JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ]Eveningポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-AG 応用地球科学

[M-AG35] [EJ] 海洋地球インフォマティクス

2017年5月20日(土) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

[MAG35-P02] 大気海洋シミュレーションデータの産業利用戦略

*Kakuta Shinya1西村 一1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構)

キーワード:産業利用、戦略、大気海洋シミュレーション

公的機関の研究開発活動がもたらす社会経済波及効果の拡大を目的として、民間との連携のもと、スーパーコンピューター及びその成果を用いたビジネスを創出する事業戦略につき考察した。
気温や風速などの気象データは環境についてデータであり、データは原理的に複製可能であるので競合性がない(共有してもデータそのものは減らない)。そこで、個々の企業にとってデータは競合せず同業他社などによる只乗りを排除できるクラブ財となりえる。他方、環境は只乗りを排除できない公共財である。
社会課題の解決には、成功事例の創出だけでなく、横展開と長期運用が必須であり、公的資金の公募でも社会実装への見通しを求められる場面が増えているが、公的資金のみでは賄えず、ビジネス化が不可欠である。他方、公的機関も研究成果がより一層の社会経済波及効果を及ぼすよう求められている。しかし、公的研究機関は人手不足のため、現在実施している国のプロジェクトに対応するのが精いっぱいである。そこで、公的機関の研究者の負担増よりもメリットが上回るようにするために、アプリ開発できる企業と連携する。さらに、当該企業に対する手ほどきに際する研究者の労力を減らすため、それを事業として実施できる企業も探索する。
当初段階では公的機関自身の収益性よりも、社会経済波及効果を優先する。そのため、社会経済波及効果の大きい人口集中域(すなわち都市)を除外せず、顧客の多いエンドユーザ企業(建設業等)または顧客獲得能力の高い中間ユーザー企業をパートナーとして巻き込む。データ産業のエコシステムの観点からこれらのパートナー企業でサプライチェーンを構築できるよう、マルチプレーヤーでニーズ・シーズマッチングを行う。
競合相手となる既存の気象サービス、地理情報サービスと比較した結果、次の戦略が妥当と考えられる。
- 競合のないブルーオーシャン戦略を採ることによりニッチ・トップを目指す。
- 初めは繰返オペレーションのないアセスメント、次に季節予測、将来的に早期警戒のための短期予測を視野に入れる。
- シェーピング型の経営戦略アプローチを採る。すなわち、施設・設備をプラットフォームとして、直接の顧客からエンドユーザ企業に至る多様なステークホルダの協業を柔軟に編成・調整することにより、業界そのものの形成を自身の有利な方向に主導できる機会を捉える。