[HCG32-P03] レジン注入による割れ目可視化と岩石組織観察
キーワード:地層処分、レジン注入、割れ目可視化、結晶質岩、土岐花崗岩、瑞浪超深地層研究所
高レベル放射性廃棄物の地層処分においては、放射性核種が地質環境中を移行する場合、地下の岩盤中に発達する割れ目が主要な移行経路となると考えられている。岩盤中の物質移行特性を直接的に評価する手法の一つとして、岩盤中の割れ目に蛍光剤を添加したレジン(樹脂)を注入し、レジン硬化後のボーリング掘削で得たコア試料に認められるレジン充填割れ目の幅を計測する方法がある。電中研ではスイスグリムゼル試験場においてこの手法を適用し、レジン充填割れ目の幅の評価を行った。この実績を生かし、国内の花崗岩などの結晶質岩に適用するため、割れ目の可視化技術の高度化を進めている。本稿では、可視化した割れ目の地質学的な特徴を把握するために、原位置レジン注入試験に使用予定のレジンを室内で注入したコア試料を用い、レジン充填割れ目とその周辺母岩を含む岩石薄片を製作し、偏光顕微鏡下における観察を行った。日本原子力研究開発機構の瑞浪超深地層研究所の深度300m坑道において掘削したボーリングコアに黄色の蛍光剤を添加したエポキシ樹脂を注入し、レジン充填割れ目とその母岩を含んだ岩石薄片を製作し観察を行った。その結果、レジン充填割れ目の幅は平均0.17mm、割れ目表面には細粒の方解石(0.05mm前後)やより微細な方解石(0.005mm以下)の分布を確認した。前者の方解石中には不透明鉱物や破砕した斜長石も複数混在して認められ、レジン充填割れ目沿いに平行に発達する微細な割れ目にも充填している場合が多い。これに対し後者は方解石のみから成り比較的割れ目表面の最上位に産することが多い。このように異なる粒径の方解石とそれと共に産する鉱物、分布領域の違いにより、レジン充填割れ目に晶出した方解石の新旧関係を見出した。また薄片製作前の岩石チップに青色の顔料を添加したレジンを圧入(15~17MPa)することで、黄色の蛍光剤を添加したレジン注入時よりも大きな圧力下でレジンを注入した場合に可視化される割れ目幅を測定した。その結果、可視化された割れ目の幅は平均0.006mmであり、青色のレジンは鉱物粒界や石英中の割れ目に注入されていることが分かり、より微細な割れ目幅まで評価が可能であることが分かった。上記の方法で深度500mのコア試料についてもレジン注入および岩石薄片観察を行い、レジン注入により可視化された割れ目間隙の評価と割れ目周辺の岩石組織観察から割れ目形成と新旧関係について考察する予定である。なお、本研究の内容は、経済産業省資源エネルギー庁より(一財)電力中央研究所が受託した「岩盤中地下水移行評価確証技術開発」の成果の一部である。また、(国研)日本原子力研究開発機構との共同研究の一部として実施した。