JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-GI 地球科学一般・情報地球科学

[M-GI30] [JJ] 情報地球惑星科学と大量データ処理

2017年5月22日(月) 09:00 〜 10:30 201A (国際会議場 2F)

コンビーナ:村田 健史(情報通信研究機構)、大竹 和生(気象庁気象大学校)、野々垣 進(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質情報研究部門 情報地質研究グループ)、堀之内 武(北海道大学地球環境科学研究院)、座長:村田 健史(情報通信研究機構)、座長:野々垣 進(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質情報研究部門 情報地質研究グループ)

09:45 〜 10:00

[MGI30-04] 金星探査機「あかつき」画像を用いた雲追跡の技術:多画像の利用,誤差評価,変形一貫性にもとづく緩和法

*堀之内 武1村上 真也2神山 徹4小郷原 一智5今村 剛6高木 征弘7山崎 敦2山田 学8渡部 重十3 (1.北海道大学地球環境科学研究院、2.宇宙科学研究所、3.北海道情報大学、4.産総研、5.滋賀県立大学、6.東京大学、7.京都産業大学、8.千葉工業大学)

キーワード:雲追跡、大気、金星、PIV

金星探査機「あかつき」は,多波長の撮像観測により,金星の気象を立体的に明らかにし,超回転など金星大気の様々な謎に迫ることを目的に打ち上げられた。2015年12月の軌道投入以来,高品質の撮像データをもたらしている。本講演では,あかつきの撮像データをもとに行っている雲追跡による風速導出の手法を紹介する。画像をもとにした追跡は地球科学に限らず広く行われており,PIVなどの流体の流れ解析にも用いられている。本研究では,その基本的な手法である相互相関法をベースに,原理的な考察に基づいて追跡手法そのもの及び誤差評価法を発展させた。その応用範囲は広いと考えられる。

相互相関法では,テンプレートとなる小画像をずらしながら相関係数を計算して得られる「相関曲面」のピークを移動先と認定するのが基本である。我々は,連続的に得られた3枚以上の画像を用い複数のペア画像から得られる相関曲面を整合的に重ねること,さらに必要に応じ近接する複数のテンプレートから得られる相関曲面を重ね合わせることなどにより,移動先の誤推定が減らせ,速度推定の精度も向上させられることを示した(文献1)。さらに相関曲面のピークの尖鋭度にもとづく精度評価を提案した(同)。また,相互相関法等でしばしば用いられる緩和法による誤り修正法に,我々が「変形一貫性」と呼ぶ観点からの評価関数を導入する改良を提案した(文献2)。さらに変形一貫性に基づく後処理により,複数の種類の速度(例えば流れと波の位相伝搬)を検出できる場合があることを示した(同)。以上の手法を用いて,「あかつき」では過去の探査ミッションに比べ,格段に良い精度,確度で雲追跡を行うことができるようになった。(科学成果はP-PS06セッションで発表する。)

文献
[1] Ikegawa and Horinouchi, Icarus, 271, 98-119, 2016.
[2] Horinouchi et al., Measurement Science and Technology, submitted.