[PPS06-P04] あかつき搭載カメラIR2およびUVI・LIRで見られる金星雲層上端領域における大気乱流エネルギーの評価
キーワード:金星、乱流エネルギースペクトル
金星大気には様々な空間スケールの波や渦が存在しており、それらは広い波数領域で乱流を形成している。これらの波や渦によってエネルギーと運動量が輸送される。惑星大気乱流の評価には、本来エネルギー・運動量と結合する風速(運動エネルギー)や温度ポテンシャルが用いられる。Nastrom et al.(1985)では地球の対流圏での風速・温度分布からエネルギースペクトルをそれぞれについて導出し、どちらのスペクトルにも波数k-3に比例する領域とk-5/3に比例する2領域が見られた。また地球では乱流エネルギースペクトルと、雲頂での紫外線反射輝度のパワースペクトル(PSD)との間に良い相関が示されている(Travis et al. 1978)。このため、これまで温度・風速分布の直接観測が困難であった金星では、紫外画像の輝度分布から導出されたPSDが大気乱流エネルギースペクトルの代わりとして用いられた。
Rossow et al. (1980) およびDel Genio et al. (1982) では、Pioneer Venus Orbiter (PVO) の紫外画像を用いて惑星波数K = 5~30(波長1,300~7,500 km)でPSDを求め、異なる波数のべき乗に比例する2領域を持つスペクトルが求まった。またPeralta et al. (2007)では、Galileo金星フライバイ時の紫外画像からK = 1~50(波長760~38,400 km)でPSDを求め、その時間変動が大きいことを示した。寺口らは (2010 in AGU,2011 in EPSC) 、Venus Express(VEx)のVenus Monitoring Camera(VMC)による紫外撮像データを用いてK = 3.6~360(波長100~10,000 km)でPSDの時空間変動を捉えた。しかしながら、これらの研究において金星大気乱流エネルギーの評価を行う場合は、紫外線で観測される雲頂での大気微量成分の分布と温度や風速などの力学パラメータとの相関を確かめる必要がある。
あかつきは、複数波長でほぼ同時に金星大気撮像観測を行うことができる探査機である。IR2(近赤外)は昼面では雲頂高度分布、夜面では雲の厚さ分布、UVI(紫外)は昼面のSO2および未知吸収物質の分布、LIR(中間赤外)は雲頂の温度分布を観測している。またこれらの画像データから、今後風速場も求められていく予定である。これらのデータを用いることで初めて、これまでの研究に明確な基礎を与えることができる。木星においては、紫外線・青色・近赤外の3波長でのPSDと風速場から求めたPSDを比較した例がある(Barrado et al.2009)。金星においても、温度場情報(LIR)と風速場情報(IR2・UVI)およびこれらのPSDと、ほぼ同時に得られるIR2・UVIが捉える物理量の分布情報から得られるPSDを比較し、その相関および要因の解明が初めて可能となる。また、あかつきの金星周回軌道は赤道面に近く、それによって撮像される空間分解能の高い満金星画像を用いることでPSDの空間スケールをK = 1~3840(波長10~38,400 km) まで拡張することも潜在的に可能である。本講演では、あかつきのデータ群についてこの研究における解析手法とデータの質の評価、PSD評価の初期結果について述べる。
Rossow et al. (1980) およびDel Genio et al. (1982) では、Pioneer Venus Orbiter (PVO) の紫外画像を用いて惑星波数K = 5~30(波長1,300~7,500 km)でPSDを求め、異なる波数のべき乗に比例する2領域を持つスペクトルが求まった。またPeralta et al. (2007)では、Galileo金星フライバイ時の紫外画像からK = 1~50(波長760~38,400 km)でPSDを求め、その時間変動が大きいことを示した。寺口らは (2010 in AGU,2011 in EPSC) 、Venus Express(VEx)のVenus Monitoring Camera(VMC)による紫外撮像データを用いてK = 3.6~360(波長100~10,000 km)でPSDの時空間変動を捉えた。しかしながら、これらの研究において金星大気乱流エネルギーの評価を行う場合は、紫外線で観測される雲頂での大気微量成分の分布と温度や風速などの力学パラメータとの相関を確かめる必要がある。
あかつきは、複数波長でほぼ同時に金星大気撮像観測を行うことができる探査機である。IR2(近赤外)は昼面では雲頂高度分布、夜面では雲の厚さ分布、UVI(紫外)は昼面のSO2および未知吸収物質の分布、LIR(中間赤外)は雲頂の温度分布を観測している。またこれらの画像データから、今後風速場も求められていく予定である。これらのデータを用いることで初めて、これまでの研究に明確な基礎を与えることができる。木星においては、紫外線・青色・近赤外の3波長でのPSDと風速場から求めたPSDを比較した例がある(Barrado et al.2009)。金星においても、温度場情報(LIR)と風速場情報(IR2・UVI)およびこれらのPSDと、ほぼ同時に得られるIR2・UVIが捉える物理量の分布情報から得られるPSDを比較し、その相関および要因の解明が初めて可能となる。また、あかつきの金星周回軌道は赤道面に近く、それによって撮像される空間分解能の高い満金星画像を用いることでPSDの空間スケールをK = 1~3840(波長10~38,400 km) まで拡張することも潜在的に可能である。本講演では、あかつきのデータ群についてこの研究における解析手法とデータの質の評価、PSD評価の初期結果について述べる。