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[SVC31-01] 7.3ka鬼界カルデラ噴火(アカホヤ噴火)におけるカルデラ形成に先行するフェーズ:噴火堆積物と噴煙モデルを用いた解析

キーワード:火山噴火、鬼界カルデラ、カルデラ形成噴火、アカホヤ噴火、噴煙モデル
破局噴火の多くでは、その初期にプリニー式噴火が発生し、カルデラ形成や大規模火砕流噴出の引き金になると考えられている。破局噴火の発生メカニズムを解明するためには、カルデラ形成に先行するフェーズ(初期フェーズ)の詳細な噴火条件を決定することが必要である。本研究では、地質学的手法と噴煙モデルを用いた複合的アプローチによって、破局噴火における初期フェーズの噴火推移と噴火パラメータを定量的に解明することを目的とする。そのため、約7300年前に九州南方沖の鬼界カルデラで発生したカルデラ形成噴火(アカホヤ噴火)を研究の対象とした。この噴火は、初期フェーズおよび大規模火砕流とそれに伴う灰かぐらという一連の堆積物が観察されており、特に初期フェーズの堆積物が良好に保存されていることから本研究の解析に適している。
本研究では、地質学的解析によって得られたデータとモデリングを組み合わせることで噴火パラメータを推定した。まず、薩南諸島・薩摩半島・大隅半島での地質調査を実施し、アカホヤ噴火の初期フェーズの堆積物層序や構成物を明らかにした。また、火砕降下堆積物(Unit A)について、サブユニットごとの層厚と最大粒径の分布図を作成した。得られた層厚分布を複数の経験的関数[Fierstein and Nathenson, 1992; Bonadonna and Houghton, 2005; Bonadonna and Costa, 2012]にフィッティングすることで噴出量を推定した。この際、誤差の大きい近傍と遠方の堆積分布がフィッティングに与える影響を評価するため、モンテカルロ法を用いて噴出量に関する確率分布を求めた。最大粒径分布からは、噴煙モデルを用いて実際のデータを説明できるマグマ噴出率を求めた。このモデルは、風による噴煙の屈曲を考慮した定常1次元噴煙モデル[Bursik, 2001]と粒子形状を考慮した粒子軌道計算[Bagheri and Bonadonna, 2016; Rossi et al., 2019]を組み合わせたものである。推定された噴出量とマグマ噴出率から、噴火イベントごとの噴火継続時間を算出した。
地質学的解析の結果、アカホヤ噴火の初期フェーズ堆積物はわずかな浸食によって大きく3つの噴火イベント堆積物に分けられることが判明した[春田・前野, 2023JpGU]。下位層(噴火イベント1)には、鬼界カルデラ近傍のみに分布する降下火山灰層(Unit A0)が認められた。中位層(噴火イベント2)として、降下軽石層(Unit A1)が大隅半島南部まで分布し、鬼界カルデラ近傍ではその上位に薄い火砕密度流堆積物(Unit A2)が存在した。上位層(噴火イベント3)の層相は鬼界カルデラ近傍とそれ以外の地域で顕著に異なった。鬼界カルデラ近傍では、数枚の降下軽石層(Unit A3, A4a)とその上位の火砕密度流堆積物(Unit B)が認められた。一方、大隅半島南部では、最大11枚の降下軽石層と火山灰濃集層が認められた。このうち、最上位の降下軽石層(Unit A4b)は上方粗粒化の特徴を示し、他の降下軽石層よりも広範囲で認められた。各噴火イベントの噴火パラメータである火砕降下堆積物の噴出量およびマグマ噴出率の推定値は以下となった。下位層:0.0021−0.012 km3。中位層:0.18−1.4 km3、 3.5×107−1.2×108 kg/s。上位層:4.1−17 km3、5.4×108 −1.8×109 kg/s。初期フェーズにおける火砕降下堆積物の総体積は4.6 −17 km3となり、先行研究[20−40 km3: 町田・新井, 2003; Maeno and Taniguchi, 2007]に比べ有意に小さい値となった。
以上の結果から、アカホヤ噴火のカルデラ形成に先行するフェーズは時間間隙によって区別される3つの噴火イベントで説明される。噴火イベント1は、小規模かつ爆発的なマグマ噴火であった。噴火イベント2は、安定した噴煙柱を形成するプリニー式噴火に始まり、小規模な火砕密度流の噴出に移行した。噴火イベント3は、継続的な部分崩壊を伴うプリニー式噴火であり、噴火強度は時間とともに増大した。このように、アカホヤ噴火の初期フェーズでは、噴火の推移に伴って噴火規模と噴火強度が顕著に増大したと推定される。また、この初期フェーズのマグマ噴出量は、同程度のカルデラを形成した破局噴火の事例に比べて顕著に小さい。この特徴を説明可能なメカニズムに関しても議論する。
本研究では、地質学的解析によって得られたデータとモデリングを組み合わせることで噴火パラメータを推定した。まず、薩南諸島・薩摩半島・大隅半島での地質調査を実施し、アカホヤ噴火の初期フェーズの堆積物層序や構成物を明らかにした。また、火砕降下堆積物(Unit A)について、サブユニットごとの層厚と最大粒径の分布図を作成した。得られた層厚分布を複数の経験的関数[Fierstein and Nathenson, 1992; Bonadonna and Houghton, 2005; Bonadonna and Costa, 2012]にフィッティングすることで噴出量を推定した。この際、誤差の大きい近傍と遠方の堆積分布がフィッティングに与える影響を評価するため、モンテカルロ法を用いて噴出量に関する確率分布を求めた。最大粒径分布からは、噴煙モデルを用いて実際のデータを説明できるマグマ噴出率を求めた。このモデルは、風による噴煙の屈曲を考慮した定常1次元噴煙モデル[Bursik, 2001]と粒子形状を考慮した粒子軌道計算[Bagheri and Bonadonna, 2016; Rossi et al., 2019]を組み合わせたものである。推定された噴出量とマグマ噴出率から、噴火イベントごとの噴火継続時間を算出した。
地質学的解析の結果、アカホヤ噴火の初期フェーズ堆積物はわずかな浸食によって大きく3つの噴火イベント堆積物に分けられることが判明した[春田・前野, 2023JpGU]。下位層(噴火イベント1)には、鬼界カルデラ近傍のみに分布する降下火山灰層(Unit A0)が認められた。中位層(噴火イベント2)として、降下軽石層(Unit A1)が大隅半島南部まで分布し、鬼界カルデラ近傍ではその上位に薄い火砕密度流堆積物(Unit A2)が存在した。上位層(噴火イベント3)の層相は鬼界カルデラ近傍とそれ以外の地域で顕著に異なった。鬼界カルデラ近傍では、数枚の降下軽石層(Unit A3, A4a)とその上位の火砕密度流堆積物(Unit B)が認められた。一方、大隅半島南部では、最大11枚の降下軽石層と火山灰濃集層が認められた。このうち、最上位の降下軽石層(Unit A4b)は上方粗粒化の特徴を示し、他の降下軽石層よりも広範囲で認められた。各噴火イベントの噴火パラメータである火砕降下堆積物の噴出量およびマグマ噴出率の推定値は以下となった。下位層:0.0021−0.012 km3。中位層:0.18−1.4 km3、 3.5×107−1.2×108 kg/s。上位層:4.1−17 km3、5.4×108 −1.8×109 kg/s。初期フェーズにおける火砕降下堆積物の総体積は4.6 −17 km3となり、先行研究[20−40 km3: 町田・新井, 2003; Maeno and Taniguchi, 2007]に比べ有意に小さい値となった。
以上の結果から、アカホヤ噴火のカルデラ形成に先行するフェーズは時間間隙によって区別される3つの噴火イベントで説明される。噴火イベント1は、小規模かつ爆発的なマグマ噴火であった。噴火イベント2は、安定した噴煙柱を形成するプリニー式噴火に始まり、小規模な火砕密度流の噴出に移行した。噴火イベント3は、継続的な部分崩壊を伴うプリニー式噴火であり、噴火強度は時間とともに増大した。このように、アカホヤ噴火の初期フェーズでは、噴火の推移に伴って噴火規模と噴火強度が顕著に増大したと推定される。また、この初期フェーズのマグマ噴出量は、同程度のカルデラを形成した破局噴火の事例に比べて顕著に小さい。この特徴を説明可能なメカニズムに関しても議論する。