15:30 〜 15:45
[HTT19-06] UAVとSfM-MVSを利用した礫床河川計測の運用に関する検証と可能性
キーワード:Topographic measurement, High-definition Topographic Data, Grabel bed river, Digital Surface Model(DSM)
近年,UAV(Unmanned Aerial Vehicle)とSfM-MVS(Structure from Motion – Multi-view Stereo)を利用することで簡単に数cm~数十cm程度の高空間解像度の地形情報を取得することが可能になっている.日本の地形学においては特に災害が発生した際に現れる地すべりや地表地震断層の測量など,即時性の高いデータを整備することが行われてきた.UAVとSfM-MVSは,高空間解像度の地形情報を取得することを低コストで行うことができるという利点がある上に,調査設計者がデータを取得したいタイミングで自由に測量することができるという利点もある.これにより,従来の空中写真よりも高時間解像度の地形情報を取得することが可能になった.
高時空間解像度の地形情報を取得できるメリットを生かして,発表者は礫床河川の地形変化のモニタリングを行うことを最終的な目的としている.まず,UAVとSfM-MVSで生成できる数値地形モデル(DSM:Digital Surface Model)の解像度は数cm~数十cmオーダーであり,河床礫を1つ1つ捉えることができる.また,日本の礫床河川は勾配が急でありかつ流量が多いため,流速が速い.これにより,頻繁に土砂移動現象が起こると考えられる.これを定期的に観測することによって自然現象下の土砂移動を捉えることが可能となる.しかし,既存研究では対象地を高空間解像度で一度撮影したデータをもとに解析した研究が多くを占めているため,継続的に変化量を定量的に算出する研究が少ない.また,礫床河川を測量できるレベルの空間解像度を誇るデータの差分抽出を行っている研究も少ない.本研究では,実証実験と現地での測量実験を通して,礫床河川の測量を行う際の運用に関して検証を行い,解析プロセスを提案し,地形変化量を算出するための課題を挙げる.
まず,河床礫を想定したサイズのレンガをUAVとSfM-MVSを利用して測量し,実際のレンガのサイズとどの程度精度が異なるのか検証した.
DSMの精度は,飛行高度を上げるにつれて低下する.これは,空間解像度の低下の影響である.また,画像の解析枚数を増やすにつれて精度が上がる傾向があるが,画像が増加することで新たな特徴点が抽出されるため,生成するモデルが異なってしまう場合がある.カメラの性能やGCPによりDSMの垂直・水平精度は大きく変化する.
さらに,DSMの精度に最も影響を与えるのが解析の際に付与するGCP(Ground Control Point:地上基準点)である.GCPは測量する対象物のxy平面の端から端,z方向の最高点および最低点に付与し,対象物を内挿するように配置するのがよい.さらに,適切な高度情報復元精度を保つために,最も割合の大きい高度付近にGCPの個数を増やすことが必要である.
以上のことから,UAVとSfM-MVSでDSMを生成する際には,測量者の計画・解析方法が空間解像度や精度に大きく関わることが明らかとなった.特に,地形学への応用を試みる際には,対象となる地形を計測するための適切な空間解像度を測量者が自ら予め設定することが必要である.さらに,実験セットを利用して差分の抽出を試みた.その結果,精度の高いDSMどうしを差分抽出することで垂直精度0.2cm程度の差分抽出が可能となった.
この結果を利用して実際に礫床河川の測量を試みた.対象地域は白山に源流を持つ一級河川である手取川である.100m×100m程度の河床を,2週間に1回程度の頻度でUAVを利用して撮影した.その際改正航空法に従って対地高度30mで飛行させた.撮影した画像をSfM-MVSで解析し,DSMを生成した.GCPは,一時期の測量データ(ここでは2016年12月8日撮影分)を利用して基準点を定め,他の時期のデータのものに付与して使いまわした.DSMの解像度は2.5cmであった.
その結果,図1のように実際の礫を捉えることができた.捉えることができた礫径は約50cm程度であった.また,等高線を描くことで礫の形状を表現することができた.これを,他時期のDSMとの差分抽出を行い,礫の運搬・堆積状況を計測しようとした.その結果,水平誤差が約45cm程度発生してしまい,礫サイズでの差分抽出ができなかった.GCPの水平精度は5cm程度であるのに対し,DSMの誤差にも目立った系統性がみられなかった.よって,相対座標を用いたGCPを用いるのではなく,絶対座標を用いた水平精度数mm程度の精密な(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)やRTK(Real Time Kinematic)などの高精度測量を行う必要性がある.
本研究を続ける上でこの問題を解決することではじめて礫州の発達過程を従来の地形学的な研究成果とつなげることができる.そして,DEMで微地形の変化を捉えることで数十万年スケールの地形発達過程をシミュレートし,地形発達シミュレーションの実現が可能となる.手取川ではダム建設以降礫の流出が盛んに行われており,数十年でも河床の変化が激しい.今後は,手取川の地形発達シミュレーションを構築し,数十万年スケール程度の地形発達を推測し,河道変化と環境変化について考察を深めていきたいと考えている.
高時空間解像度の地形情報を取得できるメリットを生かして,発表者は礫床河川の地形変化のモニタリングを行うことを最終的な目的としている.まず,UAVとSfM-MVSで生成できる数値地形モデル(DSM:Digital Surface Model)の解像度は数cm~数十cmオーダーであり,河床礫を1つ1つ捉えることができる.また,日本の礫床河川は勾配が急でありかつ流量が多いため,流速が速い.これにより,頻繁に土砂移動現象が起こると考えられる.これを定期的に観測することによって自然現象下の土砂移動を捉えることが可能となる.しかし,既存研究では対象地を高空間解像度で一度撮影したデータをもとに解析した研究が多くを占めているため,継続的に変化量を定量的に算出する研究が少ない.また,礫床河川を測量できるレベルの空間解像度を誇るデータの差分抽出を行っている研究も少ない.本研究では,実証実験と現地での測量実験を通して,礫床河川の測量を行う際の運用に関して検証を行い,解析プロセスを提案し,地形変化量を算出するための課題を挙げる.
まず,河床礫を想定したサイズのレンガをUAVとSfM-MVSを利用して測量し,実際のレンガのサイズとどの程度精度が異なるのか検証した.
DSMの精度は,飛行高度を上げるにつれて低下する.これは,空間解像度の低下の影響である.また,画像の解析枚数を増やすにつれて精度が上がる傾向があるが,画像が増加することで新たな特徴点が抽出されるため,生成するモデルが異なってしまう場合がある.カメラの性能やGCPによりDSMの垂直・水平精度は大きく変化する.
さらに,DSMの精度に最も影響を与えるのが解析の際に付与するGCP(Ground Control Point:地上基準点)である.GCPは測量する対象物のxy平面の端から端,z方向の最高点および最低点に付与し,対象物を内挿するように配置するのがよい.さらに,適切な高度情報復元精度を保つために,最も割合の大きい高度付近にGCPの個数を増やすことが必要である.
以上のことから,UAVとSfM-MVSでDSMを生成する際には,測量者の計画・解析方法が空間解像度や精度に大きく関わることが明らかとなった.特に,地形学への応用を試みる際には,対象となる地形を計測するための適切な空間解像度を測量者が自ら予め設定することが必要である.さらに,実験セットを利用して差分の抽出を試みた.その結果,精度の高いDSMどうしを差分抽出することで垂直精度0.2cm程度の差分抽出が可能となった.
この結果を利用して実際に礫床河川の測量を試みた.対象地域は白山に源流を持つ一級河川である手取川である.100m×100m程度の河床を,2週間に1回程度の頻度でUAVを利用して撮影した.その際改正航空法に従って対地高度30mで飛行させた.撮影した画像をSfM-MVSで解析し,DSMを生成した.GCPは,一時期の測量データ(ここでは2016年12月8日撮影分)を利用して基準点を定め,他の時期のデータのものに付与して使いまわした.DSMの解像度は2.5cmであった.
その結果,図1のように実際の礫を捉えることができた.捉えることができた礫径は約50cm程度であった.また,等高線を描くことで礫の形状を表現することができた.これを,他時期のDSMとの差分抽出を行い,礫の運搬・堆積状況を計測しようとした.その結果,水平誤差が約45cm程度発生してしまい,礫サイズでの差分抽出ができなかった.GCPの水平精度は5cm程度であるのに対し,DSMの誤差にも目立った系統性がみられなかった.よって,相対座標を用いたGCPを用いるのではなく,絶対座標を用いた水平精度数mm程度の精密な(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)やRTK(Real Time Kinematic)などの高精度測量を行う必要性がある.
本研究を続ける上でこの問題を解決することではじめて礫州の発達過程を従来の地形学的な研究成果とつなげることができる.そして,DEMで微地形の変化を捉えることで数十万年スケールの地形発達過程をシミュレートし,地形発達シミュレーションの実現が可能となる.手取川ではダム建設以降礫の流出が盛んに行われており,数十年でも河床の変化が激しい.今後は,手取川の地形発達シミュレーションを構築し,数十万年スケール程度の地形発達を推測し,河道変化と環境変化について考察を深めていきたいと考えている.