17:15 〜 18:45
[U15-P97] 能登半島北東部の古地震活動時期の解明に向けた活構造調査
キーワード：海成段丘、海域活断層、掘削、隆起
能登半島北東部沿岸には概ね3段の低位段丘面が断続的に分布し，これらは完新世に繰り返し発生した海底活断層による地震性隆起を示すものと考えられる（宍倉ほか，2020）．一方，これらの低位段丘面群の離水年代は明らかになっていない．本研究では，2023年5月5日に能登半島北東部で発生したM6.5の地震（地震調査研究推進本部，2023）の震源域の古地震活動の時期を推定することを目的として，低位海成段丘面の地形測量と掘削調査を行った．なお，地形測量は，令和6年能登半島地震の前後で実施し，掘削調査はこの地震の前に実施している．
まず能登半島北岸において，空中写真による地形判読で低位段丘面の分布と周囲の地質を確認し，地質調査に適した地点として珠洲市馬緤町および同市川浦町を選定した．
馬緤地区では，上位からL1面，L2面，L3面が認められた．VRS-RTKを用いたGNSS測量による地形断面測量の結果，L1面は標高約8.5 m，L2面は標高約7.5 m，L3面は標高約5.5 mであった．L1面とL2面でボーリング掘削（深度2m）を，L3面でピット掘削（深度0.7 m）を行った．L1面の堆積物は，深度2mまで淘汰の悪い礫混じりシルトからなる．L2面の堆積物は，深度1.45 mまで主として淘汰の悪い礫混じりシルトからなり，1.45 m〜2.00 mでは粗粒砂〜中粒砂まで上方細粒化する淘汰の良い砂層からなる．この砂層は，深度1.9 m付近に腐植層を挟んでおり，そのC-14年代は1830〜1720 cal BPであった．L3面では深度0.35 mまでシルト質の表土が，0.35 m〜0.40 mまで中〜細粒砂からなる淘汰の良い砂層が，0.40 m〜0.70 mまで砂質シルト層が確認された．
川浦地区では，上位からL1面，L2面，L3面が認められた．地形断面測量の結果，L1面は標高約7.3 m，L2面は標高約5.7m，L3面は標高約4.5 mであった．L2面とL3面でボーリング掘削（それぞれ深度2.5 m，2.0 m）を行った．L2面の堆積物は，深度1.47 mまで主として砂礫混じりのシルトからなり，1.47 m〜2.00 mでは淘汰の良い細粒砂層からなる．この砂層は深度1.32〜1.33 mに腐植層を挟むが，そのC-14年代は現代（modern）であった．なおこの砂層からは有孔虫が検出された．L3面では深度0.34 mまで耕作土が，0.34 m〜2.00 mまで淘汰の良い中粒砂層が，2.00 m〜2.50 mまで淘汰の良い細粒砂層が確認された．このうち中粒砂層は少量の貝殻片を含む．
上記の通り，馬緤・川浦両地区では，令和6年能登半島地震前の地形断面測量を行っていたため，2024年1月1日の地震後に同様の方法で取得した地形断面と比較したところ，馬緤地区ではおよそ1.3〜1.5 mの隆起が，川浦地区では約1.4 mの隆起が確認された．両地区の最低位の段丘面（L3面）の標高は約4.5 mないし約5.5 mであり，今回の地震と同様の隆起だけでは形成され得ない．一方で，各面の高度差は概ね1 m〜2 mであり，こちらは今回の地震と同様の隆起で説明しうる．立石ほか（2024，本大会）でも指摘されている通り，低位段丘面群の分布高度と離水年代調査を進めることで能登半島沖の海底活断層の変位分布と活動時期を推定できる可能性がある．こうした情報を踏まえて，能登半島北部の地形発達史も検討する必要がある．
本研究の実施にあたっては，科学研究費補助金（特別研究促進費23K17482）「2023年5月5日の地震を含む能登半島北東部陸海域で継続する地震と災害の総合調査」の一部を使用しました．記して感謝申し上げます．
まず能登半島北岸において，空中写真による地形判読で低位段丘面の分布と周囲の地質を確認し，地質調査に適した地点として珠洲市馬緤町および同市川浦町を選定した．
馬緤地区では，上位からL1面，L2面，L3面が認められた．VRS-RTKを用いたGNSS測量による地形断面測量の結果，L1面は標高約8.5 m，L2面は標高約7.5 m，L3面は標高約5.5 mであった．L1面とL2面でボーリング掘削（深度2m）を，L3面でピット掘削（深度0.7 m）を行った．L1面の堆積物は，深度2mまで淘汰の悪い礫混じりシルトからなる．L2面の堆積物は，深度1.45 mまで主として淘汰の悪い礫混じりシルトからなり，1.45 m〜2.00 mでは粗粒砂〜中粒砂まで上方細粒化する淘汰の良い砂層からなる．この砂層は，深度1.9 m付近に腐植層を挟んでおり，そのC-14年代は1830〜1720 cal BPであった．L3面では深度0.35 mまでシルト質の表土が，0.35 m〜0.40 mまで中〜細粒砂からなる淘汰の良い砂層が，0.40 m〜0.70 mまで砂質シルト層が確認された．
川浦地区では，上位からL1面，L2面，L3面が認められた．地形断面測量の結果，L1面は標高約7.3 m，L2面は標高約5.7m，L3面は標高約4.5 mであった．L2面とL3面でボーリング掘削（それぞれ深度2.5 m，2.0 m）を行った．L2面の堆積物は，深度1.47 mまで主として砂礫混じりのシルトからなり，1.47 m〜2.00 mでは淘汰の良い細粒砂層からなる．この砂層は深度1.32〜1.33 mに腐植層を挟むが，そのC-14年代は現代（modern）であった．なおこの砂層からは有孔虫が検出された．L3面では深度0.34 mまで耕作土が，0.34 m〜2.00 mまで淘汰の良い中粒砂層が，2.00 m〜2.50 mまで淘汰の良い細粒砂層が確認された．このうち中粒砂層は少量の貝殻片を含む．
上記の通り，馬緤・川浦両地区では，令和6年能登半島地震前の地形断面測量を行っていたため，2024年1月1日の地震後に同様の方法で取得した地形断面と比較したところ，馬緤地区ではおよそ1.3〜1.5 mの隆起が，川浦地区では約1.4 mの隆起が確認された．両地区の最低位の段丘面（L3面）の標高は約4.5 mないし約5.5 mであり，今回の地震と同様の隆起だけでは形成され得ない．一方で，各面の高度差は概ね1 m〜2 mであり，こちらは今回の地震と同様の隆起で説明しうる．立石ほか（2024，本大会）でも指摘されている通り，低位段丘面群の分布高度と離水年代調査を進めることで能登半島沖の海底活断層の変位分布と活動時期を推定できる可能性がある．こうした情報を踏まえて，能登半島北部の地形発達史も検討する必要がある．
本研究の実施にあたっては，科学研究費補助金（特別研究促進費23K17482）「2023年5月5日の地震を含む能登半島北東部陸海域で継続する地震と災害の総合調査」の一部を使用しました．記して感謝申し上げます．