JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EE] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS03] [EE] Regolith Science

2017年5月23日(火) 09:00 〜 10:30 103 (国際会議場 1F)

コンビーナ:和田 浩二(千葉工業大学惑星探査研究センター)、Patrick Michel(University Cote d'Azur, Cote d'Azur Observatory, CNRS)、中村 昭子(神戸大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)、Kevin John Walsh(Southwest Research Institute)、座長:中村 昭子(神戸大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻)

09:00 〜 09:15

[PPS03-06] 振動によって誘発される粉体地形の緩和過程

*辻 大輔1大槻 道夫2桂木 洋光1 (1.名古屋大学大学院環境学研究科、2.島根大学大学院総合理工学研究科)

キーワード:Regolith, Granular fluidization, Planetary terrain, Modification process of craters, Impact-induced seismic event

多くの固体惑星の表面はレゴリスと呼ばれる粉体層で覆われている。粉体は状況に応じて「固まり」「流れる」という二面性を持ち、この性質は惑星固有の表面地形の起源になると考えられている。特に比較的小さな惑星の場合、隕石衝突で生じた地震動(e.g., [1])によってレゴリス層の粒子が流動化して、クレーターなどの惑星地形の形状を緩和させる可能性があることが報告されている[2]。これらの現象の動力学を記述するために、先行研究[3]では地形斜面の角度のみに依存した粉体の輸送則が提唱されている。しかし、一般に粉体の輸送は振動条件や粉体物性にも強く依存すると考えられる。そこで本研究では、粉体で構成された地形が緩和する振動条件を実験的に明らかにして、流動化した粉体の輸送を記述するモデルを構築することを目指す。

実験手順は次の通り。同一粒子が底面に糊付けされた円盤上に安息角を持つ砂山を作成する。そして、その円盤に鉛直正弦波振動を連続的に加える。その際、砂山の表面形状が緩和する様子を、レーザー変位計により測定する。

実験より、振動の最大加速度が重力加速度を超えると粉体の流動化が起きることが分かった。解析では、砂山上における流れる粉体のフラックスと傾斜角の関係を求めた。結果として、両者の関係は先行研究[3]の考えを基にして現象論的に導出した輸送モデルによって記述できることを明らかにした。このモデルでは、輸送される粉体層厚が砂山の高さによって決まり、輸送速度は砂山の傾斜角・粉体の摩擦係数・振動強度を特徴付ける速度によって決まる。そして、様々な実験条件で取得したデータの解析結果から、振動強度を特徴付ける速度は粉体物質に依存せず振動の最大速度のみに比例することが分かった。

結論として、本研究では実験的手法と理論的考察を組み合わせることにより、振動によって駆動される粉体流のフラックスを、実験で測定可能な物理量を用いて具体的に書き下すことができた。本研究で提唱する輸送モデルでは、粉体の流動層厚が実験のシステムサイズによって規定される砂山の高さによって決まる。それゆえ、その層厚を駆動するレゴリス層の厚さと置くことにより、本研究の提唱モデルを実際の惑星地形の緩和過程に適用することができる。

[1] D. Tsuji and N. A. Teanby, Icarus 277, 39 (2016)
[2] J. E. Richardson et al., Science 306, 1526 (2004)
[3] J. J. Roering et al., Water Resour. Res. 35, 853 (1999); J. J. Roering et al., Geology 29, 143 (2001)