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[ACG52-07] 西部北太平洋亜寒帯域における基礎生産量の季節性の経年変動
キーワード:基礎生産量、リモートセンシング、HNLC海域
西部北太平洋亜寒帯域は植物プランクトンにより鉄が消費されると、栄養塩や光が豊富に存在しても基礎生産が制限されるHigh Nutrient Low Chlorophyll (HNLC) 海域となる。千島列島海峡部における潮汐流と複雑な海底地形によって発生した内部波は強い鉛直混合を引き起こし、高い鉄濃度の中層水を表層にもたらすことが示唆されているため、物理・化学的な側面から海洋の鉛直混合の研究が行われている。現在、鉛直混合過程や海洋中の鉄を含む栄養物質の循環について研究が推進されている。もし、継続的な鉛直混合が鉄を含んだ中層水を表層に供給するならば、ブルーム以後の夏や秋も基礎生産が維持されていると考えられるが、鉛直混合がもたらす栄養物質と生物生産との関係については不明な点が多い。衛星リモートセンシングは各季節における基礎生産量の時間変化を観測できるため、栄養物質給量に対する基礎生産の応答を推察することが可能である。また、そのためには基礎生産量変動の季節性を定義することが必要である。
そこで本研究では、基礎生産量変動の季節性を表す指標を定義し、その類似性から海洋を区分した。また、季節ごとに基礎生産量の経年変動の要因を明らかにすることを目的とした。
2003年から2015年の13年間にMODIS/Aquaで取得された、リモートセンシング反射率と光合成有効放射照度を利用した(空間解像度9 km、8日平均)。リモートセンシング反射率から植物プランクトンの光吸収係数をQAA (半経験的アルゴリズム) で求め、光吸収ベースの基礎生産量推定アルゴリズム(AbsorptionーBased Production Model)で基礎生産量を算出し、各年の同一週における基礎生産量の対数平均値を気候値とした。海氷密接度は2003年から2010年の8年間にAMSR-E/Aquaで取得された、空間解像度12km、1日平均のデータを利用した。また、2003年から2012年の10年間にAVHRR/NOAAで取得された、空間解像度4km、1日平均の海表面水温も利用した。さらに、NCEPが提供する2003年から2015年の13年間の純熱フラックスの再解析データ(空間解像度1度、1月平均)を利用した。気候変動指数として、ワシントン大学が提供する2002年1月から2015年12月のPDO (Pacific Decadal Oscillation) 指数を取得し、年平均値を算出して利用した。
基礎生産量の気候値に対してクラスター解析 (K平均法) を適用し、基礎生産量の時間変動を12のクラスに分類した。そして、クラス毎に基礎生産量の2回のピークを抽出し、1期:1回目のピークの期間(ピーク幅)、2期: 1回目のピーク後から2回目のピーク前までの期間、3期: 2回目のピークの期間とした。
オホーツク海の北岸と西岸、およびカムチャッカ半島北部の東岸は春以降海氷に覆われていたが、海氷融解直後にピークが見られた。カムチャッカ半島南部の東西においては春と秋の2回、同規模のピークが見られた。カムチャッカ半島先端部とアリューシャン列島付近では、2回目のピークが1回目のピークよりも大きかった。オホーツク海中央部と東部、ベーリング海西部と中央部、および親潮域は1回目のピークの方が2回目のピークより大きかった。
いずれの領域においても冬期の熱フラックスが最小になり、SSTが最小になった後、1期の基礎生産量増加が始まっていたため、1期の時期は海洋の冷却と混合層の発達が収まったことに関連していると考えられる。各期間の変動を主成分分析したところ、いずれも第1モードの寄与率が70%以上であった。1期および2期における水温の平均値と熱フラックス量の経年変動は、PDO指数の経年変動と位相が逆であり、基礎生産量の積算値の第1モードの経年変動とPDO指数との間には有意な相関関係があった。したがって、1期と2期つまり春から夏にかけての基礎生産量の経年変動に、気候変動が影響していると示唆された。
そこで本研究では、基礎生産量変動の季節性を表す指標を定義し、その類似性から海洋を区分した。また、季節ごとに基礎生産量の経年変動の要因を明らかにすることを目的とした。
2003年から2015年の13年間にMODIS/Aquaで取得された、リモートセンシング反射率と光合成有効放射照度を利用した(空間解像度9 km、8日平均)。リモートセンシング反射率から植物プランクトンの光吸収係数をQAA (半経験的アルゴリズム) で求め、光吸収ベースの基礎生産量推定アルゴリズム(AbsorptionーBased Production Model)で基礎生産量を算出し、各年の同一週における基礎生産量の対数平均値を気候値とした。海氷密接度は2003年から2010年の8年間にAMSR-E/Aquaで取得された、空間解像度12km、1日平均のデータを利用した。また、2003年から2012年の10年間にAVHRR/NOAAで取得された、空間解像度4km、1日平均の海表面水温も利用した。さらに、NCEPが提供する2003年から2015年の13年間の純熱フラックスの再解析データ(空間解像度1度、1月平均)を利用した。気候変動指数として、ワシントン大学が提供する2002年1月から2015年12月のPDO (Pacific Decadal Oscillation) 指数を取得し、年平均値を算出して利用した。
基礎生産量の気候値に対してクラスター解析 (K平均法) を適用し、基礎生産量の時間変動を12のクラスに分類した。そして、クラス毎に基礎生産量の2回のピークを抽出し、1期:1回目のピークの期間(ピーク幅)、2期: 1回目のピーク後から2回目のピーク前までの期間、3期: 2回目のピークの期間とした。
オホーツク海の北岸と西岸、およびカムチャッカ半島北部の東岸は春以降海氷に覆われていたが、海氷融解直後にピークが見られた。カムチャッカ半島南部の東西においては春と秋の2回、同規模のピークが見られた。カムチャッカ半島先端部とアリューシャン列島付近では、2回目のピークが1回目のピークよりも大きかった。オホーツク海中央部と東部、ベーリング海西部と中央部、および親潮域は1回目のピークの方が2回目のピークより大きかった。
いずれの領域においても冬期の熱フラックスが最小になり、SSTが最小になった後、1期の基礎生産量増加が始まっていたため、1期の時期は海洋の冷却と混合層の発達が収まったことに関連していると考えられる。各期間の変動を主成分分析したところ、いずれも第1モードの寄与率が70%以上であった。1期および2期における水温の平均値と熱フラックス量の経年変動は、PDO指数の経年変動と位相が逆であり、基礎生産量の積算値の第1モードの経年変動とPDO指数との間には有意な相関関係があった。したがって、1期と2期つまり春から夏にかけての基礎生産量の経年変動に、気候変動が影響していると示唆された。