16:30 〜 16:45
[ACC37-15] 連続融解システムによるドームふじ氷床コア中のメタン濃度の高分解能測定
キーワード:アイスコア、温室効果ガス、古気候学、南極
国立極地研究所では、氷床コアの連続融解分析(CFA)システムが開発され、ドームふじ氷床コアの測定が開始された。CFAシステムでは連続的に氷床コアを融解し同時に様々な測定をするため、多くの情報を得ることが可能となる。融解水に含まれる成分(水同位体、化学成分、ダスト、ブラックカーボン等)の測定だけでなく、氷床コア中に保存された過去の大気を抽出しメタンの濃度を測定することができる。
CFAシステムを用いるメリットは、従来の測定に比べて圧倒的に高い分解能のデータを得られることにある。メタンの詳細な変動データによって、これまでの手法では見ることのできなかった新たな古環境変動が見出される可能性がある。また、複数のコアの年代をより正確に合わせて比較することが可能となる。例えば、Buizertら(2015)は、CFAによって得られた南極WAIS Divide氷床コアのメタン濃度データとグリーンランドNGRIPコアの酸素同位体比データ(気温の指標)を対比させることにより、両コアの気温変動のタイミングを正確に比較した結果、南極の気温の変曲点(極大、極小)がグリーンランドの急激な気温変化に約200年遅れることを見出した。ドームふじコアのような低涵養量の地点のコアでは、空気の年代決定に不可欠となる氷と空気の年代差の誤差が大きいが、これが他のコアとの比較によって正確に推定できるようになる可能性がある。
CFAにおいて、氷の融解水からの気体の抽出には、通常脱気装置に用いられるような薄膜を使用する。しかし、溶存気体の抽出は完全には行えないため、そのことによる測定対象成分の分別効果を補正する必要がある。その量を、超純水に濃度既知の標準ガスを混入させて実際のアイスコア試料と同様に抽出する実験によって見積もった結果、メタン濃度の場合には真の値に比べて数%低めに測定されると推定した。
第2期ドームふじコアのCFA分析は、最終的には表面から2400m(約30万年前)にかけて行われる予定であり、現在、主に最終退氷期を対象とした分析を開始したところである。予稿投稿時点では、300~314m(ガス年代:約7500 – 8000年前)の測定が行われた。気体抽出時の分別を補正したCFA分析値と、氷床コアを個別に分析する従来の測定方法による値との差は約1%以下であり、補正が正しく行われていることが判明した。当日は、CFAの気体分析部と標準ガスを用いたキャリブレーションの詳細に加え、ドームふじコアからのメタンのCFAによる復元結果を報告する。
CFAシステムを用いるメリットは、従来の測定に比べて圧倒的に高い分解能のデータを得られることにある。メタンの詳細な変動データによって、これまでの手法では見ることのできなかった新たな古環境変動が見出される可能性がある。また、複数のコアの年代をより正確に合わせて比較することが可能となる。例えば、Buizertら(2015)は、CFAによって得られた南極WAIS Divide氷床コアのメタン濃度データとグリーンランドNGRIPコアの酸素同位体比データ(気温の指標)を対比させることにより、両コアの気温変動のタイミングを正確に比較した結果、南極の気温の変曲点(極大、極小)がグリーンランドの急激な気温変化に約200年遅れることを見出した。ドームふじコアのような低涵養量の地点のコアでは、空気の年代決定に不可欠となる氷と空気の年代差の誤差が大きいが、これが他のコアとの比較によって正確に推定できるようになる可能性がある。
CFAにおいて、氷の融解水からの気体の抽出には、通常脱気装置に用いられるような薄膜を使用する。しかし、溶存気体の抽出は完全には行えないため、そのことによる測定対象成分の分別効果を補正する必要がある。その量を、超純水に濃度既知の標準ガスを混入させて実際のアイスコア試料と同様に抽出する実験によって見積もった結果、メタン濃度の場合には真の値に比べて数%低めに測定されると推定した。
第2期ドームふじコアのCFA分析は、最終的には表面から2400m(約30万年前)にかけて行われる予定であり、現在、主に最終退氷期を対象とした分析を開始したところである。予稿投稿時点では、300~314m(ガス年代:約7500 – 8000年前)の測定が行われた。気体抽出時の分別を補正したCFA分析値と、氷床コアを個別に分析する従来の測定方法による値との差は約1%以下であり、補正が正しく行われていることが判明した。当日は、CFAの気体分析部と標準ガスを用いたキャリブレーションの詳細に加え、ドームふじコアからのメタンのCFAによる復元結果を報告する。