JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[EJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG71] [EJ] 海洋底地球科学

2017年5月25日(木) 09:00 〜 10:30 201A (国際会議場 2F)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、座長:新井 隆太(国立研究開発法人海洋研究開発機構)、座長:多良 賢二((株)地球科学総合研究所)

09:15 〜 09:30

[SCG71-08] スミスカルデラ北部外輪山における熱水活動の可能性

*松下 小春1坂本 泉1上原 太樹1四宮 裕太1堤 康祐1中尾 凪佐1三浦 眞綸1八木 雅俊1岡村 聡2棚橋 道郎3 (1.東海大学、2.北教大札幌、3.海洋先端研)

キーワード:スミスカルデラ、水中音響異常、赤褐色砕屑岩、熱水

日本は陸海問わず多くの活発な火山活動が存在し、噴火やそれに伴う自然災害が多い。一方で温泉・地熱開発や熱水資源など火山活動による恩恵を得てきた。近年海洋における鉱物資源の利用が注目され、特に海底熱水鉱床は伊豆・小笠原弧や沖縄列島沖といった海域にて、積極的に海底資源分布や資源保有量の推定などの調査が行われている。
 東海大学では新な熱水活動域の発見を目標に2014年度より、東京から南に約470kmに位置している伊豆・小笠原弧のスミスカルデラにおいて、東海大学が所有する調査船望星丸を用いて地形的・地質的調査を行ってきた。本研究は、2016年度の調査から実施した水中音響調査の結果と同地域の採泥結果を併用し、スミスカルデラ北部外輪山における熱水活動の可能性を推定することを目的とした。
 調査によりスミスカルデラ北部は、外輪山のカルデラ側斜面に放射状を呈したリッジの発達が確認された。さらに同地域の外輪山山頂部において東西約4kmにわたって連続する水中音響異常を複数検出し、それらの分布域を「望星site」と仮称した。望星site東西端での採泥から、火成岩とともに多量の赤褐色砕屑岩が採取された。採取された赤褐色砕屑岩の礫間充填物の蛍光X線分析から、充填物中には高いカルサイト(方解石)と酸化鉄量が検出された。さらに薄片観察では充填物部分から、結晶質なカルサイトと赤褐色に変質した粒状のカルサイトの結晶、酸化鉄の濃集帯と思われる赤褐色の脈、さらにクリストバライトの結晶が認められた。X線回折では、含鉄結晶は認められなかったが、カルサイトおよびクリストバライトは検出された。一般に方解石はアルカリ寄りの中性変質帯にて産出し、クリストバライトは比較的低温(100℃前後)な酸性変質帯に産出する。以上のことから、スミスカルデラ北部の望星siteでは、カルサイトを形成するアルカリ寄りの中性変質帯を形成する熱水が活動していたが、なんらかの環境変化が発生したことにより、現在は酸性変質帯を形成する較的低温であり、非晶質な鉄を含む熱水が小規模ではあるが活動していると推定した。また、マルチビームで広範囲に水中音響異常が検出されたことから、現在の熱水活動によって、音響散乱を生じるような現象が海底付近で起きていると考えられる。