカーとそれにユニバーサルジョイントで結合されたブイから構成されており、ブイ頂部は水面上に露出する。本観測装置には計測システムとしてGNSS受信機システム4式とLTEモバイルルーター1台、300Wソーラーパネルと300Ahのリン酸鉄リチウムイオン電池からなる計測機器用電源が搭載されている。海中の障害物であることを示す航路標識灯も搭載され、日没後に点灯を実施している。
本観測装置の測位はブイ頂上のGNSSアンテナで行い、測位データはLTE回線を経由して陸上基地局(桜島火山観測所)に回収される。測位データの回収は原則として1日1回自動的に行われる。
2.測位方法と成績
本観測装置は2023年3月7日の設置以来翌年1月21日まで320日間にわたり1日以上の欠測なしに連続して測位を続けている。
本観測装置を連続運用するにあたり、測位のデータの回収からデータ編集、ポストプロセシングキネマティック解析、ブイ姿勢補正を経て海底のアンカー頂部の座標を導出する自動処理システムを開発し、桜島火山観測所に設置されたPC装置で運用している。本観測装置は風波などの外力によるブイの傾動を許す構造になっているために、ブイ頂部における測位結果にはブイの傾動に伴う変位が重畳している。このようなブイ姿勢補正には筒井ら(2022)で開発されたGNSSアンテナアレイを用いたアルゴリズムを検証の上(筒井ら、2021)採用している。
測位結果は単峰型の分布で水平方向の標準偏差0.17m、垂直方向の標準偏差0.017mであった。
測位結果の妥当性を検討するために、本装置の測位結果の上下成分を周囲のGNSS観測点のそれと比較した。周囲の観測点の上下成分は大局的にほぼフラットな経過を示しているのに対して、本観測装置の上下成分は時間の経過とともに沈下が増大しており、異なる傾向を示している。2024年1月末までの設置後311日間で約4cmの沈下を観測した。これは初期沈下と考えられる。
このことから本観測装置は本体そのものの局所沈下が進行していると考えられるが、局所沈下の動きがおさまれば初期の期待通りに年1cm程度の火山性上下変動を捉えることができるものと考えられる。