JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG35] [JJ] 社会とともに地球環境問題の解決に取り組む超学際研究の未来

2017年5月22日(月) 15:30 〜 17:00 A07 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:近藤 康久(総合地球環境学研究所)、近藤 昭彦(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、木本 浩一(関西学院大学・共通教育センター)、手代木 功基(総合地球環境学研究所)、座長:近藤 康久(総合地球環境学研究所)

16:00 〜 16:15

[HCG35-03] 東シベリアで永久凍土荒廃が引き起こす景観変化:地域社会との認識と行動に向けて

★招待講演

*飯島 慈裕1齋藤 仁2藤岡 悠一郎3後藤 正憲4中田 篤5高倉 浩樹6 (1.三重大学生物資源学研究科、2.関東学院大学経済学部、3.東北大学学際科学フロンティア研究所、4.北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター、5.北海道立北方民族博物館、6.東北大学東北アジア研究センター)

キーワード:永久凍土、サーモカルスト、アラス、東シベリア

ロシア東シベリアの中央ヤクーチャ(レナ川中流域)では、1990年代以降、気候変動に起因する永久凍土融解がもたらす様々な景観変化が報告されている。永久凍土荒廃は、地下氷の融解・消失に伴う地形の不均質な沈降(サーモカルスト)として地表上に現れ、草原や開墾跡地を中心にそれらの規模は拡大しつつある。2000年代に入ると温暖化傾向に連続した異常降水年が重なったことで、沈降地域ではさらに永久凍土の融解、水域拡大や、草地の収量減少などの影響が現れている。凍土融解にともなう景観変化は氷期-間氷期の時間スケールで見ると、不可逆的なものと考えられ、北方林生態系の自然環境のみならず、草原地域の牧畜利用を主な生業とする現地の人々の生活環境にも大きな影響を与えつつある。
本研究は、日本が推進する北極域研究推進プロジェクト(ArCS: Arctic Challenge for Sustainability)の一課題である、「北極の人間と社会:持続的発展の可能性」の一環として実施している。研究の目的は、超学際研究の実効的な枠組みを構成し、永久凍土荒廃に伴う環境変化が、現地の生態系、水環境、気候の変化によってどのように進行し、それが社会に対してどのような影響をもたらしているかを明らかにした上で、将来に向けてどのように対処していくべきか協働のあり方を示すことである。2016年度から、中央ヤクーチャの伝統的な生業・文化の中心地のひとつであるチュラプチャ地域を対象として、現地調査に基づく環境変化の諸科学知見について環境教材の制作と、現地の研究者、住民を交えた地域社会との協働をねらいにして、活動を本格化した。
本発表では、2016年9月にチュラプチャで開始した、日本とロシアの自然・社会科学者合同の巡検と調査結果に基づき、シベリアの地域研究における問題意識と研究プロセスの創出と、地球環境変動研究と対処の現地関係者との協働に向けたアプローチについて提起したい。