[PPS01-P03] 電離圏ポテンシャルソルバーによる木星内部磁気圏電場の太陽風応答の研究
キーワード:Jupiter, Io plasma torus
木星内部磁気圏はプラズマ共回転が対流を支配する領域で、この領域のプラズマ対流には太陽風の影響が及びにくいとする考え方が一般的である。しかし最近、ひさき衛星搭載の極端紫外線分光器EXCEEDによって、イオプラズマトーラス発光分布が朝側・夕側で非対称に変動し、この変動が太陽風の動圧の急激な増加に伴っていることが確認された。このイオプラズマトーラスの発光分布の非対称な変動はイオ軌道上にかかる~4-9[mV/m]の朝夕電場により生じうると見積もられている[Murakami et al., 2016]。朝夕電場があることでイオプラズマトーラスが朝側に~0.1-0.3RJほどシフトし、トーラス内プラズマが夕側で断熱加熱を、朝側で冷却を受ける。その結果、イオプラズマトーラスの発光の朝夕非対称変動が生じるとされる。 ここで、朝夕電場の起源として以下の太陽風影響プロセスが示唆されている。まず太陽風が木星磁気圏に衝突して磁気圏を圧縮する。これにより磁気圏-電離圏結合電流系が変調され、高緯度電離圏へ流入する沿磁力線電流が増大する。その結果、沿磁力線電流によって形成された電離圏電場が増大し、低緯度領域へと拡大侵入する。これが磁力線を介して磁気圏赤道面に投影されることで、内部磁気圏深部に位置するイオ軌道近傍(~ 6 RJ)に朝夕電場が生成される、というものである。このプロセスの内、沿磁力線電流の分布および電流密度は、Galileo衛星観測に基づく赤道面上のリングカレントの発散値として見積もられている[Khurana, 2001]。
このシナリオをモデルによって定量評価するため、木星の2次元電離圏ポテンシャルソルバーを開発した。これにより、任意の沿磁力線電流分布に対する全球電離圏ポテンシャル分布の導出を試みた。沿磁力線電流量にはGalileo探査機などの観測結果[Khurana, 2001]を用い、その水平方向分布には地球のモデルで採用されているガウス関数を用いた。また、電離圏の電気伝導度分布は木星超高層領域における荷電粒子の衝突周波数とサイクロトロン周波数と密度の分布から計算した。衝突周波数はイオン-H2衝突と電子-H2衝突を考慮した[Tao, 2009]。イオ軌道上の朝夕電場の強度は電離圏電気伝導度の空間分布に大きく依存しうるため、電気伝導度の全球的な分布をより正確に与えることが必要である。Galileo探査機やVoyager探査機による電離圏観測は観測領域が限定されていたため、本研究ではTao et al. [2009]の木星熱圏-電離圏-磁気圏結合モデルを用いて熱圏・電離圏の全球的な密度・温度分布を与えた。このモデルは、オーロラ電子の降込みに伴う加熱等を考慮しており、沿磁力線電流の流出入領域である極域の電気伝導度分布をより正確に求めることが可能である。
以上の電流・電気伝導度分布を基に木星電離圏電場ポテンシャル分布および磁気圏朝夕電場強度の分布を導出する。上記のシナリオの妥当性を評価するために、イオプラズマトーラスを形成するプラズマが等ポテンシャル線に沿って流れると仮定し、朝夕電場と共回転電場が作るイオ軌道上の等ポテンシャル線の朝側へのシフト量とプラズマの朝夕の発光強度比を求め、ひさき衛星観測による推定値と比較する。今学会では、これらの結果について報告する。
このシナリオをモデルによって定量評価するため、木星の2次元電離圏ポテンシャルソルバーを開発した。これにより、任意の沿磁力線電流分布に対する全球電離圏ポテンシャル分布の導出を試みた。沿磁力線電流量にはGalileo探査機などの観測結果[Khurana, 2001]を用い、その水平方向分布には地球のモデルで採用されているガウス関数を用いた。また、電離圏の電気伝導度分布は木星超高層領域における荷電粒子の衝突周波数とサイクロトロン周波数と密度の分布から計算した。衝突周波数はイオン-H2衝突と電子-H2衝突を考慮した[Tao, 2009]。イオ軌道上の朝夕電場の強度は電離圏電気伝導度の空間分布に大きく依存しうるため、電気伝導度の全球的な分布をより正確に与えることが必要である。Galileo探査機やVoyager探査機による電離圏観測は観測領域が限定されていたため、本研究ではTao et al. [2009]の木星熱圏-電離圏-磁気圏結合モデルを用いて熱圏・電離圏の全球的な密度・温度分布を与えた。このモデルは、オーロラ電子の降込みに伴う加熱等を考慮しており、沿磁力線電流の流出入領域である極域の電気伝導度分布をより正確に求めることが可能である。
以上の電流・電気伝導度分布を基に木星電離圏電場ポテンシャル分布および磁気圏朝夕電場強度の分布を導出する。上記のシナリオの妥当性を評価するために、イオプラズマトーラスを形成するプラズマが等ポテンシャル線に沿って流れると仮定し、朝夕電場と共回転電場が作るイオ軌道上の等ポテンシャル線の朝側へのシフト量とプラズマの朝夕の発光強度比を求め、ひさき衛星観測による推定値と比較する。今学会では、これらの結果について報告する。