[SCG73-P20] 嶺岡・瀬戸川帯火山岩類の岩石化学とジルコンU-Pb年代
キーワード:嶺岡・瀬戸川帯、古第三紀付加体、オフィオライト、ジルコンU-Pb年代
古第三紀付加体として知られている千葉県房総半島の嶺岡帯および静岡県東部の瀬戸川帯には,超苦鉄質岩,苦鉄質岩(斑れい岩・ドレライト・玄武岩),遠洋性堆積岩(石灰質・珪質頁岩)など多様な海洋性の岩石が断片的に産出しており,オフィオライトメランジュとして解釈されている(石渡,1989).本研究では,偏光顕微鏡での観察,主要元素および微量元素(希土類元素を含む)を用いた全岩化学組成の分析,ジルコンU-Pb年代の測定により,化学組成と形成年代の関係をフィリピン海プレートや太平洋プレートを構成する岩石と比較し,嶺岡・瀬戸川帯火山岩類の起源を推定することを目的とする.
偏光顕微鏡での試料観察において,鉱物組み合わせから3つのタイプに分類した.タイプ1は主に斜長石と単斜輝石で構成されており,タイプ2は斜長石,単斜輝石に加えて黒雲母,アパタイトを含む.タイプ3は斜長石,単斜輝石に加えて,石英を含む.全岩化学組成の分析を行った結果,タイプ1とタイプ3はそれぞれ中央海嶺玄武岩(MORB),島弧ソレアイトに類似した特徴を示すのに対し,タイプ2はプレート内アルカリ岩に類似した特徴を示す. 希土類元素パターンについては,タイプ1とタイプ3はLREEにやや枯渇したパターンを示し,タイプ2はLREEにエンリッチし,HREEに枯渇したパターンであった.5種類の試料の粗粒なドレライトを処理したところ,タイプ3の1試料からジルコンを抽出することに成功した.ジルコンU-Pb年代測定をLA-ICP-MSで行い,18.51±0.82 Maという年代が得られた.この年代は,Mori et al. (2011)が安山岩質凝灰角礫岩から得た全岩K-Ar年代(5.8Ma及び15.6Ma)に比較的近い値である.
過去に得られた全岩K-Ar年代は,幅広い年代値を示し,これらの年代は変質によってリセットされている可能性が高い.Hirano et al. (2003)やMori et al. (2011)は,タイプ1に相当するMORBタイプの玄武岩より約50Maと約80MaのAr-Arプラトー年代を報告している.これらは,嶺岡・瀬戸川帯の遠洋性堆積物から報告されている微化石年代とほぼ一致する値であり,信頼性の高い値と見なすことができる.約50Maと約80MaのMORBタイプ玄武岩の組成的な違いは不明であるが,約80Maの年代を持つMORBタイプ玄武岩の存在は太平洋MORB以外に見当たらない.一方で,約50Ma頃に形成されたMORBタイプ玄武岩は,太平洋MORB,西フィリピン海盆の背弧海盆玄武岩(BABB),マリアナ前弧に形成された前弧玄武岩(FAB)の可能性がある.希土類元素パターンや,Shervais (1982)のTi-V区分図で比較すると,嶺岡・瀬戸川帯のタイプ1の玄武岩は少なくともマリアナ前弧のFABではないようである.Hirano et al. (2003)とMori et al. (2011)はアルカリ玄武岩から25.5MaのAr-Arプラトー年代と19.6MaのAr-Arアイソクロン年代を報告しており,杉山(1995)もプレート内玄武岩が前期中新世の泥岩と同時代に噴出した地質学的産状を報告している.この頃には,四国海盆がすでに形成されており,嶺岡・瀬戸川帯のタイプ2のアルカリ岩と太平洋および四国海盆上の海山を形成するアルカリ岩の比較を行った.その結果,重希土類に著しく枯渇している点で太平洋上の海山を形成するアルカリ岩によく類似することが分かった.タイプ3の19Maに形成された島弧ソレアイトは,四国海盆形成後の中新世に再開される伊豆ボニンマリアナ弧の最初の火成活動によって形成されたものであろう.
偏光顕微鏡での試料観察において,鉱物組み合わせから3つのタイプに分類した.タイプ1は主に斜長石と単斜輝石で構成されており,タイプ2は斜長石,単斜輝石に加えて黒雲母,アパタイトを含む.タイプ3は斜長石,単斜輝石に加えて,石英を含む.全岩化学組成の分析を行った結果,タイプ1とタイプ3はそれぞれ中央海嶺玄武岩(MORB),島弧ソレアイトに類似した特徴を示すのに対し,タイプ2はプレート内アルカリ岩に類似した特徴を示す. 希土類元素パターンについては,タイプ1とタイプ3はLREEにやや枯渇したパターンを示し,タイプ2はLREEにエンリッチし,HREEに枯渇したパターンであった.5種類の試料の粗粒なドレライトを処理したところ,タイプ3の1試料からジルコンを抽出することに成功した.ジルコンU-Pb年代測定をLA-ICP-MSで行い,18.51±0.82 Maという年代が得られた.この年代は,Mori et al. (2011)が安山岩質凝灰角礫岩から得た全岩K-Ar年代(5.8Ma及び15.6Ma)に比較的近い値である.
過去に得られた全岩K-Ar年代は,幅広い年代値を示し,これらの年代は変質によってリセットされている可能性が高い.Hirano et al. (2003)やMori et al. (2011)は,タイプ1に相当するMORBタイプの玄武岩より約50Maと約80MaのAr-Arプラトー年代を報告している.これらは,嶺岡・瀬戸川帯の遠洋性堆積物から報告されている微化石年代とほぼ一致する値であり,信頼性の高い値と見なすことができる.約50Maと約80MaのMORBタイプ玄武岩の組成的な違いは不明であるが,約80Maの年代を持つMORBタイプ玄武岩の存在は太平洋MORB以外に見当たらない.一方で,約50Ma頃に形成されたMORBタイプ玄武岩は,太平洋MORB,西フィリピン海盆の背弧海盆玄武岩(BABB),マリアナ前弧に形成された前弧玄武岩(FAB)の可能性がある.希土類元素パターンや,Shervais (1982)のTi-V区分図で比較すると,嶺岡・瀬戸川帯のタイプ1の玄武岩は少なくともマリアナ前弧のFABではないようである.Hirano et al. (2003)とMori et al. (2011)はアルカリ玄武岩から25.5MaのAr-Arプラトー年代と19.6MaのAr-Arアイソクロン年代を報告しており,杉山(1995)もプレート内玄武岩が前期中新世の泥岩と同時代に噴出した地質学的産状を報告している.この頃には,四国海盆がすでに形成されており,嶺岡・瀬戸川帯のタイプ2のアルカリ岩と太平洋および四国海盆上の海山を形成するアルカリ岩の比較を行った.その結果,重希土類に著しく枯渇している点で太平洋上の海山を形成するアルカリ岩によく類似することが分かった.タイプ3の19Maに形成された島弧ソレアイトは,四国海盆形成後の中新世に再開される伊豆ボニンマリアナ弧の最初の火成活動によって形成されたものであろう.