日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

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[U-09] 最先端の計測・SNS技術を環境・防災地図にどう生かすか?

2024年5月30日(木) 10:45 〜 12:15 展示場特設会場 (1) (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:作野 裕司(広島大学大学院先進理工系科学研究科)、土井 威志(JAMSTEC)、小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、宮地 良典(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、座長:土井 威志(JAMSTEC)、作野 裕司(広島大学大学院先進理工系科学研究科)

11:15 〜 11:35

[U09-06] "予測できる海"と"安全な海" ~軽石漂流などを例に

★招待講演

*美山 透1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構・アプリケーションラボ)

キーワード:国連海洋科学の10年、海洋予測、人工衛星観測、SNS

現在進行中の国連の持続可能な開発のための海洋科学の10年(2021-2030)は、「予測可能な海洋」と「安全な海洋」を重要な目標としている。「予測可能な海洋」においては、現在及び将来の海洋状況を理解し、その変化と人々の生活への影響を予測することが目指される。一方、「安全な海洋」においては、海洋災害から人間社会を保護し、海上及び沿岸での安全な活動を確保することが目指される。ここでは軽石の漂流予測などの例を通じて、最新の観測、予測技術やSNS情報を利用した、「予測可能な海洋」と「安全な海洋」の目標について議論する。
2021年8月13日には、小笠原諸島の福徳岡ノ場海底火山で戦後最大級の噴火が発生し、大量の軽石が発生した。これらの軽石は西に漂流し、約1400 km離れた琉球列島に10月に到達した。軽石の到着により、漁船の出漁が不可能となるなどの問題が生じた。海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、軽石がこれらの地域で問題となったことを受け、軽石の漂流計算を開始した。被害の把握にはSNSの情報が活用された。一方、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、GCOM-C衛星とSentinel-2を使用して海上での軽石の分布を観測し、その情報が利用可能となった。JAMSTECではこの情報をもとに軽石の漂流を計算し、軽石が11月下旬に伊豆諸島に到達すると予測した。実際に、軽石伊豆諸島に到達したが、事前にオイルフェンスを設置するなどの対策をとることができた。海流の計算と衛星観測は以前から存在していたが、このような状況は想定されていなかった。しかし、応用することによって、新しい現象に対処することが可能であることを示している。一方、軽石の漂流予測は、琉球列島で軽石の到着の問題が悪化した時点で始まった。潜在的な影響に対する認識があれば、予測とモニタリングを通じて警告を発するための十分な技術は存在していた。しかし、問題意識の不足により、影響が広がった。したがって、災害防止には学際的なアプローチが必要であることが示されている。