日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 U (ユニオン) » ユニオン

[U-07] 地球システム変動と海洋生態系との関わり

2024年5月27日(月) 10:45 〜 12:15 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:須賀 利雄(東北大学 大学院理学研究科)、安中 さやか(東北大学)、王 童(海洋研究開発機構)、座長:須賀 利雄(東北大学 大学院理学研究科)、安中 さやか(東北大学)、王 童(海洋研究開発機構)


12:00 〜 12:15

[U07-12] 総合討論:海洋生態系変動の解明と予測に向けて

★招待講演

*稲垣 史生1安藤 健太郎1須賀 利雄1 (1.変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC), 東北大学・海洋研究開発機構)

キーワード:海洋生態系、アルゴ、環境DNA、地球システムモデル

近年、人新世を特徴付ける種々の現象が顕在化するにつれ、地球システムを構成するサブシステムが直接的あるいは間接的に人間社会の営みと絡み合い、一つの「地球−人間システム」として一体的に駆動している感覚を覚えるようになった。地球を生命の星たらしめるサブシステム要素の一つとして、大気―海洋の相互作用が極めて重要な役割を果たしていることは論を俟たない。生命誕生から現在に至るまで、生命とそれが織りなす生態系は、ミクロからマクロに至る大気・海洋の摂動に応じて適応と進化を繰り返し、時に地球環境全体の生命居住性に影響を与えながらも、現在に至るまで絶えることなく生態系の機能を受け継いできた。現在、私たち人間の活動は、半ば無意識のうちに、地球システム全体に影響を与える主要なサブシステムの一つとなった。今後、海洋に生息する生物とその生態系が、どのような時空間的スケールで、急速に進む生息環境の変化に応答・適応していくのかについて、私たちの科学的な知見は限られている。例えば、ある地域における魚種の変化や大量発生・大量死など、一見突発的で非線形のように見える生態系の変化は、実は、現在の観測データでは捉えきれていない未知の現象(予兆)から捉えることができ、生態系の連動性や適応性のフィードバック・メカニズムから導き出される合理的な現象として捉えることができるかもしれない。海洋生態系の脆弱性やレジリエンスを科学的に説明するためには、海洋物理、生態学、地球化学、数理・データ科学等の分野融合研究により、生命・生態系が有する「しなやかさ」、すなわち進化学的なポテンシャルの理解を深めていくことも重要であろう。本総合討論では、今後、どのように海洋生態系の変動メカニズムを解明し、確度の高い未来予測に繋げるか、そして、そこから創出される科学知の融合が、海洋・地球環境の保全と回復、海洋生態系の恩恵を享受する人間社会の発展と持続可能性の創出にどのように寄与しうるのかについて、時間の許す限りの議論を展開したい。