09:20 〜 09:35
[HGM04-02] 実験地形の発達における砂山の透水性の影響について
キーワード:侵食実験地形の発達、隆起、透水性、せん断強度、表面流出、斜面崩壊
降雨侵食と隆起による実験侵食地形の発達を規定する基本的な要素が隆起速度と降雨強度であることは明らかであるが、砂山の性質(この一連の実験においては主に透水性)が重要であることも確かである。今回は、実験地形の発達とそれに砂山の性質(透水性)が与える影響について考察する。特に、以下に示した、隆起速度が同じ0.36mm/hである、runs26, 27, 32, 38の4回の実験結果について報告する。
run-----------permeability------------precipitation ----------- width of deposition area
26--------- 2.57 x 10-4cm/s ---------40-50 mm/h -------------100 mm
27----------3.23 x 10-4cm/s ---------80-90 mm/h -------------100 mm
32----------1.84 x 10-4cm/s--------- 80-90 mm/h -------------200 mm
38 ---------1.53 x 10-3cm/s ---------80-90 mm/h -------------200 mm
霧状の人工降雨の下で平坦な面から四角い砂山(60x60cm)が隆起して行くと、隆起域の縁辺から流水による侵食が始まり、そこから谷系が発達する。隆起によって高度が増すとともに谷の侵食が進み、隆起速度が非常に小さな場合を除いて、斜面が発達し斜面崩壊が起こるようになる。このころになると流路は安定して崩壊によって生産された物質が通過する道筋となり、流水による排出は速やかに起こる。大規模な斜面崩壊は周期的に集中して起こる傾向を見せ、崩壊集中期の高度低下とそれまでの隆起に伴う上昇が繰り返されるようになって、実験山地地形の平均高度はある高度の周辺を上下するような変化を見せる。その高度は、極端に隆起速度が大きな場合を除いて、隆起速度によって決まるようである。
砂山の透水性や強度は、使用する材料(細砂とカオリナイトの重量比10:1の混合物)が同じであれば、締固めの程度によって異なると考えられる。締固めの程度を密度で表現すると、締固めが強く密度が高くなると透水係数が小さくなる傾向は明らかであるが、密度とせん断強度(水で飽和した状態での)との関係はあまりはっきりしない。少なくとも今回報告する実験の範囲においては、締固めの程度によって透水性は変化するが強度はそれほど変わらないと考えてよいだろう。今回報告するrunの中で、堆積域幅がそれぞれ同じであるrun26とrun27では降雨量が、run32とrun38では透水性が異なる。しかし、それぞれの組み合わせの中での実験地形発達の違いには共通点がみられる。run27 とrun32では比較的平坦で比高が小さく、尖った小丘が点在するような地形が発達するのに対してrun26とrun38では比高が大きな一塊の山体が形成される傾向があった。run26ではrun27と比べて降雨量が少なく、run38はrun32と比べて透水性が大きいという違いがある。浸み込む速度(透水性)によって表面流出量が異なるとすると、透水係数の大きなrun38では表面流出量が小さくなるはずで、降雨量の少ないrun26と同様の特徴となると考えられる。降雨量(mm/h)の値を透水係数(cm/s)に合わせ、透水係数の値を砂山に浸み込む速度として降雨量から差し引いたものを表面流出量と考えれば、表面流出量は、run26とrun38でそれぞれ8.4-11.4x10-4(cm/s)と6.4-9.7x10-4(cm/s)、run27とrun32で2.0-2.3x10-3(cm/s)と1.9-2.3x10-3(cm/s)となる。run26とrun38、 run27とrun32でそれぞれ表面流出量がほぼ同じであり、前者のペアが後者より一桁大きい。表面流出が大きいと流水による侵食の働きが強くなり、谷の伸延や拡幅が速く進行すると考えられる。run27 とrun32の地形はその結果であろう。run26とrun38では表面流出が比較的少ないために谷の発達が悪く、大きな山体と斜面崩壊が目立つようになったのではないだろうか。砂山のせん断強度については、今回はその違いも実験地形発達に与える影響もはっきりさせることができなかった。しかし、他のrunを含めた一連の実験経過の観察から、斜面崩壊の様式を決定する重要な要因であることが推測されている。今後の課題として検討したい。
run-----------permeability------------precipitation ----------- width of deposition area
26--------- 2.57 x 10-4cm/s ---------40-50 mm/h -------------100 mm
27----------3.23 x 10-4cm/s ---------80-90 mm/h -------------100 mm
32----------1.84 x 10-4cm/s--------- 80-90 mm/h -------------200 mm
38 ---------1.53 x 10-3cm/s ---------80-90 mm/h -------------200 mm
霧状の人工降雨の下で平坦な面から四角い砂山(60x60cm)が隆起して行くと、隆起域の縁辺から流水による侵食が始まり、そこから谷系が発達する。隆起によって高度が増すとともに谷の侵食が進み、隆起速度が非常に小さな場合を除いて、斜面が発達し斜面崩壊が起こるようになる。このころになると流路は安定して崩壊によって生産された物質が通過する道筋となり、流水による排出は速やかに起こる。大規模な斜面崩壊は周期的に集中して起こる傾向を見せ、崩壊集中期の高度低下とそれまでの隆起に伴う上昇が繰り返されるようになって、実験山地地形の平均高度はある高度の周辺を上下するような変化を見せる。その高度は、極端に隆起速度が大きな場合を除いて、隆起速度によって決まるようである。
砂山の透水性や強度は、使用する材料(細砂とカオリナイトの重量比10:1の混合物)が同じであれば、締固めの程度によって異なると考えられる。締固めの程度を密度で表現すると、締固めが強く密度が高くなると透水係数が小さくなる傾向は明らかであるが、密度とせん断強度(水で飽和した状態での)との関係はあまりはっきりしない。少なくとも今回報告する実験の範囲においては、締固めの程度によって透水性は変化するが強度はそれほど変わらないと考えてよいだろう。今回報告するrunの中で、堆積域幅がそれぞれ同じであるrun26とrun27では降雨量が、run32とrun38では透水性が異なる。しかし、それぞれの組み合わせの中での実験地形発達の違いには共通点がみられる。run27 とrun32では比較的平坦で比高が小さく、尖った小丘が点在するような地形が発達するのに対してrun26とrun38では比高が大きな一塊の山体が形成される傾向があった。run26ではrun27と比べて降雨量が少なく、run38はrun32と比べて透水性が大きいという違いがある。浸み込む速度(透水性)によって表面流出量が異なるとすると、透水係数の大きなrun38では表面流出量が小さくなるはずで、降雨量の少ないrun26と同様の特徴となると考えられる。降雨量(mm/h)の値を透水係数(cm/s)に合わせ、透水係数の値を砂山に浸み込む速度として降雨量から差し引いたものを表面流出量と考えれば、表面流出量は、run26とrun38でそれぞれ8.4-11.4x10-4(cm/s)と6.4-9.7x10-4(cm/s)、run27とrun32で2.0-2.3x10-3(cm/s)と1.9-2.3x10-3(cm/s)となる。run26とrun38、 run27とrun32でそれぞれ表面流出量がほぼ同じであり、前者のペアが後者より一桁大きい。表面流出が大きいと流水による侵食の働きが強くなり、谷の伸延や拡幅が速く進行すると考えられる。run27 とrun32の地形はその結果であろう。run26とrun38では表面流出が比較的少ないために谷の発達が悪く、大きな山体と斜面崩壊が目立つようになったのではないだろうか。砂山のせん断強度については、今回はその違いも実験地形発達に与える影響もはっきりさせることができなかった。しかし、他のrunを含めた一連の実験経過の観察から、斜面崩壊の様式を決定する重要な要因であることが推測されている。今後の課題として検討したい。