[AAS11-P13] MAX-DOASによって観測された九州の二酸化硫黄濃度変動の要因解析
キーワード:二酸化硫黄、MAX-DOAS、火山
代表的な大気汚染物質のひとつである二酸化硫黄(SO2)は、酸性雨やエアロゾルの前駆気体としての役割を通じて、人体や生態系、気象などに影響を及ぼすため、その濃度変動の要因を解明することは重要である。これまでSO2の観測は主に地表濃度に焦点が当てられ実施されてきたが、これをエアロゾルの予測モデルへのデータ同化等の応用研究に利用する上では空間代表性に留意する必要がある。そのような背景の下、本研究では、アジア大陸からの長距離輸送や火山ガスなど様々な影響を受けることが考えられる九州地方(福岡県春日市)において多軸差分吸収分光法(Multi-Axis Differential Optical Absorption Spectroscopy : MAX-DOAS)と呼ばれる地上リモートセンシング手法による連続観測を行った。波長域310-320nmの測定スペクトルをDOAS法で解析し、高度0-1km層内のSO2平均濃度を水平スケール10km程度で導出した。はじめに、2014年7-8月において日最大値が5ppbvを超える日を高濃度日の基準にしたところ、7日間を特定することができた。これらの日を対象にバックトラジェクトリー解析を行ったところ、火山起源と大陸起源の2つのケースに分類することができ、火山起源については阿蘇山および桜島、大陸起源については中国や韓国からの長距離輸送の影響が示唆された。この結果を踏まえ、解析対象期間を2014年1月-2016年9月に延ばして、火山起源および大陸起源の影響について定量的な解析を行った。この期間の日最大値の平均値は3.3ppbv、日最大値の中央値は2.1ppbvであった。まずは火山起源の影響について、空気塊が火山を通過したと判断する範囲の大きさを変えた場合で日最大値の平均値の比較を行ったところ、火口中心近くを通過してきたほうが高濃度を示すという傾向が見られた。阿蘇山の影響を受けた場合の日最大値の平均値は約6ppbv、桜島は約4ppbvであり、阿蘇山の影響の大きさが示唆された。次に大陸起源の影響について、日最大値の平均値と、中国・韓国上空での空気塊の滞留時間および中国・韓国から輸送されてくるまでの時間の長さとの関係についてそれぞれ比較を行ったが、相関は見られなかった。また、大陸からの空気塊が到達した日における日最大値の平均値は約2.4ppbvであった。都市部周辺からの空気塊が到達した場合を見ても同様の結果であった。これらの結果より、九州において大陸の影響は火山の影響よりもが小さいことが示唆された。本講演では2016年10月8日に発生した阿蘇山の爆発的噴火の影響についての考察も含め、解析対象期間をさらに延ばした結果の議論を行う。