[HQR05-P11] 和歌山県串本町の陸繋砂洲コア試料から発見された天城カワゴ平(Kg)テフラ
キーワード:南海トラフ、潜在火山灰、天城カワゴ平(Kg)、津波堆積物
南海トラフの中部沿岸に位置する和歌山県串本町の陸繋砂州(標高5.7 m)において、過去の巨大津波の発生サイクルを明らかにするため、深度3〜9mまでの5本のボーリングコア試料を採取した。採取したボーリングコアには、いくつかの津波堆積物の可能性がある粗粒な砂礫層が見られ、宍倉ほか(2014)などで報告した。また最も長い050コアの深度7.28~7.47 mには、バブルウォール型のガラス片を多量に含む灰白色火山灰層があり、ガラスの屈折率や成分分析の結果、鬼界アカホヤ(K-Ah)テフラであることが判明した。鬼界アカホヤテフラ以外は肉眼でテフラを認識できないことから、今回、潜在火山灰の分析を行ったので、その結果を報告する。
方法はコアを5cmずつ分割して細粒物を取り除き、500〜125μmの粗粒物質を抽出して顕微鏡で観察を行った結果、多くの試料の中に肉眼では見えない潜在火山灰、いわゆるクリプトテフラが確認された。それらのガラスの形状の記載とともに、ガラス成分について温度可変型屈折率測定装置(MAIOT)を使って屈折率測定を行い、広域火山灰との対比を行った。その結果、多くの火山灰は鬼界アカホヤ(K-Ah)または姶良Tn(AT)が再堆積したものであったが、2本のコア試料から、天城カワゴ平(Kg)と考えられるテフラを発見し、さらにEPMAによる成分分析も行いこれまでの研究成果と矛盾しないことを確認した。天城カワゴ平(Kg)テフラが確認された層準について、レーザ回析・散乱式粒度分布測定装置SALD-3100(島津製作所製)を用いて粒度分析を行った結果、ほとんどシルト〜粘土からなる静水域で堆積したラグーンの堆積物であることがわかり、周辺の斜面から流水によって運搬されてきたものではなく、原位置堆積のテフラであると判断した。また天城カワゴ平(Kg)テフラが確認された試料は、14C年代値が3060-2870calBPと同層準、および3320-3080calBP直下で採取されたものであり、奥村ほか(1999)による噴出年代に概ね一致している。
このうち、3060-2870calBPを示す直上に20cm以上の厚い粗粒な砂礫層があり、これを津波堆積物と考えると、天城カワゴ平テフラ降下直後に南海トラフで巨大津波が発生した可能性が高く、津波発生年代を複数の年代測定法によってより限定できたことは、天城カワゴ平テフラが和歌山県南部にまで達していたという新発見に加えて、研究の意義が大きいと考えている。
方法はコアを5cmずつ分割して細粒物を取り除き、500〜125μmの粗粒物質を抽出して顕微鏡で観察を行った結果、多くの試料の中に肉眼では見えない潜在火山灰、いわゆるクリプトテフラが確認された。それらのガラスの形状の記載とともに、ガラス成分について温度可変型屈折率測定装置(MAIOT)を使って屈折率測定を行い、広域火山灰との対比を行った。その結果、多くの火山灰は鬼界アカホヤ(K-Ah)または姶良Tn(AT)が再堆積したものであったが、2本のコア試料から、天城カワゴ平(Kg)と考えられるテフラを発見し、さらにEPMAによる成分分析も行いこれまでの研究成果と矛盾しないことを確認した。天城カワゴ平(Kg)テフラが確認された層準について、レーザ回析・散乱式粒度分布測定装置SALD-3100(島津製作所製)を用いて粒度分析を行った結果、ほとんどシルト〜粘土からなる静水域で堆積したラグーンの堆積物であることがわかり、周辺の斜面から流水によって運搬されてきたものではなく、原位置堆積のテフラであると判断した。また天城カワゴ平(Kg)テフラが確認された試料は、14C年代値が3060-2870calBPと同層準、および3320-3080calBP直下で採取されたものであり、奥村ほか(1999)による噴出年代に概ね一致している。
このうち、3060-2870calBPを示す直上に20cm以上の厚い粗粒な砂礫層があり、これを津波堆積物と考えると、天城カワゴ平テフラ降下直後に南海トラフで巨大津波が発生した可能性が高く、津波発生年代を複数の年代測定法によってより限定できたことは、天城カワゴ平テフラが和歌山県南部にまで達していたという新発見に加えて、研究の意義が大きいと考えている。