[MIS23-P29] The response of the climate to changes in the orbital parameters
キーワード:orbital parameter, glacial-interglacial, model
多くの古気候記録でミランコビッチ仮説を支持する結果が得られている (Hays et al., 1976) 一方、地球の軌道要素 (離心率、歳差、地軸の傾き) それぞれの変化に対してどのように気候が応答するかについてはあまり理解されていない。Abe-Ouchi et al. (2013) ではIcIES-MIROCを用いて、過去40万年間の氷期-間氷期サイクルについて、日射量変化に対して気候システムが応答することで、10万年周期が生じうることを示した。約2万年前の最終最大氷期 (LGM) から現在にかけての退氷期 (termination 1) や、約40万年前の海洋酸素同位体ステージ (MIS) 12からMIS11にかけての退氷期(termination 5)は、比較的小さい離心率 (夏の日射量変化が比較的小さい) にも関わらず大きな気候変化を示し、離心率が大きいことで日射量が大きく変化するMIS6からMIS5 (termination 2) などの退氷期と同程度の振幅であることは不思議である (40万年問題)。そこで、退氷期における気候の応答について注目し、様々な組み合わせで詳しく軌道要素に対する気候の応答を調べ、退氷期の気候変化における軌道要素の役割を解析する。今回、MIROC-LPJ (O'ishi and Abe-Ouchi, 2011) を用いて、軌道要素の組み合わせを変えた感度実験を行うことにより、地上気温の変化は日射量変化に対して必ずしも線形ではなく、特に離心率が小さい場合には、たとえ夏至が遠日点にあっても地軸の傾きを大きくすることで、夏至が近日点にあって地軸の傾きが小さい時よりも、北半球高緯度の夏の地上気温が高くなることがわかった。このことから、termination 5で、日射量が小さくとも地軸の傾きが大きいことで、大気二酸化炭素濃度の上昇を考慮せずとも、比較的高い地上気温となることが示唆される。本発表では、上記の感度実験のより詳細な解析結果について議論する。また、termination 1とtermination 5のそれぞれについて、軌道要素のみ変化させる2,000年間隔のスナップショット実験をMIROC-LPJで行うことにより、軌道要素の変化が気候変動にもたらす影響について調べることも今後の課題である。