[H-TT23] [JJ] 環境トレーサビリティー手法の開発と適用

[HTT23-08] 環境トレーサーを用いた日本海側成層火山地域における大気沈着窒素の動態評価

*平井 タケル¹、浅井 和由²、藤田 素子³、渡邊 裕美子⁴、山田 誠⁵、杉本 亮¹ (1.福井県立大学、2.株式会社地球科学研究所、3.京都大学東南アジア研究所、4.京都大学理学研究科、5.総合地球環境学研究所)

キーワード：窒素沈着、富栄養化、三酸素同位体、日本海

深刻化する東アジア地域の大気汚染が我が国の生態系を著しくかく乱している．特に日本海側では大量に沈着する窒素化合物が森林の窒素飽和を引き起こし，一部の河川水の硝酸イオン濃度が上昇していることが報告されている．しかし，大気沈着窒素が森林から流出する硝酸イオンにどの程度寄与しているのか，その長期的な傾向を捉えることができるデータはほとんどない．本研究では湧水・地下水が過去の環境情報を保有していることに着目し，湧水・地下水が豊富な日本海側の成層火山を対象として，硝酸酸素安定同位体比の三酸素同位体比異常と不活性化ガス六フッ化硫黄(SF₆)を環境トレーサーとして，過去から現在にわたる長期的な森林生態系における大気沈着窒素の動態を評価することを研究目的とした．大山・鳥海山流域の涵養標高が高い地点では硝酸イオンの大気寄与率が増加傾向であることがわかった．涵養標高が低い地点では大気寄与率に経年的な変化は見られなかったが，活発な硝化反応が大気寄与率を大きく変化させていることが示唆されたため，窒素動態の評価が困難であった．一方，白山流域では涵養標高によって窒素動態の傾向が分別されず，大気寄与率は経年的にわずかな増加傾向を示し，流域全体の平均的な窒素動態を示すことが示唆された．