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[O05-P46] 栃木県葛生地域に分布する礁性石灰岩の形成環境
キーワード:石灰岩、堆積環境、葛生
栃木県佐野市葛生地域には,ペルム系炭酸塩岩からなる鍋山層が分布している.鍋山層は礁性石灰岩であり,下位に存在する火山岩類である出流層,上位に存在する後述の中生界堆積岩類と合わせて一連の海山—礁複合体をなす.本研究では,鍋山層の堆積環境を再検討するとともに,鍋山層堆積後の環境の変遷に関しても考察を行った.
鍋山層は下部層,中部層,上部層の3部層に区分されている(柳本,1973).今回は葛生地域の3か所で調査を行い,各部層から計47のサンプルを得た.それぞれのサンプルについて1枚以上の薄片を作成し,その鏡下観察に基づいて炭酸塩岩を分類した.
下部層においては,一部にストーム起源と見られるgrainstoneの層を挟むものの,全体としては石灰泥質であり,mudstoneやwackestoneが主である.peroidを含むサンプルも観察され,ラグーン底等の静穏な環境における堆積が推定される.また,部層の下部においては凝灰質砂岩が観察され,堆積当時に海山頂部が海面上に露出し,侵食を受けていたことを示唆する.中部層は苦灰岩からなり,石灰岩が二次的に変質したものと考えられている.苦灰岩化の影響により,今回調査した範囲においては,初生的な堆積環境は復元できなかった.上部層においては,石灰泥基質の岩相が卓越し,mudstoneが主である.上部層も下部層と同じようにラグーン底での堆積が推定されるが,こちらでは凝灰質砂岩およびgrainstoneの層は観察されなかった.
鍋山層は上部三畳系礫質石灰岩によって不整合に覆われ,その上位の中部ジュラ系珪質頁岩は海山—礁複合体の上限をなす.礫質石灰岩は鍋山層を起源とすると思われる石灰岩礫を含み,海洋プレート上の海山が連続的に沈降を続けることを考慮すれば,礫質石灰岩の形成は海水準の低下によるものと推測できる.また,珪質頁岩の堆積は,堆積場である海山頂部が深海に移動したことを示唆する.
なお,本研究は日本科学協会のサイエンスメンター制度の支援を受けた.
鍋山層は下部層,中部層,上部層の3部層に区分されている(柳本,1973).今回は葛生地域の3か所で調査を行い,各部層から計47のサンプルを得た.それぞれのサンプルについて1枚以上の薄片を作成し,その鏡下観察に基づいて炭酸塩岩を分類した.
下部層においては,一部にストーム起源と見られるgrainstoneの層を挟むものの,全体としては石灰泥質であり,mudstoneやwackestoneが主である.peroidを含むサンプルも観察され,ラグーン底等の静穏な環境における堆積が推定される.また,部層の下部においては凝灰質砂岩が観察され,堆積当時に海山頂部が海面上に露出し,侵食を受けていたことを示唆する.中部層は苦灰岩からなり,石灰岩が二次的に変質したものと考えられている.苦灰岩化の影響により,今回調査した範囲においては,初生的な堆積環境は復元できなかった.上部層においては,石灰泥基質の岩相が卓越し,mudstoneが主である.上部層も下部層と同じようにラグーン底での堆積が推定されるが,こちらでは凝灰質砂岩およびgrainstoneの層は観察されなかった.
鍋山層は上部三畳系礫質石灰岩によって不整合に覆われ,その上位の中部ジュラ系珪質頁岩は海山—礁複合体の上限をなす.礫質石灰岩は鍋山層を起源とすると思われる石灰岩礫を含み,海洋プレート上の海山が連続的に沈降を続けることを考慮すれば,礫質石灰岩の形成は海水準の低下によるものと推測できる.また,珪質頁岩の堆積は,堆積場である海山頂部が深海に移動したことを示唆する.
なお,本研究は日本科学協会のサイエンスメンター制度の支援を受けた.