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[U09-03] 社会が求める海の環境・防災地図、その課題と展望
★招待講演
キーワード:海洋環境、海洋防災、地図、社会的要請
令和6年能登半島地震にともなう海底隆起により、海底地形が多く変化し、その結果、救援物資の海上輸送ができなかった、今後の漁港利用ができなくなったことが、大きく報道されている。このように、海の変化は、人々の生活に多大な影響を及ぼしている。海底地形の変化のみならず、海中の物質(塩分,熱,化学成分,生物)の分布もさまざまな空間・時間規模で変化する流れによって、絶えず変動を繰り返しており、このことが人々の生活に多大な影響を及ぼしている。そのため、我が国では、海上保安庁、気象庁、水産庁他の関係省庁・機関が塩分,水温,種々の化学物質濃度、生息するプランクトン量や有用魚類の資源量、流れなどの監視観測を定期的におこない、その結果を逐次、公開している。これらの関係省庁・機関等が保有する海洋情報を、海上安全、自然災害対策、海洋環境保全、海洋産業振興といった様々な分野での利活用を目的として、内閣府の総合調整のもとで集約した情報サービス「海しる(海洋状況表示システム)」が海上保安庁により運用されている(https://www.msil.go.jp/msil/htm/topwindow.html)。「海しる」は、これまで各関係省庁・機関等が個別に公開していた海洋情報を1つのサイトに集約した点で画期的であるが、提供されている海洋情報の質と量はまだ十分でないと言わざるを得ない。それは、現在の「海しる」で提供されている海底地形図(海底深浅図)、各地の予測潮位、海面水温分布図、表層海流図、波浪図、津波シミュレーション結果図などの海の環境・防災地図が、一部の専門家のための情報となっており、一般市民が利用し、活用するためには、それなりの知識が必要なためである。講演者は、ここ数年にわたり、国際津波防災学会津波防災対策検討分科会の共同幹事として、「地区住民による津波防災対策計画立案のための手引き」の目次案、編集方針を、津波防災対策に強く関心を持つ技術者、NPO法人役員他で構成される分科会会員と議論・検討してきた。本講演では、その経験を踏まえ、社会が求める海の環境・防災地図を作成し、提供するための課題と展望を述べる。