15:30 〜 15:45
[SVC30-06] 1万9千年前の星山期終盤における富士山の火山活動
キーワード:富士山、星山期、爆発的噴火、テフラ、噴火履歴
現在の富士山山体は新富士と呼ばれ、そのほとんどは、富士宮期(1万7000年前から8000年前)と須走期(8000年前から現在)の火山噴出物で覆われている。そのため、古富士と呼ばれる星山期以前(10万年前から1万7000年前)の噴火履歴は十分に理解されていない(例えばYamamoto et al., 2021)。富士山の長期的な火山活動を解明する為に、我々は噴火履歴の調査に取り組んでいる。富士山山頂から東に約18 km離れた地点にある高速道路の工事現場において、比較的連続性の良い富士山の噴出物から構成される露頭が露出した。この場所は、複数のテフラ層と土壌層、岩屑なだれ堆積物層が認められるが、溶岩流は見られない。須走期の堆積物は、上位から1707年の宝永噴火に伴うスコリア/軽石層、約1100年前の大御神岩屑なだれ堆積物(山元ほか,2020)、6枚のスコリア層、約2900年前の御殿場岩屑なだれ堆積物、5枚のスコリア層、8000年前から5600年前の富士黒土層である。新富士のテフラ層は厚さが10 cmから40 cm、粒径は0.5 cmから2 cm、最大粒径は4 cm未満である。また、粒子の形状は様々で、層ごとに異なる。その下位には富士宮期以前のスコリア層が十数枚と約1万9000年前の馬伏川岩屑なだれ堆積物層(西澤ほか,2023)が露出する。その下位には少なくとも8枚のテフラ層が認められる。岩屑なだれ堆積物層とテフラ層上面との境界はシャープでありほぼ水平である。
8枚のテフラ層の厚さは5 cmから40 cmで、粒径が1 cmから4 cmのやや角ばったスコリア粒子から構成される。また、上位から4層目と8層目には、粒径が8 cmから15 cmの大きなスコリア粒子又は火山弾が数個含まれており、その内部は赤色酸化している。同様の層序と大きなスコリア粒子又は火山弾は、この調査地点から東に約2 km離れた道路工事現場の大露頭においても認められる。
馬伏川岩屑なだれの堆積時期は星山期終盤頃と推定されており、同層の下位にあるテフラ層はそれ以前の古富士の爆発的噴火に伴うものである。同地域にみられる新富士テフラと比べ、古富士テフラの構成粒子は相対的に大きなものである。古富士テフラがこのように大きな構成粒子を含む要因として2つ挙げられる。1つは新富士よりも爆発的な噴火が起きており、当時の火口が現在の山頂火口と同じ場所に位置していても、大きな粒径のスコリアや火山弾を遠方まで飛ばすことが可能であったと考えられる。もう1つは、当時の火口が現在の山頂火口よりも東に位置していた可能性である。この場合、新富士と同程度の爆発的噴火であっても、東麓においてはテフラの構成粒子の粒径が新富士より大きくなる。このような大きな粒子から構成される古富士のテフラ層は、これらどちらか一方あるいは両方の要因によってもたらされたと考えられる。
8枚のテフラ層の厚さは5 cmから40 cmで、粒径が1 cmから4 cmのやや角ばったスコリア粒子から構成される。また、上位から4層目と8層目には、粒径が8 cmから15 cmの大きなスコリア粒子又は火山弾が数個含まれており、その内部は赤色酸化している。同様の層序と大きなスコリア粒子又は火山弾は、この調査地点から東に約2 km離れた道路工事現場の大露頭においても認められる。
馬伏川岩屑なだれの堆積時期は星山期終盤頃と推定されており、同層の下位にあるテフラ層はそれ以前の古富士の爆発的噴火に伴うものである。同地域にみられる新富士テフラと比べ、古富士テフラの構成粒子は相対的に大きなものである。古富士テフラがこのように大きな構成粒子を含む要因として2つ挙げられる。1つは新富士よりも爆発的な噴火が起きており、当時の火口が現在の山頂火口と同じ場所に位置していても、大きな粒径のスコリアや火山弾を遠方まで飛ばすことが可能であったと考えられる。もう1つは、当時の火口が現在の山頂火口よりも東に位置していた可能性である。この場合、新富士と同程度の爆発的噴火であっても、東麓においてはテフラの構成粒子の粒径が新富士より大きくなる。このような大きな粒子から構成される古富士のテフラ層は、これらどちらか一方あるいは両方の要因によってもたらされたと考えられる。