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[SVC31-12] 火道流とダイクの変形の連成計算に基づく非爆発的噴火の推移の数値的研究

キーワード:噴火の推移、火道変形、火道流モデル、ダイク
地殻浅部へのマグマの貫入は主にダイク(岩脈)の形態によってなされ,火山噴火の最中にもその形状が変形しうることが近年の測地学的観測から示唆されつつある(Smittarello, 2019; Lengliné et al., 2021).これまでの定常火道流研究では,上昇するマグマが経験する素過程が噴火の巨視的な振る舞いに与える影響を明らかにしてきた(例えば,Melnik and Sparks, 1999; Kozono and Koyaguchi, 2009).近年では,弾性変形するダイク状の火道を組み込み,定常火道流モデルを用いて火山噴火の様式や規模などを支配する複雑なダイナミクスを明らかにする研究が進展している(例えば,Costa et al. 2007; Massaro et al., 2017; Kozono et al., 2022).一方で,ダイクの変形や伸展プロセスに焦点を当てた研究では,母岩の破壊過程や変形の力学を組み込んだモデルを開発し,亀裂の伝播やそれに伴う地盤変動などを再現する研究が進められてきた(例えば,Pinel and Jaupart, 2000; Traversa et al., 2010; Roman and Lundgren, 2023).しかし,火山噴火の非定常的な推移に着目して,火道流プロセスとダイクの変形の双方の影響を検討した研究事例は少ない.そこで,本研究では非爆発的噴火を対象として,変形するダイク状火道と内部を上昇するマグマのダイナミクスを理解するために,火道流モデルと火道変形モデルとを連成したモデルを提案する.そして,火道形状や噴出率の時空間的変化の基本的性質を理解することを目的として数値シミュレーションを実行する.
本研究では,火道形状をダイクを模した扁平な断面を有する楕円筒とした.ダイクの幅は各深さにおいて,内部のマグマ圧と静岩圧の差に駆動され,弾性的に変形する構成則(Muskhelishvili, 1953)を採用した.火道内部におけるマグマの流動は,液単相の一次元流れに近似することで単純化して取り扱った.上昇に伴ってマグマ中で発生する,揮発性成分の発泡や結晶化に伴うマグマの物性変化の影響を考慮するために,圧力に依存した粘性率や密度の物性変化をモデルへ組み込んだ.この仮定の下で火道の下端の境界条件をマグマ溜まりの圧力,上端の境界条件を大気圧とした二点境界値問題として支配方程式系を数値的に解くことでマグマ供給系の時間発展を計算した.
マグマ溜まり圧力を時間的に固定した定常状態の計算結果より,火道下端の圧力が大きいほどダイク幅は太く,壁面から受ける摩擦が減少することから同様の条件下の非変形の剛体火道の場合よりも噴出率がより大きくなることが明らかになった.また,マグマ溜まり圧力に過剰圧を与え,その過剰圧はマグマ溜まりから放出される流量に従って緩和するとして,時間発展を計算すると,過剰圧はダイクを押し広げながら火道上方へと伝播した.その伝播速度やマグマの物性に対する応答は,拡散方程式状の線形擾乱方程式の比例定数に概ね従うことを明らかにした.このような振る舞いは,噴火を駆動するマグマ溜まりの過剰圧の緩和のタイムスケールを支配するため,噴火の推移へ影響を与えることが示唆される.また,ダイクの伸展・収縮や過剰圧の伝播は火道周辺の剛性率とともに,内部のマグマのレオロジー特性に依存する.火道内マグマと壁面が長期間接触することによる母岩の熱的影響や,断面方向のマグマの物性分布などが噴火の推移へ与える影響を考慮することが課題である.
なお,本研究は,JST 次世代研究者挑戦的研究プログラム JPMJSP2119 の支援を受けたものである.
本研究では,火道形状をダイクを模した扁平な断面を有する楕円筒とした.ダイクの幅は各深さにおいて,内部のマグマ圧と静岩圧の差に駆動され,弾性的に変形する構成則(Muskhelishvili, 1953)を採用した.火道内部におけるマグマの流動は,液単相の一次元流れに近似することで単純化して取り扱った.上昇に伴ってマグマ中で発生する,揮発性成分の発泡や結晶化に伴うマグマの物性変化の影響を考慮するために,圧力に依存した粘性率や密度の物性変化をモデルへ組み込んだ.この仮定の下で火道の下端の境界条件をマグマ溜まりの圧力,上端の境界条件を大気圧とした二点境界値問題として支配方程式系を数値的に解くことでマグマ供給系の時間発展を計算した.
マグマ溜まり圧力を時間的に固定した定常状態の計算結果より,火道下端の圧力が大きいほどダイク幅は太く,壁面から受ける摩擦が減少することから同様の条件下の非変形の剛体火道の場合よりも噴出率がより大きくなることが明らかになった.また,マグマ溜まり圧力に過剰圧を与え,その過剰圧はマグマ溜まりから放出される流量に従って緩和するとして,時間発展を計算すると,過剰圧はダイクを押し広げながら火道上方へと伝播した.その伝播速度やマグマの物性に対する応答は,拡散方程式状の線形擾乱方程式の比例定数に概ね従うことを明らかにした.このような振る舞いは,噴火を駆動するマグマ溜まりの過剰圧の緩和のタイムスケールを支配するため,噴火の推移へ影響を与えることが示唆される.また,ダイクの伸展・収縮や過剰圧の伝播は火道周辺の剛性率とともに,内部のマグマのレオロジー特性に依存する.火道内マグマと壁面が長期間接触することによる母岩の熱的影響や,断面方向のマグマの物性分布などが噴火の推移へ与える影響を考慮することが課題である.
なお,本研究は,JST 次世代研究者挑戦的研究プログラム JPMJSP2119 の支援を受けたものである.