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[SVC30-P03] 火砕物密度流の全粒度組成分析に向けて:北海道駒ヶ岳1929年噴火堆積物での試み
キーワード:北海道駒ケ岳、火砕物密度流、全粒度組成
北海道駒ヶ岳火山1929年噴火で発生した火砕物密度流は,時系列の物理パラメータの制約が多く,モデルを検証する上で貴重な噴火事例である.また,この噴火は,世界の噴火事例と比較すると,噴煙柱崩壊型の火砕物密度流としては最小規模である(上澤ほか,2023).よって,本火砕流のより詳細な物理パラメータを整備することは重要であり,我々は重要なパラメータの一つである全粒度組成の算出を試みている.火砕物密度流の全粒度組成を得るためには,できる限り多数地点で露頭スケールでの粒度分析を行う必要がある.また,体積-質量換算をする際の堆積物密度も実測した.さらに火砕流を構成する個々の粒子の密度は流動・堆積機構の支配要因の一つであるため,粒径毎の精密な測定も実施している(石毛ほか,2024本大会).露頭スケールの粒度組成を計測するには,大量の土砂をふるい分ける必要があり,実施にあたっては,重機を使用した.この作業は,作業環境が限られ,急峻な火山体斜面では行えない.そこで,重機を使って得たデータを参照データとして,露頭写真と基質部の採取のみで露頭全体の粒度組成を復元する技術開発も同時に進めている.今回は,重機を用いた粒度組成分析および,iPhone13proに搭載されたLiDARを用いた3d露頭計測による堆積物密度計測の手法と結果について紹介する.
対象地域は,比較可能なデータのあるMurai(1960)が粒径分布を算出した山体南西部である.本地域は,過去に表層部が削り取られる改変があった地域であるが,良好な露頭が存在する.また,1640年噴火による火砕流との地層境界も比較的判別しやすい.本地域で十分な作業スペースを確保可能かつ、データ採取地域のバランスを考慮した4地点(上流より,地点D,地点C,地点A,地点Bで火口からの距離はそれぞれ3.6 km,4.7 km,5 km,5.7 km)を選定し以下の手順で作業を行った.
1. 大きな草木の除去.
2. UAV等による露頭の撮影,iPhoneによる掘削前の3d測量.Leica DISTO D510による層厚の計測.
3. 掘削箇所の確認・マーキング.
4. 重機(油圧ショベル)による掘削.
5. 粗大粒子の分別,ブラシによる粗大粒子に付着した細粒粒子のふるい落とし.
6. 32 mm木枠篩によるふるい分けと32mm未満の土砂の特注大型縮分器による縮分.
7. 電子バネ量りによる1024-512 mm, 512-256 mm, 256-128 mm, 128-64 mm, 64-32 mmと32 mm未満の粒子の計量.32 mm 未満については,2回縮分時と6回縮分時について計測した.2回の計測により,縮分時にバイアスがかかっていることが分かったため,平均の縮分率で補正した.
8. 掘削後の撮影. iPhoneによる掘削後の3d露頭測量.
持ち帰ったサンプルは,各露頭に対して64 mm 以上の粒子を3つ,32 mm を10粒子,32 mm未満はさらに1回縮分した試料を乾燥させ含水率を求め,これを参照して露頭試料全体の乾燥重量を求めた.32 mm未満の粒子については,精密縮分器を用いて適宜縮分し16 mm~ 63 μm まで0.5φ(φ=-log2d mm; dはメッシュ径)間隔の篩を用いて電子篩と手篩にてふるい分けた.地点Aについては,上部1mと下部約2 mを分けて篩ったため,地点A全体の高さで採取量によるバイアスを補正した.
iPhoneで計測したデータは,掘削前データ取得時に映しこんだスケールを基準XY平面として,掘削後のデータがいくつかの特徴的物体が合うようにMeshLabにて3次元的な補正を行い,位置合わせを行った後,これをXYZデータに書き換えQGISにより疑似DEMモデルを作成しラスタデータ化することにより,掘削前後のラスタデータの差分値から体積を算出した.
以上の手法により得られた粒度分布と堆積物密度は,上流より,それぞれ中央粒径(Mdφ)は-1.6,0.11,-2.69,0.18で,淘汰度(σφ)は3.61,3.23,3.65,3.21であり,層厚は最も厚い部分でそれぞれ5.4 m,1.2 m,2.9 m,1.5 mであった.流れの主部・中央部で層厚が2 m以上の厚い堆積物では粗大粒子が多いのに対し,層厚が2m未満の薄い部分,すなわち下位の堆積物の尾根部か堆積物の最縁辺部では粗粒な粒子が少ない傾向があった.Murai(1960)との比較では,流れの中央部では本研究の方が粗大粒子が相対的に多い傾向がある.4地点5ヶ所での堆積物密度の平均は1,160 kg/m3で標準偏差が70であった.これは,上澤ほか(2023)で仮定した1,600 kg/m3より小さい値であった.
対象地域は,比較可能なデータのあるMurai(1960)が粒径分布を算出した山体南西部である.本地域は,過去に表層部が削り取られる改変があった地域であるが,良好な露頭が存在する.また,1640年噴火による火砕流との地層境界も比較的判別しやすい.本地域で十分な作業スペースを確保可能かつ、データ採取地域のバランスを考慮した4地点(上流より,地点D,地点C,地点A,地点Bで火口からの距離はそれぞれ3.6 km,4.7 km,5 km,5.7 km)を選定し以下の手順で作業を行った.
1. 大きな草木の除去.
2. UAV等による露頭の撮影,iPhoneによる掘削前の3d測量.Leica DISTO D510による層厚の計測.
3. 掘削箇所の確認・マーキング.
4. 重機(油圧ショベル)による掘削.
5. 粗大粒子の分別,ブラシによる粗大粒子に付着した細粒粒子のふるい落とし.
6. 32 mm木枠篩によるふるい分けと32mm未満の土砂の特注大型縮分器による縮分.
7. 電子バネ量りによる1024-512 mm, 512-256 mm, 256-128 mm, 128-64 mm, 64-32 mmと32 mm未満の粒子の計量.32 mm 未満については,2回縮分時と6回縮分時について計測した.2回の計測により,縮分時にバイアスがかかっていることが分かったため,平均の縮分率で補正した.
8. 掘削後の撮影. iPhoneによる掘削後の3d露頭測量.
持ち帰ったサンプルは,各露頭に対して64 mm 以上の粒子を3つ,32 mm を10粒子,32 mm未満はさらに1回縮分した試料を乾燥させ含水率を求め,これを参照して露頭試料全体の乾燥重量を求めた.32 mm未満の粒子については,精密縮分器を用いて適宜縮分し16 mm~ 63 μm まで0.5φ(φ=-log2d mm; dはメッシュ径)間隔の篩を用いて電子篩と手篩にてふるい分けた.地点Aについては,上部1mと下部約2 mを分けて篩ったため,地点A全体の高さで採取量によるバイアスを補正した.
iPhoneで計測したデータは,掘削前データ取得時に映しこんだスケールを基準XY平面として,掘削後のデータがいくつかの特徴的物体が合うようにMeshLabにて3次元的な補正を行い,位置合わせを行った後,これをXYZデータに書き換えQGISにより疑似DEMモデルを作成しラスタデータ化することにより,掘削前後のラスタデータの差分値から体積を算出した.
以上の手法により得られた粒度分布と堆積物密度は,上流より,それぞれ中央粒径(Mdφ)は-1.6,0.11,-2.69,0.18で,淘汰度(σφ)は3.61,3.23,3.65,3.21であり,層厚は最も厚い部分でそれぞれ5.4 m,1.2 m,2.9 m,1.5 mであった.流れの主部・中央部で層厚が2 m以上の厚い堆積物では粗大粒子が多いのに対し,層厚が2m未満の薄い部分,すなわち下位の堆積物の尾根部か堆積物の最縁辺部では粗粒な粒子が少ない傾向があった.Murai(1960)との比較では,流れの中央部では本研究の方が粗大粒子が相対的に多い傾向がある.4地点5ヶ所での堆積物密度の平均は1,160 kg/m3で標準偏差が70であった.これは,上澤ほか(2023)で仮定した1,600 kg/m3より小さい値であった.