[U-15] 2024年能登半島地震(1:J)

[U15-04] 空中写真判読による令和６年能登半島地震に伴う斜面崩壊・堆積分布及び津波浸水域の推定とその分布特性

*中埜 貴元¹、関 真幸¹、応用地理部 災害対策班¹ (1.国土交通省国土地理院)

キーワード：斜面崩壊・堆積分布、津波浸水域、空中写真判読

１．はじめに
令和6年1月1日に発生した令和６年能登半島地震（以下「本地震」という。）では、能登半島の山間地を中心に斜面崩壊や地すべりが多発するとともに、能登半島の東岸と西岸を中心に津波浸水被害も発生した。国土地理院は地震発生後の初動対応として、1月2日から能登半島の広域を対象に空中写真撮影を実施し、その空中写真を用いた斜面崩壊・堆積分布と津波浸水域（津波到達範囲）の判読を実施した。本発表では、その判読基準や判読における課題を報告するとともに、現地調査結果との比較により判読精度を考察する。また、主に斜面崩壊・堆積分布について、地形や地質等と比較し、その分布特性を考察する。

２．斜面崩壊・堆積分布
斜面崩壊・堆積分布は、1月2日から1月17日にかけて撮影された空中写真から作成された正射画像を用いて判読した。地震発生前の空中写真も確認しながら、本地震により発生したと思われる斜面崩壊箇所及び土砂堆積箇所をポリゴン形式で取得した。大きさの取得基準は、斜面崩壊・堆積範囲が概ね100平方メートル以上とした。判読結果は国土地理院のウェブサイトからデータで提供するとともに、斜面崩壊・堆積分布図も作成して公開した。
現地調査の結果、概ね正確に取得できていた一方で、一部に判読漏れや伐採跡地の誤判読が存在することが分かった。
斜面崩壊・堆積分布を産業技術総合研究所の20万分の１シームレス地質図（V2）と比較すると、輪島市と珠洲市の境界付近や能登町の山域では新第三系の形質泥岩を主体とする海成層やデイサイト・流紋岩質溶岩・火砕岩域で多発していた。輪島市の山域では古第三系の安山岩・玄武岩質溶岩・火砕岩域や非海成の砂岩泥岩互層、新第三系の海成・非海成が混合した礫岩層域で部分的に多発あるいは散発していた。

３．津波浸水域
津波浸水域も、1月2日から1月17日にかけて撮影された空中写真から作成された正射画像（一部単写真）を用いて判読した。家屋の流失、植生の倒れ、ゴミの集積、道路や田畑の濡れなどの状況、及び標高等も加味し、地震発生前の空中写真も確認しながら、本地震により発生したと思われる津波到達範囲をポリゴン形式で取得した。堤外地を含めて取得し、海岸線は正射画像に合わせた。判読結果は国土地理院のウェブサイトからデータで提供するとともに、津波浸水域（推定）図も作成して公開した。
現地調査の結果、正確に判読できた箇所も多かったものの、過大・過小な判読箇所も散見された。

４．まとめと課題
本地震に伴う斜面崩壊・堆積分布と津波浸水域の判読を実施し、そのデータを提供した。現地検証の結果、斜面崩壊・堆積分布図は概ね正確な一方で、一部に判読漏れや伐採跡地の誤判読を含んでいた。津波浸水域は、正確な箇所も多かったものの、過大・過小と思われる箇所も散見された。
津波浸水域の判読は発生頻度が低いため、経験者が乏しく、作業人員の確保が難しいのが現状である。今後の技術継承が課題である。