[PPS03-P07] Measurements of cohesive force of regolith- simulated particles using centrifugal method
キーワード:regolith, cohesive force
はじめに:
小天体において、粒子サイズが小さい場合、粒子間に作用する固着力(ファンデルワールス力、静電気力)が粒子に働く重力と比較して支配的になると考えられる。レゴリス層の強度や空隙率は固着力によって決まることが報告され(Omura & Nakamura, submitted)、他方、レゴリスに覆われた小天体表面への低速度衝突では、重力のみならず粒子間相互作用も大きな影響をもつことを示唆する実験も報告されている(木内他, private communication)。さらに、自己重力のみでは説明不可能な速度で自転している小惑星が存在し、粒子の固着力が作用していると考えれば説明可能とされる (Sánchez & Scheeres, 2016)。これらのことから、粒子間付着力について、実験的にその値を評価することは小天体の物理過程を理解する上で重要となる。
粉粒体の固着力に関して、原子間力顕微鏡カンチレバーによる測定がなされている(Heim & Blum, 1999)が、本研究では、次で述べるような遠心分離法(遠心法) (Krupp, 1967など)を採用して、粒子の、接触面に対して垂直方向に働く固着力の測定実験を行った。この遠心法は、粒子1個ずつの直接的測定を行うものでありながら、同時に多数の粒子を測定対象とするので、統計的な扱いが容易である。また、本研究では、従来測定されている球形粒子だけではなく、不規則形状の粒子の固着力も測定し、粒子の形状による固着力への影響を考察した。
実験内容:
板に付着した粒子に、遠心分離機により遠心力をかける。回転数を上げていくにつれ、粒子にかかる遠心力は増大し、遠心力が粒子の固着力を上回るようになれば、粒子が表面から離れる。その遠心力を粒子のその表面に対する固着力であるとして、粒子の固着力を測定することができる。
本研究では、板として、シャーレ(粗い表面)もしくは光学ガラス板(滑らかな表面、面精度158.2 nmもしくは63.3 nm)を用い、粒子には、直径59、77 μmの不規則形状のアルミナ粒子、直径73 μmの不規則形状の海砂、直径50、100 μmの球形ガラスビーズを用いて測定を行った。遠心分離機の回転数は、300 rpmから5000 rpmまで離散的に増加させられ、それぞれの回転数で板の同じ場所を光学顕微鏡により撮影し、写真から、それぞれの粒子がどの回転数で板から離れるかを調べ、それぞれの粒子の固着力の範囲を決定した。遠心力を算出する際には、写真から見積もった各粒子の半径から粒子の質量を計算している。
実験結果:
実験結果と、弾性変形、表面エネルギーを考慮したJKR理論とDMT理論で推測される固着力の値との比較を行った。
粗い表面を使った結果は以下の通りである。アルミナ粒子に関して、その両方の理論による推定と同様、粒子サイズの増加で固着力の増加が見られたが、ガラスビーズでは明らかな増加は見られなかった。測定された固着力のばらつきが大きく、数桁にわたることから、組成による固着力の違いについては今回の測定では評価できなかった。ガラスビーズ50 μmを除く粒子で、理論値よりもかなり小さい固着力が測定された。不規則粒子の場合、固着力の測定値に大きなばらつきがあることから、固着力はマクロな形状の影響を受ける可能性があると考えられるが、マクロには球形であるガラスビーズ100 μmでも測定された固着力にはばらつきがあり、ミクロ形状の与える影響が大きい可能性がある。
図に示すように、ガラスビーズ100 μmに関して、より滑らかな表面をもつ光学ガラスを用いて測定した固着力のばらつきは、粗い表面のシャーレを用いて測定した固着力のばらつきよりも小さくなっている。他の粒子に関してはまだ測定を行っていないが、このことから、固着力に与えるミクロ形状の影響は大きいものと考えられる。他の粒子に関しては今後行う予定である。
本研究では、大気圧下で行われ、湿度の影響は評価できていない。乾燥していれば接触帯電の影響が考慮されるべきであり、湿っていれば大気の水分の吸着が考慮されるべきである。これらは今後の課題である。
小天体において、粒子サイズが小さい場合、粒子間に作用する固着力(ファンデルワールス力、静電気力)が粒子に働く重力と比較して支配的になると考えられる。レゴリス層の強度や空隙率は固着力によって決まることが報告され(Omura & Nakamura, submitted)、他方、レゴリスに覆われた小天体表面への低速度衝突では、重力のみならず粒子間相互作用も大きな影響をもつことを示唆する実験も報告されている(木内他, private communication)。さらに、自己重力のみでは説明不可能な速度で自転している小惑星が存在し、粒子の固着力が作用していると考えれば説明可能とされる (Sánchez & Scheeres, 2016)。これらのことから、粒子間付着力について、実験的にその値を評価することは小天体の物理過程を理解する上で重要となる。
粉粒体の固着力に関して、原子間力顕微鏡カンチレバーによる測定がなされている(Heim & Blum, 1999)が、本研究では、次で述べるような遠心分離法(遠心法) (Krupp, 1967など)を採用して、粒子の、接触面に対して垂直方向に働く固着力の測定実験を行った。この遠心法は、粒子1個ずつの直接的測定を行うものでありながら、同時に多数の粒子を測定対象とするので、統計的な扱いが容易である。また、本研究では、従来測定されている球形粒子だけではなく、不規則形状の粒子の固着力も測定し、粒子の形状による固着力への影響を考察した。
実験内容:
板に付着した粒子に、遠心分離機により遠心力をかける。回転数を上げていくにつれ、粒子にかかる遠心力は増大し、遠心力が粒子の固着力を上回るようになれば、粒子が表面から離れる。その遠心力を粒子のその表面に対する固着力であるとして、粒子の固着力を測定することができる。
本研究では、板として、シャーレ(粗い表面)もしくは光学ガラス板(滑らかな表面、面精度158.2 nmもしくは63.3 nm)を用い、粒子には、直径59、77 μmの不規則形状のアルミナ粒子、直径73 μmの不規則形状の海砂、直径50、100 μmの球形ガラスビーズを用いて測定を行った。遠心分離機の回転数は、300 rpmから5000 rpmまで離散的に増加させられ、それぞれの回転数で板の同じ場所を光学顕微鏡により撮影し、写真から、それぞれの粒子がどの回転数で板から離れるかを調べ、それぞれの粒子の固着力の範囲を決定した。遠心力を算出する際には、写真から見積もった各粒子の半径から粒子の質量を計算している。
実験結果:
実験結果と、弾性変形、表面エネルギーを考慮したJKR理論とDMT理論で推測される固着力の値との比較を行った。
粗い表面を使った結果は以下の通りである。アルミナ粒子に関して、その両方の理論による推定と同様、粒子サイズの増加で固着力の増加が見られたが、ガラスビーズでは明らかな増加は見られなかった。測定された固着力のばらつきが大きく、数桁にわたることから、組成による固着力の違いについては今回の測定では評価できなかった。ガラスビーズ50 μmを除く粒子で、理論値よりもかなり小さい固着力が測定された。不規則粒子の場合、固着力の測定値に大きなばらつきがあることから、固着力はマクロな形状の影響を受ける可能性があると考えられるが、マクロには球形であるガラスビーズ100 μmでも測定された固着力にはばらつきがあり、ミクロ形状の与える影響が大きい可能性がある。
図に示すように、ガラスビーズ100 μmに関して、より滑らかな表面をもつ光学ガラスを用いて測定した固着力のばらつきは、粗い表面のシャーレを用いて測定した固着力のばらつきよりも小さくなっている。他の粒子に関してはまだ測定を行っていないが、このことから、固着力に与えるミクロ形状の影響は大きいものと考えられる。他の粒子に関しては今後行う予定である。
本研究では、大気圧下で行われ、湿度の影響は評価できていない。乾燥していれば接触帯電の影響が考慮されるべきであり、湿っていれば大気の水分の吸着が考慮されるべきである。これらは今後の課題である。