[U-15] 2024年能登半島地震(1:J)

[U15-P12] 2024年能登半島地震震源域周辺の震源分布とその不確実性の検討

*椎名 高裕¹、堀川 晴央¹、佐脇 泰典¹、寒河江 皓大¹、今西 和俊¹ (1.産業技術総合研究所)

キーワード：令和6年能登半島地震、震源決定、MCMC

2024年1月1日16時10分に能登半島で発生した地震（2024年能登半島地震，Mj 7.6；以下，本震）は約150 kmにわたる領域を破壊し，津波も観測された．本震破壊域のサイズは2007年能登半島地震（Mj 6.9）の震源域や2020年12月以降活動が続く群発地震活動域[e.g., Amezawa et al., 2023]を含む．このため，本震およびその周辺の詳細な震源分布を明らかにすることは，本震の破壊過程や能登半島周辺のテクトニクスを理解するための基盤的な知見をもたらすと考えられる．
本研究では，能登半島周辺で発生した地震の震源位置を精緻に推定するともにその推定精度を議論することを目的とする．特に，既存の3次元地震波速度構造モデル[Nakajima, 2022]を用いることでより現実的な震源位置の推定を試みる．解析には気象庁一元化震源カタログからマグニチュード1.0以上の地震を収集した．解析期間は2003年5月から2024年1月末である．この期間中に発生した地震数は42,583個であり，このうち，14,299個が本震後の地震である．震源位置推定のために，Shiina and Kano [2022]を基にした，マルコフ連鎖モンテカルロ法（MCMC法）による震源位置と観測点補正値の同時推定手法を構築した．MCMC法を用いることにより推定された震源位置が持つ不確定性を詳しく検討することが可能となる．能登半島沖で発生した地震では初期位置に比べて5 km程度浅い震源深さが推定され，多くの地震が深さ15 km以浅に分布する．この深さ変化は観測に由来する不確定性では説明することができず，仮定した速度構造の違いを反映していると考えられる．このような余震の震源分布は，津波の観測[e.g., Fujii and Satake, 2024]が示すように，能登半島沖の海域下でも地表付近で本震の破壊が生じたことを示唆する．