14:15 〜 14:30
[BCG10-03] 白亜紀の玄武岩質溶岩の風化は海底下で進行中?
ナノ鉱物解析と粘土鉱物同定による解明
キーワード:ノントロナイト、海洋地殻、風化、FIB-TEM
海洋地殻上部に普遍的な玄武岩質溶岩は空隙率が高く,岩石と海水の反応により地球規模での元素循環に寄与している.しかし,形成後1000万年で空隙が二次鉱物により充填されるため,10 Ma以降の玄武岩基盤中で海水との反応が進行しているか不明である.本研究では,ナノスケールでの鉱物解析と従来の粘土鉱物同定法を組み合わせて,亀裂中で玄武岩と海水の風化過程で生成する粘土鉱物の有無と産状を明らかにすることを目的とする.
南太平洋環流域の形成年代84-120 Maの玄武岩基盤は,溶存酸素が浸透している厚さ約70 mの堆積物に覆われている.統合国際深海掘削計画第329次研究航海で取得された南太平洋環流域の基盤岩のコアのうち,異なる二次鉱物が亀裂を充填される深度102-121 mの3試料(U1365E7R-2は炭酸カルシウム鉱物, U1365E8R-4はセラドナイト,U1365E12R-2は酸化鉄鉱物)を対象とした.
亀裂中の粘土鉱物をコア試料の粉末から水ひで回収し,X線回折(XRD)パターンの解析を行った結果,どの試料からもd001 = 1.5 nmの回折ピークが得られ,エチレングリコール処理で1.7 nmに膨張した.粘土鉱物の(060)面の回折ピークの位置から,U1365E7R-2には3八面体スメクタイト,U1365E12R-2にはノントロナイト,U1365E8R-4は両者の混合があることがわかった.水ひ試料に対してエネルギー分散型X線分光装置(EDS)搭載の走査型電子顕微鏡(SEM)による化学組成の半定量分析を行った結果,XRD測定により同定されたノントロナイトと3八面体スメクタイトのサポナイトの組成が得られた.亀裂中でのスメクタイトの産状を明らかにするために,亀裂を含む玄武岩の薄片を作成し,SEM-EDSにより解析した.その結果,U1365E7R-2では炭酸カルシウム鉱物がサポナイトと隙間なく亀裂を充填しており,U1365E8R-4とU1365E12R-2の薄片中の粘土鉱物のFeが水ひ試料よりも過剰に存在することがわかった.
集束イオンビーム(FIB)加工によりU1365E12R-2の薄片中のFeが過剰に存在するノントロナイトの部位の超薄片を作成し、高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM)で観察した結果,ノントロナイトとゲーサイトナノ粒子が鉱物共生するのを観察できた.薄片のSEM-EDS分析の結果から,粘土鉱物の鉄過剰分を補正して,亀裂中でのスメクタイトの産状を調べた結果,U1365E8R-4ではセラドナイトと玄武岩基質の境界部をノントロナイトとサポナイトが充填しているのに対し,U1365E12R-2では二次鉱物による空隙の充填率の低い亀裂中にノントロナイトが散在した.Feに富むノントロナイトほどKを多く含むことから,海水中に含まれるKを取り込みながら形成していることが示唆された.
基盤直上の堆積物中の間隙水のK+濃度が深度方向に減少することから玄武岩基盤にKが現在でも吸収され,かつ堆積物を介して海水から供給される酸素で呼吸する微生物が亀裂中に生息することから,10 Ma以降の玄武岩基盤は現在も海水と反応して,地球規模での元素の挙動に影響を及ぼしている可能性が本研究により示された.
南太平洋環流域の形成年代84-120 Maの玄武岩基盤は,溶存酸素が浸透している厚さ約70 mの堆積物に覆われている.統合国際深海掘削計画第329次研究航海で取得された南太平洋環流域の基盤岩のコアのうち,異なる二次鉱物が亀裂を充填される深度102-121 mの3試料(U1365E7R-2は炭酸カルシウム鉱物, U1365E8R-4はセラドナイト,U1365E12R-2は酸化鉄鉱物)を対象とした.
亀裂中の粘土鉱物をコア試料の粉末から水ひで回収し,X線回折(XRD)パターンの解析を行った結果,どの試料からもd001 = 1.5 nmの回折ピークが得られ,エチレングリコール処理で1.7 nmに膨張した.粘土鉱物の(060)面の回折ピークの位置から,U1365E7R-2には3八面体スメクタイト,U1365E12R-2にはノントロナイト,U1365E8R-4は両者の混合があることがわかった.水ひ試料に対してエネルギー分散型X線分光装置(EDS)搭載の走査型電子顕微鏡(SEM)による化学組成の半定量分析を行った結果,XRD測定により同定されたノントロナイトと3八面体スメクタイトのサポナイトの組成が得られた.亀裂中でのスメクタイトの産状を明らかにするために,亀裂を含む玄武岩の薄片を作成し,SEM-EDSにより解析した.その結果,U1365E7R-2では炭酸カルシウム鉱物がサポナイトと隙間なく亀裂を充填しており,U1365E8R-4とU1365E12R-2の薄片中の粘土鉱物のFeが水ひ試料よりも過剰に存在することがわかった.
集束イオンビーム(FIB)加工によりU1365E12R-2の薄片中のFeが過剰に存在するノントロナイトの部位の超薄片を作成し、高分解能透過型電子顕微鏡(HR-TEM)で観察した結果,ノントロナイトとゲーサイトナノ粒子が鉱物共生するのを観察できた.薄片のSEM-EDS分析の結果から,粘土鉱物の鉄過剰分を補正して,亀裂中でのスメクタイトの産状を調べた結果,U1365E8R-4ではセラドナイトと玄武岩基質の境界部をノントロナイトとサポナイトが充填しているのに対し,U1365E12R-2では二次鉱物による空隙の充填率の低い亀裂中にノントロナイトが散在した.Feに富むノントロナイトほどKを多く含むことから,海水中に含まれるKを取り込みながら形成していることが示唆された.
基盤直上の堆積物中の間隙水のK+濃度が深度方向に減少することから玄武岩基盤にKが現在でも吸収され,かつ堆積物を介して海水から供給される酸素で呼吸する微生物が亀裂中に生息することから,10 Ma以降の玄武岩基盤は現在も海水と反応して,地球規模での元素の挙動に影響を及ぼしている可能性が本研究により示された.