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[SVC30-09] メルト包有物と石基の組成分析に基づく阿蘇火山の珪長質マグマと苦鉄質マグマの岩石学的成因
キーワード：阿蘇カルデラ、メルト包有物、珪長質マグマ、結晶マッシュ、岩石学、大規模噴火
九州にある阿蘇火山は、巨大なカルデラ（18×25 km）を持ち、過去27万年間に4回のVEI 6-8クラスの珪長質噴火、Aso-1, Aso-2, Aso-3, Aso-4を繰り返している。これらの大規模噴火は典型的な “zoned ignimbrite” であり、初期には珪長質マグマ（軽石）が噴出し、最後には結晶に富む苦鉄質マグマ（スコリア）が噴出した。このことは苦鉄質マグマが大規模珪長質マグマのシステムに普遍的に存在し、このシステムに対して重要な役割を持つと推測される。本研究ではこのような ”zoned ignimbrite” を生み出すプロセスを理解することに焦点を当て、Aso-2, Aso-3, Aso-4噴火を対象に噴出物中のメルト包有物および石基の主要元素および微量元素組成分析を行なった。
分析の結果、軽石とスコリア中のメルト包有物と石基はHK-S, HK-M, MKタイプに分類される。HK-SタイプはAso-2, 3, 4噴火の軽石中に見られるHigh-K系列のデイサイト-流紋岩質ガラスであり、阿蘇の玄武岩で規格化したREEパターンではMREEからHREEへの正の傾きを示す。HK-MタイプはAso-2, 3, 4噴火の スコリア中に見られる High-K系列の玄武岩質安山岩-デイサイト質ガラスであり、MREE から HREE までフラットな REE パターンを示す。MKタイプはAso-3, 4噴火のスコリア中に見られる Medium-K系列の安山岩-デイサイト質ガラスであり、Aso-3とAso-4でMREEのパターンが異なる。HK-SガラスとHK-Mガラスの特徴である高K2O量は軽石やスコリアの全岩組成の特徴と類似しており、それぞれ珪長質マグマと苦鉄質マグマのメルトと解釈される。一方でMKガラスはK2O含有量が低いことから、珪長質マグマや苦鉄質マグマに直接由来しないメルトである。
本研究ではHK-SメルトとHK-MメルトのREEパターンが単一の苦鉄質物質の分化で説明できるかどうかを検討した。同一の起源物質の想定は珪長質マグマと苦鉄質マグマのSr同位体組成が同じであるという先行研究の結果に基づいている。検討方法は、阿蘇の玄武岩質マグマの結晶化によるメルト組成変化をメルト-鉱物の元素分配係数（先行研究）と結晶化鉱物割合から計算する。鉱物割合は独立した２つの方法、先行研究の玄武岩質マグマの結晶化実験と本研究の阿蘇の玄武岩質マグマからHK-Sメルトへの組成変化を再現するマスバランス計算から決定した。計算の結果、HK-MメルトのREEパターンは、角閃石の晶出量が少ない玄武岩質マグマの結晶化で再現されることが明らかとなった。この結果は大部分の角閃石が溶融される阿蘇の玄武岩質マグマ組成岩石の部分溶融で再現されることも同時に示す。一方、HK-SメルトのREEパターンは、アパタイトが晶出して角閃石の晶出量が少ない結晶化のみで再現される。MKの成因についてはマスバランス計算から斜長石とアパタイトと角閃石から構成される結晶マッシュの溶融によって生成されたと、K2O量に乏しくこれら鉱物の成分に富むことから考えられる。
以上の各メルトタイプの岩石学的成因から次のマグマ生成と進化プロセスを提案する。(1)HK-Mマグマが下部地殻での玄武岩質マグマの結晶化または玄武岩質岩石の溶融で生成された。(2)下部地殻から上部地殻へHK-Mマグマが供給されて、浅部マグマ溜まりが形成された。浅部マグマ溜まりでHK-Mマグマが結晶分化することでHK-Sマグマが生成された。(3)MKマグマは、浅部マグマ溜まりへ新たに供給された高温マグマの熱によって結晶化マッシュが溶融することで生成された。本研究の結果は、苦鉄質マグマが結晶化と溶融の2つのプロセスで生成され、その後珪長質マグマへと進化することを示した。これらの２つの生成プロセスが同時に起こることはマグマの生成に効率的であり、大規模珪長質マグマ活動に対して合理的である。
分析の結果、軽石とスコリア中のメルト包有物と石基はHK-S, HK-M, MKタイプに分類される。HK-SタイプはAso-2, 3, 4噴火の軽石中に見られるHigh-K系列のデイサイト-流紋岩質ガラスであり、阿蘇の玄武岩で規格化したREEパターンではMREEからHREEへの正の傾きを示す。HK-MタイプはAso-2, 3, 4噴火の スコリア中に見られる High-K系列の玄武岩質安山岩-デイサイト質ガラスであり、MREE から HREE までフラットな REE パターンを示す。MKタイプはAso-3, 4噴火のスコリア中に見られる Medium-K系列の安山岩-デイサイト質ガラスであり、Aso-3とAso-4でMREEのパターンが異なる。HK-SガラスとHK-Mガラスの特徴である高K2O量は軽石やスコリアの全岩組成の特徴と類似しており、それぞれ珪長質マグマと苦鉄質マグマのメルトと解釈される。一方でMKガラスはK2O含有量が低いことから、珪長質マグマや苦鉄質マグマに直接由来しないメルトである。
本研究ではHK-SメルトとHK-MメルトのREEパターンが単一の苦鉄質物質の分化で説明できるかどうかを検討した。同一の起源物質の想定は珪長質マグマと苦鉄質マグマのSr同位体組成が同じであるという先行研究の結果に基づいている。検討方法は、阿蘇の玄武岩質マグマの結晶化によるメルト組成変化をメルト-鉱物の元素分配係数（先行研究）と結晶化鉱物割合から計算する。鉱物割合は独立した２つの方法、先行研究の玄武岩質マグマの結晶化実験と本研究の阿蘇の玄武岩質マグマからHK-Sメルトへの組成変化を再現するマスバランス計算から決定した。計算の結果、HK-MメルトのREEパターンは、角閃石の晶出量が少ない玄武岩質マグマの結晶化で再現されることが明らかとなった。この結果は大部分の角閃石が溶融される阿蘇の玄武岩質マグマ組成岩石の部分溶融で再現されることも同時に示す。一方、HK-SメルトのREEパターンは、アパタイトが晶出して角閃石の晶出量が少ない結晶化のみで再現される。MKの成因についてはマスバランス計算から斜長石とアパタイトと角閃石から構成される結晶マッシュの溶融によって生成されたと、K2O量に乏しくこれら鉱物の成分に富むことから考えられる。
以上の各メルトタイプの岩石学的成因から次のマグマ生成と進化プロセスを提案する。(1)HK-Mマグマが下部地殻での玄武岩質マグマの結晶化または玄武岩質岩石の溶融で生成された。(2)下部地殻から上部地殻へHK-Mマグマが供給されて、浅部マグマ溜まりが形成された。浅部マグマ溜まりでHK-Mマグマが結晶分化することでHK-Sマグマが生成された。(3)MKマグマは、浅部マグマ溜まりへ新たに供給された高温マグマの熱によって結晶化マッシュが溶融することで生成された。本研究の結果は、苦鉄質マグマが結晶化と溶融の2つのプロセスで生成され、その後珪長質マグマへと進化することを示した。これらの２つの生成プロセスが同時に起こることはマグマの生成に効率的であり、大規模珪長質マグマ活動に対して合理的である。