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[SVC29-P01] 箱根火山における自動採水装置を用いた河川水の水質モニタリング
キーワード:箱根火山、大涌谷、水質モニタリング、自動サンプリング、Cl-/SO42-比
箱根火山は、2001年以降数年おきに群発地震や山体膨張を伴う火山活動の活発化が見られ、2015年には大涌谷でごく小規模な水蒸気噴火が発生した。大涌谷を流れる河川(大涌沢)の水質モニタリング結果によると、2015年噴火の直後に塩化物イオンと硫酸イオンの濃度比(Cl-/SO42-比)の上昇が確認された(菊川ほか、2018)。これは、火山活動の高まりに伴い、HClなどマグマ起源のガスの供給量増加を反映している可能性がある。しかしながら、採水は月に1度程度の頻度であったため、噴火前後の詳細な水質変化を捉えることはできなかった。
一方、平穏時における大涌沢の水質は、降雨や人為的な要因(例えば、蒸気による温泉造成施設の整備など)により変化する可能性がある。その詳細を理解することは、水質を通して火山活動の消長を評価する上での基礎データとなるが、従来の現地調査によるモニタリングでは、やはり採水頻度の低さが課題となる。本研究では、大涌沢への自動採水装置の導入により、高い時間解像度での水質モニタリングを試み、それにより把握された短期的な水質変動とその要因について検討する。
大涌沢の水質モニタリングには、自動採水装置(GOFAT, Ono et al., 2020)を使用した。自動採水装置は、高さ約5mの堰堤の下流側に設置し、長さ約15mのポリエチレン製のチューブ(内径:15 mm)を使用して、自動採水装置まで河川水の流動経路を確保した。河川水は自動採水装置付属の貯留容器に流入し、貯留容器から溢れた分を排出することで常に容器内の水が入れ替わる仕組みにした。自動採水装置は、予め設定した時間間隔で貯留容器から河川水の汲み上げと所定のバイアル瓶への注入作業を連続して行う。観測項目は、貯留容器内に設置したロガーにより水温とpHの連続測定を行い、バイアル瓶に採取した試料水は、後日まとめて回収し、イオンクロマトグラフィーを用いて溶存成分濃度を測定した。
2023年10月13日~17日の間に、3時間おきの採水による水質モニタリングを実施した。その結果、15日0時から12時の間にCl-/SO42-が0.22から0.26へ上昇した。その時間帯に降雨が記録されていることから、降雨によるCl-/SO42-の一時的な変動を捉えたものと考えられる。また、pHの連続測定の結果から、毎日10時頃をピークとするpHの一時的な低下がみられた。その時間帯には蒸気による温泉造成施設のメンテナンス作業が行われていることから、人為的な要因による水質変動と考えられる。次にこの水質変動の詳細を把握するため、11月10日~16日の間の午前9時から12時まで、1時間に1回の頻度で採水を実施した。7日間の各時間帯のCl-/SO42-を比較すると、9時台はCl-/SO42-が低く日間変動も小さいのに対して、10時台ではCl-/SO42-が上昇し、日間変動が大きかった。11時、12時になると再びCl-/SO42-は低下し、日間変動も小さくなっていた。本研究で使用した自動採水装置は大涌沢の水質モニタリングに十分適用が可能である。さらに、今回明らかとなったCl-/SO42-の降雨時及び1日の中での周期的な変動特性は、水質を通した火山活動評価のための基礎データとなる。
一方、平穏時における大涌沢の水質は、降雨や人為的な要因(例えば、蒸気による温泉造成施設の整備など)により変化する可能性がある。その詳細を理解することは、水質を通して火山活動の消長を評価する上での基礎データとなるが、従来の現地調査によるモニタリングでは、やはり採水頻度の低さが課題となる。本研究では、大涌沢への自動採水装置の導入により、高い時間解像度での水質モニタリングを試み、それにより把握された短期的な水質変動とその要因について検討する。
大涌沢の水質モニタリングには、自動採水装置(GOFAT, Ono et al., 2020)を使用した。自動採水装置は、高さ約5mの堰堤の下流側に設置し、長さ約15mのポリエチレン製のチューブ(内径:15 mm)を使用して、自動採水装置まで河川水の流動経路を確保した。河川水は自動採水装置付属の貯留容器に流入し、貯留容器から溢れた分を排出することで常に容器内の水が入れ替わる仕組みにした。自動採水装置は、予め設定した時間間隔で貯留容器から河川水の汲み上げと所定のバイアル瓶への注入作業を連続して行う。観測項目は、貯留容器内に設置したロガーにより水温とpHの連続測定を行い、バイアル瓶に採取した試料水は、後日まとめて回収し、イオンクロマトグラフィーを用いて溶存成分濃度を測定した。
2023年10月13日~17日の間に、3時間おきの採水による水質モニタリングを実施した。その結果、15日0時から12時の間にCl-/SO42-が0.22から0.26へ上昇した。その時間帯に降雨が記録されていることから、降雨によるCl-/SO42-の一時的な変動を捉えたものと考えられる。また、pHの連続測定の結果から、毎日10時頃をピークとするpHの一時的な低下がみられた。その時間帯には蒸気による温泉造成施設のメンテナンス作業が行われていることから、人為的な要因による水質変動と考えられる。次にこの水質変動の詳細を把握するため、11月10日~16日の間の午前9時から12時まで、1時間に1回の頻度で採水を実施した。7日間の各時間帯のCl-/SO42-を比較すると、9時台はCl-/SO42-が低く日間変動も小さいのに対して、10時台ではCl-/SO42-が上昇し、日間変動が大きかった。11時、12時になると再びCl-/SO42-は低下し、日間変動も小さくなっていた。本研究で使用した自動採水装置は大涌沢の水質モニタリングに十分適用が可能である。さらに、今回明らかとなったCl-/SO42-の降雨時及び1日の中での周期的な変動特性は、水質を通した火山活動評価のための基礎データとなる。