JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS16] [JJ] 津波とその予測

2017年5月24日(水) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (国際展示場 7ホール)

コンビーナ:行谷 佑一(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)、山本 直孝(防災科学技術研究所)

[HDS16-P01] DASテクノロジーを使ったリアルタイム津波観測の可能性

*木村 恒久1 (1.シュルンベルジェ)

キーワード:DAS、hDVS、光ファイバー、津波、リアルタイム観測、流れ

DASテクノロジーは、パイプラインのモニタリングや侵入者を感知するために、2011年頃から石油・ガス産業で使われている。最新の光ファイバーセンシング技術によって、近年、DASシステムを使って、VSPを含むサイズミックデータを記録することができるようになった。また、井戸内の流体の流れを、流体が流れる時に発生する振動を観測することによって、定性的に把握し、井戸内の生産状況をモニタリングする試みも行われている。我々はこのシステムのことを、‘hDVS’と呼んでいる。

hDVSは、通常用いられるジオフォン、ハイドロフォン、圧力ゲージ等の電気・磁気的なセンサーでなく、光ファイバーを振動計測のセンサーとして使う。実際には、光ファイバーの振動に対するダイナミックストレインを計測しており、シングルモードファイバー、マルチモードファイバーの両者に使うことができ、つなげたファイバーの全長、もしくはパラメータで決めた長さだけをセンサーとして使うことができる。

通常の電気・磁気的な津波センサーは、特に2011年の東日本大震災後、東北沖の太平洋、または日本沿岸各地に地震計とともに設置されてきた。しかし、通常のセンサーは、点としてのデータしか収集することができなく、しかも設置にかかるコストや、センサーの設置環境の制限により、設置される数と場所に限りがある。そのため、センサー間の距離が長いのが現状で、そのセンサー間を通り過ぎる津波をモニタリングすることはできない。

2011年の東日本大震災の際、限られた津波センサーと、地震計での観測により、到達時の津波の高さと、到達予想時間が割り出された。NHK等の番組およびメディアの報道によれば、その情報の不確かさが、避難する人々の行動を遅らせたり、不適切な場所への避難を促した原因の一つだという見解がある。非常に限られた数のセンサーから得られるデータを使って、想定外の巨大な津波を観測し、その行動を予測することは不可能である。

hDVSシステムの場合、既存の、主にデータ通信用の目的で設置してある海底光ファイバーケーブルを、線状の海水の流れを計測するセンサーとして扱うことができ、センサーの設置コストと設置にかかる時間を低く抑える事ができる。特に、国際海底光ファイバーケーブルは、地震が起き易いプレート同士が重なる領域から一直線に地上局へと引き込まれているので、その間の海水の流れを連続して観測することができる。そのような海底光ケーブルを用いた流れのデータが、数十kmの長い距離において連続して観測されれば、巨大な津波が再び押し寄せた際、その津波の状況を把握する確かなデータとなる可能性がある。津波の高さが増すに従って、津波が起因の振動が大きくなると予想されるので、hDVSのデータを用いて、津波の高さを予測することも可能だと思われる。2011年の東日本大震災の際、幾つかの海底光ファイバーケーブルが切れたと報告されているが、そのことで光通信は途絶えるが、hDVSを用いた地震・津波観測は、切れた箇所までのファイバーを用いて、観測を継続することができる。

hDVSテクノロジーを使えば、海岸から数十km沖合から、津波が発達して押し寄せる様子を連続して観測し、その情報が、より確かな津波警報をもたらし、近未来に起こると予想されている巨大津波災害から、より多くの人命を救えることを確信している。