[HGM04-P01] A new approach for marine terrace extraction using DEM
キーワード:DEM、海岸段丘、関東地震
房総半島南部に形成されている離水海岸段丘を対象として,DEMを用いた段丘地形検出の新たな手法を考案した.
離水海岸段丘は,波浪の浸食によって汀線直下に形成された平坦な海食台が,地震性隆起や気候変動による海水準低下などの相対的海面低下を受けて陸上に残存した地形である.例えば,今回の調査対象地域である房総半島南部の海岸段丘は,相模トラフで発生するプレート境界地震による隆起の痕跡と考えられている.このような海岸段丘を利用して,その地域の古地震発生履歴や海水準変動を調査する研究が広く行われてきたが,そのためには段丘の高度や形成年代を把握する必要があった.
従来の海岸段丘の検出は,初期には航空写真判読や現地調査によって行われてきた.しかしながら,現地調査は時間がかかるため十分量のデータが得られず,航空写真判読は読み取りに技術が必要であるうえ,過去の変動履歴の解析に必要な高度データが得られないという欠点があった.近年ではDEMを用いて,斜度や曲率のような地形パラメータから数値的に段丘地形を検出する手法も実行されている.Scott and Pinter (2003)は,段丘面と段丘崖との間の地形傾斜の値の差に着目して,傾斜値や起伏値がある閾値未満の領域を抽出するという手法を用いた.しかし,この手法は,なだらかで各段丘面が十分分離している地域では有効であったが,今回対象としている房総半島南部のような狭小な段丘群では,段丘面同士を分類する能力が弱くなった.
そこで,本研究では,DEMを用いた新たな段丘地形検出手法として,標高投影イメージング(elevation view imaging)を考案した.これは,段丘地域を海岸線と垂直に短冊状に分割した各区画内で,地表面高度に対する地形パラメータの値をプロットし,その結果を横方向に並べて表示することで,段丘地形の垂直投影による可視化を試みたものである.この手法は,離水段丘地形はその形成過程から,水平方向,もしくは緩傾斜に同様な形状,すなわちある種の地形パラメータが連続しているはずであることに着目している.
今回解析を行った地域は,房総半島南東部に位置する浸食海岸地形が卓越する岩石海岸である.本地域には,1703年元禄関東地震(M8.2)と過去の同規模の地震発生時に隆起したと考えられている4段の離水海岸段丘が形成されている.使用したデータセットはLiDARにより取得した0.5mメッシュDTMである.イメージングに用いる地形パラメータとして,横山ほか(1999)による開度に基づく値を採用した.このパラメータを用いて標高投影イメージングを作成すると,段丘崖地形に対応する高度にほぼ水平にピークが連続し,段丘地形の標高を可視的に検出することに成功した.
今回対象とした地域は,茅根・吉川(1984)によって現地測量による旧汀線の高度が求められている.この値と本研究の結果を比較するとその高度はほぼ一致した.標高投影イメージングは,(1)航空写真判読よりも判別が容易で,(2)ほぼ水平方向に連続した直線として可視化されるという客観的な検出基準が得られ,(3)従来のDEMを用いた検出手法では困難であった複雑で狭小な段丘地形にも適用でき,(4)段丘形成メカニズムを解析するうえで重要な標高データが付随的に入手できる,という特徴がある.
参考文献
Scott, A.T., Pinter, N., 2003. Extraction of coastal terraces and shoreline-angle elevations from digital terrain models, Santa Cruz and Anacapa Islands, California. Phys Geogr 24, 271-294.
横山隆三,白沢道生,菊池祐, 1999. 開度による地形特徴の表示.写真測量とリモートセンシング, 4, 26-34.
茅根創, 吉川虎雄, 1986. 房総半島南東岸における現成・離水浸食海岸地形の比較研究. 地理学評論 Ser. A 59, 18-36.
離水海岸段丘は,波浪の浸食によって汀線直下に形成された平坦な海食台が,地震性隆起や気候変動による海水準低下などの相対的海面低下を受けて陸上に残存した地形である.例えば,今回の調査対象地域である房総半島南部の海岸段丘は,相模トラフで発生するプレート境界地震による隆起の痕跡と考えられている.このような海岸段丘を利用して,その地域の古地震発生履歴や海水準変動を調査する研究が広く行われてきたが,そのためには段丘の高度や形成年代を把握する必要があった.
従来の海岸段丘の検出は,初期には航空写真判読や現地調査によって行われてきた.しかしながら,現地調査は時間がかかるため十分量のデータが得られず,航空写真判読は読み取りに技術が必要であるうえ,過去の変動履歴の解析に必要な高度データが得られないという欠点があった.近年ではDEMを用いて,斜度や曲率のような地形パラメータから数値的に段丘地形を検出する手法も実行されている.Scott and Pinter (2003)は,段丘面と段丘崖との間の地形傾斜の値の差に着目して,傾斜値や起伏値がある閾値未満の領域を抽出するという手法を用いた.しかし,この手法は,なだらかで各段丘面が十分分離している地域では有効であったが,今回対象としている房総半島南部のような狭小な段丘群では,段丘面同士を分類する能力が弱くなった.
そこで,本研究では,DEMを用いた新たな段丘地形検出手法として,標高投影イメージング(elevation view imaging)を考案した.これは,段丘地域を海岸線と垂直に短冊状に分割した各区画内で,地表面高度に対する地形パラメータの値をプロットし,その結果を横方向に並べて表示することで,段丘地形の垂直投影による可視化を試みたものである.この手法は,離水段丘地形はその形成過程から,水平方向,もしくは緩傾斜に同様な形状,すなわちある種の地形パラメータが連続しているはずであることに着目している.
今回解析を行った地域は,房総半島南東部に位置する浸食海岸地形が卓越する岩石海岸である.本地域には,1703年元禄関東地震(M8.2)と過去の同規模の地震発生時に隆起したと考えられている4段の離水海岸段丘が形成されている.使用したデータセットはLiDARにより取得した0.5mメッシュDTMである.イメージングに用いる地形パラメータとして,横山ほか(1999)による開度に基づく値を採用した.このパラメータを用いて標高投影イメージングを作成すると,段丘崖地形に対応する高度にほぼ水平にピークが連続し,段丘地形の標高を可視的に検出することに成功した.
今回対象とした地域は,茅根・吉川(1984)によって現地測量による旧汀線の高度が求められている.この値と本研究の結果を比較するとその高度はほぼ一致した.標高投影イメージングは,(1)航空写真判読よりも判別が容易で,(2)ほぼ水平方向に連続した直線として可視化されるという客観的な検出基準が得られ,(3)従来のDEMを用いた検出手法では困難であった複雑で狭小な段丘地形にも適用でき,(4)段丘形成メカニズムを解析するうえで重要な標高データが付随的に入手できる,という特徴がある.
参考文献
Scott, A.T., Pinter, N., 2003. Extraction of coastal terraces and shoreline-angle elevations from digital terrain models, Santa Cruz and Anacapa Islands, California. Phys Geogr 24, 271-294.
横山隆三,白沢道生,菊池祐, 1999. 開度による地形特徴の表示.写真測量とリモートセンシング, 4, 26-34.
茅根創, 吉川虎雄, 1986. 房総半島南東岸における現成・離水浸食海岸地形の比較研究. 地理学評論 Ser. A 59, 18-36.