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[HTT25-04] 災害対応における状況把握のための地理空間情報の表現―2016年熊本地震を事例に―
キーワード:WebGIS、状況把握、地理空間情報、2016年熊本地震
2016年4月14日21時26分に発生した地震(Mj6.5)と,4月16日1時35分に発生した地震(Mj7.3)およびそれ以降に続く余震(2016年熊本地震)に対して,防災科学技術研究所(防災科研)では災害対応の一環として,地理空間情報の作成・集約・共有による情報支援を実施した.
防災科研では地震に関する情報はもとより,地震に誘発されて発生した液状化や土砂災害,火山に関する情報,さらに二次災害を想定して降雨などの観測データも提供した.また,熊本県庁から提供された道路規制情報や避難所情報,通水復旧などのインフラ情報をWeb-GISに統合し,俯瞰的な被害状況を把握できる仕組みを構築し,災害対応機関に向けて提供した(図1).各種情報が集約された地図は,防災科研が発災から約2時間後に開設した熊本地震クライシスレスポンスサイト(http://ecom-plat.jp/nied-cr/hp/20160414kumamoto)において公開したほか,避難所情報などの公開が難しい一部の情報は,熊本地震災害対応にあたる特定機関向け地図を構築して提供した.なお,現地で情報集約・地図作成を実施するため、防災科研が研究開発を行いオープンソフトウェアとして提供しているWeb-GIS「eコミマップ」を活用した.
行政機関で収集される情報を統合し地図上に表示することで,災害対応における意思決定や状況判断を支援する効果が期待できる.また,複数の情報を重ね合わせることによって,新しい視点を見出すことも可能となる.そこで本報告では,熊本地震において実施した地図情報の作成・集約・共有における災害対応支援のなかで,熊本県庁をはじめとする各種機関から集約した情報が,どのような地図で表現され,災害対応における情報として役立ったのかについて報告する.
地図を活用した空間的な状況認識・把握は災害対応の基本であり,災害対策基本法でも地理空間情報の活用(第51条2項関係)が努力義務として規定されている.4月14日に発生した震度7の地震を受けて,防災科研では地震による被害状況把握ならびに情報集約のためのWeb-GISを構築した.地震発生翌日の4月15日には,熊本県庁に防災科研研究員が派遣され,熊本県や中央省庁などと連携し,各機関から提供される災害情報を,構築したWeb-GIS上に統合した.直接Web-GIS上に取り込める形で提供された情報には,国土地理院の「被災後空中写真」やITSジャパンの「通れた道マップ」,地震推進本部の「活断層図」などが挙げられる.また,熊本県庁から提供された道路被害情報や避難所情報なども必要とされる処理を経て,Web-GIS上に統合した.各機関から集約したデータは約45種類,データ数として631を数える(8月31日時点).
これら多くの情報をわかりやすく伝えるためには,それぞれの情報に応じた適切な表現方法がある.例えば,道路情報はその被害程度に応じて「全面通行止」「夜間全面通行止」「大型・歩・二通行止」「片側通行止」「解除」の5種類のカテゴリを用意し,通行止はバツ印,解除は丸印で表現した.また,それぞれ赤,紺,橙,黄,緑の色で状況が把握できるようにした.避難所情報は各避難所に避難している人数をもとにして,円形の大きさで差を表すことで,どこの避難所に人が集中しているかがわかるように表現した(図2).現在,災害対応で共有される情報がどのように表現されるべきか,明確な基準は設けられていない.災害時という混乱した状況の中で表現方法を検討していくのではなく,あらかじめ共有情報の表現方法の標準化を検討しておくことが必要である.
Web-GIS上で集約されたデータは,利用者がニーズに応じて必要な情報を適宜選択して表示できる.例えば,通水復旧状況のレイヤと避難所情報のレイヤを組み合わせることで,給水支援が必要な避難所を把握できる.また,避難所と推定全壊棟数分布,道路規制情報の3レイヤを重ね合わせることで,生活支援が必要な地域と,支援に向かうためにたどり着くための最適ルートを事前に検討することが可能となる(図3).
どの情報を重ね合わせることで,新しい情報としての価値がそこに創られるかどうかは実際の災害対応の現場におけるニーズとの調整が必要である.報告時には,熊本県庁でどのような情報が必要とされ,それに回答した地理空間情報の表現方法について具体的な事例を紹介する.
謝辞:本報告の一部には、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:科学技術振興機構)の予算を活用した。
防災科研では地震に関する情報はもとより,地震に誘発されて発生した液状化や土砂災害,火山に関する情報,さらに二次災害を想定して降雨などの観測データも提供した.また,熊本県庁から提供された道路規制情報や避難所情報,通水復旧などのインフラ情報をWeb-GISに統合し,俯瞰的な被害状況を把握できる仕組みを構築し,災害対応機関に向けて提供した(図1).各種情報が集約された地図は,防災科研が発災から約2時間後に開設した熊本地震クライシスレスポンスサイト(http://ecom-plat.jp/nied-cr/hp/20160414kumamoto)において公開したほか,避難所情報などの公開が難しい一部の情報は,熊本地震災害対応にあたる特定機関向け地図を構築して提供した.なお,現地で情報集約・地図作成を実施するため、防災科研が研究開発を行いオープンソフトウェアとして提供しているWeb-GIS「eコミマップ」を活用した.
行政機関で収集される情報を統合し地図上に表示することで,災害対応における意思決定や状況判断を支援する効果が期待できる.また,複数の情報を重ね合わせることによって,新しい視点を見出すことも可能となる.そこで本報告では,熊本地震において実施した地図情報の作成・集約・共有における災害対応支援のなかで,熊本県庁をはじめとする各種機関から集約した情報が,どのような地図で表現され,災害対応における情報として役立ったのかについて報告する.
地図を活用した空間的な状況認識・把握は災害対応の基本であり,災害対策基本法でも地理空間情報の活用(第51条2項関係)が努力義務として規定されている.4月14日に発生した震度7の地震を受けて,防災科研では地震による被害状況把握ならびに情報集約のためのWeb-GISを構築した.地震発生翌日の4月15日には,熊本県庁に防災科研研究員が派遣され,熊本県や中央省庁などと連携し,各機関から提供される災害情報を,構築したWeb-GIS上に統合した.直接Web-GIS上に取り込める形で提供された情報には,国土地理院の「被災後空中写真」やITSジャパンの「通れた道マップ」,地震推進本部の「活断層図」などが挙げられる.また,熊本県庁から提供された道路被害情報や避難所情報なども必要とされる処理を経て,Web-GIS上に統合した.各機関から集約したデータは約45種類,データ数として631を数える(8月31日時点).
これら多くの情報をわかりやすく伝えるためには,それぞれの情報に応じた適切な表現方法がある.例えば,道路情報はその被害程度に応じて「全面通行止」「夜間全面通行止」「大型・歩・二通行止」「片側通行止」「解除」の5種類のカテゴリを用意し,通行止はバツ印,解除は丸印で表現した.また,それぞれ赤,紺,橙,黄,緑の色で状況が把握できるようにした.避難所情報は各避難所に避難している人数をもとにして,円形の大きさで差を表すことで,どこの避難所に人が集中しているかがわかるように表現した(図2).現在,災害対応で共有される情報がどのように表現されるべきか,明確な基準は設けられていない.災害時という混乱した状況の中で表現方法を検討していくのではなく,あらかじめ共有情報の表現方法の標準化を検討しておくことが必要である.
Web-GIS上で集約されたデータは,利用者がニーズに応じて必要な情報を適宜選択して表示できる.例えば,通水復旧状況のレイヤと避難所情報のレイヤを組み合わせることで,給水支援が必要な避難所を把握できる.また,避難所と推定全壊棟数分布,道路規制情報の3レイヤを重ね合わせることで,生活支援が必要な地域と,支援に向かうためにたどり着くための最適ルートを事前に検討することが可能となる(図3).
どの情報を重ね合わせることで,新しい情報としての価値がそこに創られるかどうかは実際の災害対応の現場におけるニーズとの調整が必要である.報告時には,熊本県庁でどのような情報が必要とされ,それに回答した地理空間情報の表現方法について具体的な事例を紹介する.
謝辞:本報告の一部には、総合科学技術・イノベーション会議のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)「レジリエントな防災・減災機能の強化」(管理法人:科学技術振興機構)の予算を活用した。