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[MAG34-01] 福島第一原発近傍の2地点におけるSPM計使用済みテープろ紙の分析による放射性核種の動態
キーワード:福島第一原子力発電所、放射性セシウム、浮遊粒子状物質、大気汚染常時監視網、経時変化
東電福島第一原子力発電所事故直後における大気中放射性物質の時空間分布の解明のため、大気環境常時測定局で使用されている、β線吸収法浮遊粒子状物質(SPM)計中の使用済みテープろ紙に採取された放射性セシウムの分析を、これまで東北地方南部と関東地方南部の99地点で実施して、その解析結果とデータ集を2つの論文(Tsuruta et al., Sci. Rep., 2014; Oura et al., JNRS, 2015)で公開した。その後、第一原発から約4km及び16km近傍に位置したSPM局2地点(双葉、楢葉)における事故直後のテープろ紙の提供を受け、SPM中の放射性セシウムを分析した結果の概要を報告する。まず、SPM計が東日本大震災直後も正常に作動していたかどうかを調べて慎重に検討した結果、信頼できると判断した。そこで、2011年3月12-23日(楢葉は3月14-23日)の期間、1時間連続採取されたSPM試料中のCs-134とCs-137濃度を分析した。また、これらのデータを総合的に解析するにあたり、福島県のモニタリングポスト(MP;上羽鳥、山田、繁岡、山田岡など)と第一・第二原発のMPの空間線量率、気象庁のAMeDAS地点と1000hPaの風向風速なども利用した。その結果、これまでの99地点のデータだけではわからなかった、原発近傍の大気中放射性セシウム濃度の詳細な時間変化が、初めて明らかになった。原発より北西方向に位置する双葉では、Cs-137が高濃度(>100 Bq m-3)となったピークは、3月12-13日、15-16日、18-20日に6回も測定され、その多くはプルーム/汚染気塊として、さらに北西~北方へ運ばれたことが明らかになった。また、原発より南側に位置する楢葉でも、高濃度のピークが、3月15-16日、20-21日に6回測定され、その多くは、プルーム/汚染気塊として、風下側の関東地方か福島県南部に運ばれた。これらのプルーム/汚染気塊は、これまでの論文で明らかにしたプルーム/汚染気塊と良い対応が見られたが、今回の測定で新たに見つかったものも、いくつか存在した。また、近くのMPの空間線量率のピークとCs-137濃度のピークとを比較した結果、両者のピーク時間がほぼ一致し、良い対応関係が見られた。とくに、3月12日午後3時における双葉でのCs-137の高濃度のピークは、近くのMPで期間中に最大となった空間線量率のピーク時間とよく一致し、放射性物質のFD1NPP近傍での動態が、詳細に明らかになった。謝辞:2地点のテープろ紙を提供してくださった福島県に感謝します。この研究は、文科省科研費「ISET-R」と環境省推進費「5-1501」で実施中である。