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[SVC31-03] 沈まない軽石が生成された限定的噴火条件:福徳岡ノ場2021年噴火浮遊軽石からの推定
キーワード:浮遊軽石、空隙連結度、結晶量、海底噴火、陸上噴火、減圧実験
本研究では、軽石の海水に対する浮遊性・マグマ特性・噴火過程の関係について空隙特性の観点から議論する。過去の海底噴火軽石・陸上噴火軽石・マグマの減圧発泡実験のデータと福徳岡ノ場2021年噴火の浮遊軽石のデータを全空隙率ー空隙連結度空間で比較した。その結果、沈まない軽石の生成は、結晶に乏しいマグマによる海底噴火において、高い全空隙率である一方、低い空隙連結度での急冷が起こる、比較的狭い条件に限定される可能性を推定した。
筆者らはミリからセンチサイズの軽石粒子について空隙率測定技術を確立し、福徳岡ノ場2021年噴火で噴出した浮遊軽石に適用した。全空隙率・連結空隙率・孤立空隙率を浮遊軽石から得て、空隙連結度は連結空隙率を全空隙率で割ることで算出した。大半の浮遊軽石は30% を超える高い孤立空隙率を持ち、それゆえ、連結空隙が海水に飽和しても沈まないことが明らかになった(竹内ほか, 2022, 日本火山学会秋季大会)。この特徴は過去に研究された海底噴火の浮遊軽石と同様であった。Colombier et al. (2017, EPSL)の膨大なデータに照らすと、陸上噴火軽石のほとんどは70% を超える高い空隙連結度を持ち、全空隙率ー空隙連結度の空間上では沈みえる軽石の生成条件に位置する。マグマの減圧発泡実験のデータは結晶を含まない珪長質マグマ(Takeuchi et al., 2009, EPSL)及び結晶を含む珪長質マグマ(Graham et al., 2023, EPSL)の実験から得られている。結晶を含まない実験では70ー80 vol% の全空隙率において、沈まない軽石の生成条件となる空隙連結度を持ち、福徳岡ノ場2021年噴火軽石のデータと近い。結晶を40 vol%含む実験でのデータは沈みえる軽石の生成条件の中で全空隙率と空隙連結度が変化し、沈まない軽石の生成条件には入らない。20 vol%の中間的な結晶量では全空隙率と空隙連結度の関係は、全空隙率が増大するとともに沈みえる/沈まない軽石生成条件の境界に近づき、その関係を高い全空隙率に外挿した先には福徳岡ノ場2021年噴火軽石のデータがある。福徳岡ノ場2021年噴火軽石は約17% 程度の結晶量を持ち、沈まない軽石の生成条件が達成されうる結晶量と考えられる。
マグマの減圧発泡実験において、試料は高温・高圧に保たれた後、目的の圧力まで減圧される。減圧されたマグマは気泡の核形成・成長・連結・形状緩和を含む発泡過程を経る。最終的に天然の噴火現象よりも短いタイムスケールで試料は急冷される。Gardner et al. (1996, BV)は軽石の遅延発泡が陸上噴火では様々な粘性の範囲で起こることを示した。遅延発泡は孤立空隙をさらに膨張させ、連結空隙へと変えうる。一方、海底噴火では噴出した気泡を含むマグマが海水により急冷され、減圧発泡実験に近いタイムスケールで急冷される結果、軽石の中に多くの孤立空隙が含まれると考えられる。
筆者らはミリからセンチサイズの軽石粒子について空隙率測定技術を確立し、福徳岡ノ場2021年噴火で噴出した浮遊軽石に適用した。全空隙率・連結空隙率・孤立空隙率を浮遊軽石から得て、空隙連結度は連結空隙率を全空隙率で割ることで算出した。大半の浮遊軽石は30% を超える高い孤立空隙率を持ち、それゆえ、連結空隙が海水に飽和しても沈まないことが明らかになった(竹内ほか, 2022, 日本火山学会秋季大会)。この特徴は過去に研究された海底噴火の浮遊軽石と同様であった。Colombier et al. (2017, EPSL)の膨大なデータに照らすと、陸上噴火軽石のほとんどは70% を超える高い空隙連結度を持ち、全空隙率ー空隙連結度の空間上では沈みえる軽石の生成条件に位置する。マグマの減圧発泡実験のデータは結晶を含まない珪長質マグマ(Takeuchi et al., 2009, EPSL)及び結晶を含む珪長質マグマ(Graham et al., 2023, EPSL)の実験から得られている。結晶を含まない実験では70ー80 vol% の全空隙率において、沈まない軽石の生成条件となる空隙連結度を持ち、福徳岡ノ場2021年噴火軽石のデータと近い。結晶を40 vol%含む実験でのデータは沈みえる軽石の生成条件の中で全空隙率と空隙連結度が変化し、沈まない軽石の生成条件には入らない。20 vol%の中間的な結晶量では全空隙率と空隙連結度の関係は、全空隙率が増大するとともに沈みえる/沈まない軽石生成条件の境界に近づき、その関係を高い全空隙率に外挿した先には福徳岡ノ場2021年噴火軽石のデータがある。福徳岡ノ場2021年噴火軽石は約17% 程度の結晶量を持ち、沈まない軽石の生成条件が達成されうる結晶量と考えられる。
マグマの減圧発泡実験において、試料は高温・高圧に保たれた後、目的の圧力まで減圧される。減圧されたマグマは気泡の核形成・成長・連結・形状緩和を含む発泡過程を経る。最終的に天然の噴火現象よりも短いタイムスケールで試料は急冷される。Gardner et al. (1996, BV)は軽石の遅延発泡が陸上噴火では様々な粘性の範囲で起こることを示した。遅延発泡は孤立空隙をさらに膨張させ、連結空隙へと変えうる。一方、海底噴火では噴出した気泡を含むマグマが海水により急冷され、減圧発泡実験に近いタイムスケールで急冷される結果、軽石の中に多くの孤立空隙が含まれると考えられる。