[MTT39-P04] 火星地表面模擬環境下における音波特性の実験的検証
キーワード:音波、火星
背景
2020年代に火星探査機の打ち上げが計画されており、シリーズ的な火星探査の実現が期待されている.2016年現在,火星大気中における音波観測は未だ行われていない.探査用ローバーに本研究を反映して設計・開発するマイクを搭載できれば,ダスト現象に伴う火星大気中の音の計測だけでなく,大気中の物理量の間接計測も可能になるとともに,春先の季節に発生する可能性のあるガス放出現象など最近注目され始めた火星地表面活動にもフォーカスしたリモートセンシングに応用できると期待される.
目的
火星探査機に搭載するマイク評価モデルを大型サイエンススペースチャンバー内にて稼働させ,温度条件を除いて火星大気を模擬した状況にて分子種の違う希薄大気中の音波減衰と音速に関して実験的に測定することを目的とする.
実験概要
火星地表面における大気条件は、CO2成分が95%を占め,地表面気圧7 hPa,夜間気温-120 ℃というもので,これらの過酷環境を模した環境下で耐久試験およびインフラサウンドを含めた音波検出性能の較正試験を千葉工業大学,高知工科大学, ISAS/JAXAにて2015年度に行った.火星地表条件下での動作確認を終えたマイクを用いてISAS/JAXAの大型サイエンススペースチャンバーで火星模擬大気中での音波伝搬特性を計測した.実験条件として空気,アルゴン,二酸化炭素をそれぞれ7 hPa,70 hPaとし,空気のみ大気圧を含めた測定を行った.このチャンバーは直径約2 m,長さ4.5 mで、内部に可動アームがあり,アーム終端より奥側にスピーカーを固定設置し一定の周波数を出力,アームの可動する3 mの範囲内で長手方向に0.25 mずつ動かして測定した.音速は,チャンバー内で発生する半波長分の定在波から算出した.また,減衰は同様の手法にて,異なる圧力下で振幅値を比較し算出した.
実験結果
今回の実験では約3 m離した2台のマイク側の時間差から音速測定を目指した手法での検出管共鳴によるは定在波にかき消され算出困難と判断したため,この定在波の腹と節の位置確認に補助的に取得したデータから音速を算出した.今回,データ取得の分布が粗かったため正密な値は算出できなかったが,チャンバー内を二酸化炭素で7 hPaに設定した時,音速の理論値269.7 m/sに対し実験値では280 m/sという結果が得られた.また,アルゴンでは理論値322.1 m/sに対し実験値350 m/s,空気では同326.4 m/sに対し350 m/sとなり,これらの結果より理論値に対し8%以内の誤差で求めることができた.また,アルゴンで70 hPaと7 hPaでの音波強度を比較した場合,10 倍の圧力差であれば平均で10.41倍の振幅の差が得られ,空気のとき同条件では8.9倍の振幅差が得られた.
考察
音速の計測を行い,理論値に近い値が得られたため,同様の手法で観測点を増やすことでより正確な値を導き出すことが可能であると考えられる.また,音波減衰に関しては 動粘度 = 絶対粘度 / 密度 の式より音速,気体,温度が同一とした場合,圧力が密度の関数となるため圧力が小さいと減衰は大きくなるという考えと一致する.
結論
マイク評価モデルを用いて火星地表面模擬環境下にて音速と音波減衰を計測した.音速は理論値に近似した値を得られたため,火星大気での音速は理論式とほぼ同一な値を得ることが可能であると考えられ,今回のマイクで測定可能であることも示された.今後は気球にマイクを搭載し,チャンバーのような境界面が無く火星大気条件に比較的近い成層圏大気中における実験を10月にスウェーデンESRANGEにて行う予定である.
2020年代に火星探査機の打ち上げが計画されており、シリーズ的な火星探査の実現が期待されている.2016年現在,火星大気中における音波観測は未だ行われていない.探査用ローバーに本研究を反映して設計・開発するマイクを搭載できれば,ダスト現象に伴う火星大気中の音の計測だけでなく,大気中の物理量の間接計測も可能になるとともに,春先の季節に発生する可能性のあるガス放出現象など最近注目され始めた火星地表面活動にもフォーカスしたリモートセンシングに応用できると期待される.
目的
火星探査機に搭載するマイク評価モデルを大型サイエンススペースチャンバー内にて稼働させ,温度条件を除いて火星大気を模擬した状況にて分子種の違う希薄大気中の音波減衰と音速に関して実験的に測定することを目的とする.
実験概要
火星地表面における大気条件は、CO2成分が95%を占め,地表面気圧7 hPa,夜間気温-120 ℃というもので,これらの過酷環境を模した環境下で耐久試験およびインフラサウンドを含めた音波検出性能の較正試験を千葉工業大学,高知工科大学, ISAS/JAXAにて2015年度に行った.火星地表条件下での動作確認を終えたマイクを用いてISAS/JAXAの大型サイエンススペースチャンバーで火星模擬大気中での音波伝搬特性を計測した.実験条件として空気,アルゴン,二酸化炭素をそれぞれ7 hPa,70 hPaとし,空気のみ大気圧を含めた測定を行った.このチャンバーは直径約2 m,長さ4.5 mで、内部に可動アームがあり,アーム終端より奥側にスピーカーを固定設置し一定の周波数を出力,アームの可動する3 mの範囲内で長手方向に0.25 mずつ動かして測定した.音速は,チャンバー内で発生する半波長分の定在波から算出した.また,減衰は同様の手法にて,異なる圧力下で振幅値を比較し算出した.
実験結果
今回の実験では約3 m離した2台のマイク側の時間差から音速測定を目指した手法での検出管共鳴によるは定在波にかき消され算出困難と判断したため,この定在波の腹と節の位置確認に補助的に取得したデータから音速を算出した.今回,データ取得の分布が粗かったため正密な値は算出できなかったが,チャンバー内を二酸化炭素で7 hPaに設定した時,音速の理論値269.7 m/sに対し実験値では280 m/sという結果が得られた.また,アルゴンでは理論値322.1 m/sに対し実験値350 m/s,空気では同326.4 m/sに対し350 m/sとなり,これらの結果より理論値に対し8%以内の誤差で求めることができた.また,アルゴンで70 hPaと7 hPaでの音波強度を比較した場合,10 倍の圧力差であれば平均で10.41倍の振幅の差が得られ,空気のとき同条件では8.9倍の振幅差が得られた.
考察
音速の計測を行い,理論値に近い値が得られたため,同様の手法で観測点を増やすことでより正確な値を導き出すことが可能であると考えられる.また,音波減衰に関しては 動粘度 = 絶対粘度 / 密度 の式より音速,気体,温度が同一とした場合,圧力が密度の関数となるため圧力が小さいと減衰は大きくなるという考えと一致する.
結論
マイク評価モデルを用いて火星地表面模擬環境下にて音速と音波減衰を計測した.音速は理論値に近似した値を得られたため,火星大気での音速は理論式とほぼ同一な値を得ることが可能であると考えられ,今回のマイクで測定可能であることも示された.今後は気球にマイクを搭載し,チャンバーのような境界面が無く火星大気条件に比較的近い成層圏大気中における実験を10月にスウェーデンESRANGEにて行う予定である.