JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-02] [JJ] 災害を乗り越えるための「総合的防災教育」

2017年5月20日(土) 15:30 〜 17:00 コンベンションホールA (国際会議場 2F)

コンビーナ:中井 仁(小淵沢総合研究施設)、宮嶋 敏(埼玉県立熊谷高等学校)、根本 泰雄(桜美林大学自然科学系)、小森 次郎(帝京平成大学)、座長:中井 仁(小淵沢総合研究施設)、座長:宮嶋 敏(埼玉県立熊谷高等学校)

16:45 〜 17:00

[G02-06] 自治体の独自施策―被災者支援制度の将来像

★招待講演

*山崎 栄一1 (1.関西大学)

キーワード:被災者支援、自治体の独自施策、復興基金、義援金、熊本地震

2016年10月26日「鳥取地震 一部損壊世帯 公費で支援 全国初 県、最大30万円」(読売新聞 大阪朝刊1面)という記事を見た。筆者は、「被災者支援制度の将来像」をそこに見いだした。 一般に、災害法制というのはショッキングな災害を経験することにより、漸進的ではあるが成長を遂げていくという特徴をもっている。災害法制の一セクションを担う被災者支援法制も、阪神・淡路大震災をきっかけに1998年に制定された被災者生活再建支援法(以下、「支援法」と略す)を皮切りに、目まぐるしい成長を遂げつつある。その成長を促進している要因の一つが「自治体による独自施策」である。
自治体による独自施策は、「上級の行政主体(例えば国や都道府県)が講じている施策とは異なった施策を講じること」と定義づけることができる。
独自施策として脚光を浴びたのが、2000年10月に起きた鳥取県西部地震における独自施策であった。そこでは、当時の支援法では、私有財産制・自己責任の原則により住宅の再建や補修には支援がなされず、家財道具の調達にしか支援がなされなかった状況下であるにもかかわらず、住宅の再建・補修そのものに対する支援が行われた。このように独自施策は、既存の法制度の壁を突き破るする力をもっている。今回の独自施策といい、鳥取県は被災者支援制度のパイオニア的な地位を占めているといえよう。
自治体が独自で被災者支援策を講じる場面が多くなっている背景としては、①災害救助法・支援法を主とする国の被災者支援制度が貧弱であること、②そのような状況下において、大規模あるいはショッキングな災害の発生により、自治体も何らかの施策を求められていること、が挙げられよう。
熊本地震に目を向けていくと、熊本地震の被災地である大分県は九州内においても独自施策が進んでいる県である。大分県には独自の支援制度(大分県災害被災者住宅再建支援制度)があるので、半壊世帯でも支援金が出る〔基礎支給支援金50万円、加算支給支援金(住宅再建・購入・補修なら80万円、賃借なら50万円)最大130万円〕ことになっている。さらに、調べてみると実は別府市が半壊世帯に50万、一部損壊世帯に20万円を支援しているということも判明した。市町村が独自に施策を実施するというのも珍しいことではない。他方、熊本県ではそのような独自施策がないので熊本県の被災地においては半壊世帯ではこのような支援はなされていなかった。
大分県や別府市における独自施策によって、今後、半壊世帯や一部損壊世帯、あるいは土地被害に対する独自施策が講じられていくことが期待される。実際に、熊本県においては、義援金を用いて半壊世帯に対して41万円が支給されている。さらに、義援金を用いて修理費が100万円以上かかった一部損壊世帯を対象に10万円が支給されることになった。熊本県の復興基金からは、土地被害について、支援金が支給なされることになっている。
自治体の独自施策に関する知識を得ていくことで、国の被災者支援施策の欠けているところが何なのか、将来的に制度がどのような発展を遂げていくのかといった、「被災者支援制度の将来像」を垣間見ることができる。