[S-VC29] 火山の監視と活動評価

[SVC29-05] ディスドロメータの降灰観測による桜島の火山灰連続放出のモニタリング

*瀧下 恒星¹、小園 誠史¹、三輪 学央¹、井口 正人² (1.防災科学技術研究所 火山防災研究部門、2.京都大学防災研究所火山活動研究センター)

キーワード：火山灰連続放出、ディスドロメータ、桜島

桜島は日本で最も活動的な火山の一つであり，その典型的な噴火様式はブルカノ式噴火と，それに続く火山灰連続放出である(Poulidis et al., 2019)。ブルカノ式噴火は爆発的で短時間に数千トンの火山灰を放出する。一方で，火山灰連続放出は，数十分から数時間の間，間欠的に少量の火山灰を放出させる現象で，継続時間が長い場合にはブルカノ式噴火に近い重量の火山灰が放出することもある。そのため，火山灰連続放出の噴出量は桜島の火山活動を評価する上で無視できない。ブルカノ式噴火における火山灰の噴出量は，地盤変動と地震動振幅から見積もることができる（Iguchi, 2016）が，火山灰連続放出においては，現状ブルカノ式噴火から得られた経験的な式を便宜的に適用して噴出量が見積もられており，その妥当性は検証されていない。そこで，本研究では，ディスドロメータで降灰を高時間分解能で計測することで，火山灰連続放出イベントを検知し，降灰量を見積もることを試みた。京都大学防災研究所附属桜島火山活動研究センターは，桜島の島内にディスドロメータ観測網を整備し，毎分の降灰粒子を計数している（Iguchi et al., 2019）。2019年1月から6月に計測された降灰計測結果のうち降雨があった期間を除外し，一定時間以上降灰が断続的に続いた，火山灰連続放出によると推定される降灰イベントを抽出した。
抽出された降灰イベントと，有村観測坑道で計測された地震動記録を比較したところ，18事例において，地震振幅の脈動的変化の5～15分後に連動するように降灰量が変化した。地震動振幅における各脈動の積算値と，それに対応する降灰の脈動に対してディスドロメータの観測データに経験的な換算式（Takishita et al., 2022）を適用して見積もった1地点の降灰量の積算値の間には，正の相関の傾向が見られた。火山灰連続放出においては噴煙高度および火山灰の輸送過程が比較的安定しているため，降灰量の時間変化が噴出量の時間変化に連動すると考えられる。したがって，この結果は，桜島のブルカノ式噴火で見られた地震動振幅と噴出量の関係が火山灰連続放出にも適用できることを示唆している。ディスドロメータが火山灰連続放出における噴出量の相対的な時間変化のモニタリングに貢献することが期待され，今後は効果的に脈動的変化を検出できる観測点の条件や，脈動の時間差と風速の関係を検討する。