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[MIS22-12] 南海トラフC0002掘削地点周辺の新たな3D地震探査イメージと既存孔井情報との対比
キーワード:南海トラフ地震発生帯、三次元地震探査、コア・ログ・サイスミック統合
熊野沖南海トラフにおける地球深部探査船「ちきゅう」による国際深海科学掘削計画(IODP)の地震発生帯深部掘削計画に関連して、2006年に取得された三次元地震探査データの再解析が実施され、地下構造の新たな深度イメージが得られた。本講演では、C0002孔の周辺について、新たな地震探査イメージに基づく地質構造の考察、既存の孔井関連情報の対比を行い、新しいコアログサイスミックインテグレーションに向けた検討について紹介する。三次元地震探査データは、高分解能化処理、海中多重反射波あるいは各種ノイズの除去処理、速度異方性を考慮した深度イメージング技術など、10年間で格段の進歩を遂げた三次元地震探査データ解析技術を用いたデータ前処理、速度モデルの再構築、深度イメージングが行われた。その結果、これまで不明瞭であった熊野海盆下の付加体内部の変形構造について、褶曲構造や反射面の不連続など、三次元的な地質構造が少しずつ明らかになっている。また、巨大分岐断層にいたる深部においては、海中多重反射波が効果的に抑制された分岐断層の上盤側に、地層境界の存在を示唆する反射波群が確認される。分岐断層(海底下深度5,200-5,400m)は既存解析に比べて下方へ凸に湾曲した形状を示し、その上部には1.5〜2.0km厚さの最大値が5,000m/sを超える高速度帯の存在が示唆される。一方、IODP地震発生帯深部掘削計画において、C0002掘削地点では複数の孔井が掘削され、最深で海底下約3,059mまでの、検層データ、コア試料、カッティングスなどから、多くの地質学的情報が獲得されている。このうち、地質構造に関連する情報を、新しい地震探査イメージと対比すると、地震探査断面から想定される付加体内部の断層構造と孔井情報から推定される構造の不連続面はよい対応を示している。コア、ログ、サイスミックの異なるスケールのデータ統合は、情報を相補的に活用することで地質学上の理解を深化させるために不可欠である。今後、地震探査の立場からは、地震波属性解析や各種インバージョン解析を通じて地震波探査データから導かれる定量的な情報を利用することで、広域の物性分布と孔井沿いの詳細な物性情報を結ぶことにより、地震発生帯における物理的性質の分布の詳細な理解につなげていきたいと考えている。