15:30 〜 15:45
[HSC08-07] 自然ガンマ線検層とコア試料の堆積学的・地球化学的検討を併用したシェール量評価の精緻化の試み:長岡サイトの例
キーワード:長岡サイト、堆積学、地球化学、自然ガンマ線検層、スペクトラルガンマ線検層、シェール量
CO2地中貯留に適した貯留層の選定には,地層のシェールの空間分布を把握することは重要である.地層におけるシェールの空間分布の把握では,各坑井から算定されるシェール量を確定論的に活用する場合が多いため,各坑井での精緻なシェール量評価が必要である.自然ガンマ線(GR)検層は,簡便なシェール量評価のツールのひとつとして広く活用されてきた.GR検層は,地層に含まれる40K,232Th,238Uの放射性核種から放射されるGRを計測する.一般に,砂岩より泥岩や頁岩でGR値が高いことから,地層中のシェール量評価ができる.しかし,地層の鉱物組成が深度ごとに著しく異なれば,GR値から適切なシェール量を算定することは困難となる.このことは,GR値からシェール量を算定する際は,GR値に影響する鉱物を的確に把握すべきことを意味するが,こうした検討事例の蓄積は必ずしも充分でない.本発表では,長岡サイトにおける貯留層の堆積学的・地球化学的検討とGR検層との比較を実施し,GR検層によるシェール量評価の精度向上に関する検討を試みる.
長岡サイトでは,新潟平野の地下約1,000m付近に分布する塩水性帯水層を対象とし,約1万トンのCO2を圧入する実証試験が実施された.塩水性帯水層は,浅海堆積物から構成され,前期更新世の灰爪層に対比される.本サイトでは,1本の圧入井(IW-1)と3本の観測井(OB-2,-3,-4)が掘削された.IW-1では貯留層のコア試料が採取された.また,すべての坑井では自然ガンマ線検層が実施され,観測井では238U,232Th,40Kの量比を判定できるスペクトラルガンマ線(SPL)検層が実施された.
貯留層の堆積学的・地球化学的解析では,コア試料の記載による堆積環境の把握、XRF分析による主要・微量元素の測定、XRD分析による鉱物の同定を行った.コア試料の記載では,貯留層は基底部に侵食面をもち,その上位で上方細粒化・粗粒化パターンを示す堆積シーケンスが確認された.堆積シーケンスは,主にプロデルタ~デルタフロント部から構成されると解釈された.GR検層と堆積環境を比較すると,デルタフロント部よりもプロデルタ部では高いGR値を示した.また,GR検層とコア試料の粒度分析による含泥率(<1/16mm)は,類似したパターンが認められた.このことは,GR強度の支配要因は泥サイズの粒子に帰属されることを意味する.
GR検層とSPL検層の比較では,GRを支配する放射性核種の検討を行った。その結果,K量はプロデルタ部とデルタフロント部で大きな変化はなく,GR値とも相関は認められなかった.このことから,Kを含む鉱物はGR強度の主要な支配要因ではないと解釈される.一方,Th量とU量は,基本的にはプロデルタ部とデルタフロント部とで濃度が異なり,GR値と正の相関を示した.このことは,ThやUを含む鉱物はGR値の支配要因のひとつと解釈される.GR検層とコア試料のXRF分析による主要・微量元素分析の比較では,MgO,TiO2,Fe2O3,Th,Zrを含む鉱物がGR値の支配要因のひとつと解釈される.泥サイズを抽出した試料におけるXRD分析の結果,これら元素を含む鉱物はジルコン,スメクタイトおよびクロライトに帰属されると解釈される.
すべての坑井における貯留層のGR検層による堆積学的解析では,二つの上方細粒化・粗粒化堆積シーケンスが認定された.この二つの堆積シーケンスについて,GR強度とSPL検層による放射性核種の濃度の散布図を作成した結果,両者の傾きは各堆積シーケンスでほぼ等しいことが判明した.このことから,各堆積シーケンスでは,後背地の供給源の変化に伴う鉱物組成変化の影響は小さいと解釈できる.しかし,各堆積シーケンスでGR強度の最大値は異なっている.このことは,GR検層に基づくシェール量評価を行う際は,GR強度のエンドメンバーの設定を各堆積シーケンスで設定すべきことを意味する.GR検層を用いたシェール量評価の精緻化には,貯留層の詳しい堆積学的検討は欠かせないであろう.
長岡サイトでは,新潟平野の地下約1,000m付近に分布する塩水性帯水層を対象とし,約1万トンのCO2を圧入する実証試験が実施された.塩水性帯水層は,浅海堆積物から構成され,前期更新世の灰爪層に対比される.本サイトでは,1本の圧入井(IW-1)と3本の観測井(OB-2,-3,-4)が掘削された.IW-1では貯留層のコア試料が採取された.また,すべての坑井では自然ガンマ線検層が実施され,観測井では238U,232Th,40Kの量比を判定できるスペクトラルガンマ線(SPL)検層が実施された.
貯留層の堆積学的・地球化学的解析では,コア試料の記載による堆積環境の把握、XRF分析による主要・微量元素の測定、XRD分析による鉱物の同定を行った.コア試料の記載では,貯留層は基底部に侵食面をもち,その上位で上方細粒化・粗粒化パターンを示す堆積シーケンスが確認された.堆積シーケンスは,主にプロデルタ~デルタフロント部から構成されると解釈された.GR検層と堆積環境を比較すると,デルタフロント部よりもプロデルタ部では高いGR値を示した.また,GR検層とコア試料の粒度分析による含泥率(<1/16mm)は,類似したパターンが認められた.このことは,GR強度の支配要因は泥サイズの粒子に帰属されることを意味する.
GR検層とSPL検層の比較では,GRを支配する放射性核種の検討を行った。その結果,K量はプロデルタ部とデルタフロント部で大きな変化はなく,GR値とも相関は認められなかった.このことから,Kを含む鉱物はGR強度の主要な支配要因ではないと解釈される.一方,Th量とU量は,基本的にはプロデルタ部とデルタフロント部とで濃度が異なり,GR値と正の相関を示した.このことは,ThやUを含む鉱物はGR値の支配要因のひとつと解釈される.GR検層とコア試料のXRF分析による主要・微量元素分析の比較では,MgO,TiO2,Fe2O3,Th,Zrを含む鉱物がGR値の支配要因のひとつと解釈される.泥サイズを抽出した試料におけるXRD分析の結果,これら元素を含む鉱物はジルコン,スメクタイトおよびクロライトに帰属されると解釈される.
すべての坑井における貯留層のGR検層による堆積学的解析では,二つの上方細粒化・粗粒化堆積シーケンスが認定された.この二つの堆積シーケンスについて,GR強度とSPL検層による放射性核種の濃度の散布図を作成した結果,両者の傾きは各堆積シーケンスでほぼ等しいことが判明した.このことから,各堆積シーケンスでは,後背地の供給源の変化に伴う鉱物組成変化の影響は小さいと解釈できる.しかし,各堆積シーケンスでGR強度の最大値は異なっている.このことは,GR検層に基づくシェール量評価を行う際は,GR強度のエンドメンバーの設定を各堆積シーケンスで設定すべきことを意味する.GR検層を用いたシェール量評価の精緻化には,貯留層の詳しい堆積学的検討は欠かせないであろう.