11:00 〜 11:15
[SCG74-08] モンモリロナイトの摩擦強度における湿度及び層間陽イオンの影響
キーワード:モンモリロナイト、水和、湿度、層間陽イオン、摩擦強度
【はじめに】
スメクタイトは断層近傍で普遍的に見られる鉱物で(Ohtani et al., 2000; Schleicher et al., 2006; Kameda et al., 2015)、低い摩擦係数で特徴づけられることから(Summers and Byerlee, 1977; Shimamoto and Logan, 1981)、断層運動において重要な役割を果たしていると考えられている(Ikari et al., 2007; Ujiie et al., 2013)。スメクタイトは、圧力・温度が増加するほど層間に含まれる水の量が減少するので、地下深部ほど含水量が減少すると考えられる(Bird, 1984)。また、天然には、層間に存在する交換性陽イオンの異なるスメクタイトが存在し、層間陽イオンの異なるスメクタイトの量比が深さによって変化することも知られている(Kameda et al., 2016)。したがって、水和状態や層間陽イオンの影響を評価することは、地下のスメクタイトの摩擦特性を理解する上で重要である。しかし、層間陽イオンを交換したスメクタイトについて、水和状態を制御して摩擦実験を行った研究はほとんど存在しない。そこで本研究では、Naモンモリロナイト(典型的なスメクタイト)と層間陽イオンをCaに交換したモンモリロナイトを用いて、水和状態を制御した条件下で摩擦実験を行った。
【手法】
水和状態は試料周りの湿度を制御することによって制御できるので、広島大学の二軸摩擦試験機に湿度制御システムを新設した。このシステムは、内部に試料をセットする圧力容器ユニットと、圧力容器内に蒸気を送り込む蒸気生成ユニットの2つのユニットから成る。圧力容器内の温度と圧力容器に送り込む蒸気の温度を独立に制御することにより、蒸気圧を独立に制御し、試料周りの湿度を制御した。本研究では、相対湿度(RH)が10・30・50・70・90 %の条件で、Naモンモリロナイトと層間陽イオンをCaに交換したモンモリロナイトの粉末を斑レイ岩ブロックの間に挟んでせん断させた。すべての実験で温度は95 ℃、垂直応力は10 MPa、せん断速度は3 µm/sとした。
【結果】
NaモンモリロナイトとCaモンモリロナイトともに、湿度が増加するのに伴って摩擦係数が減少する傾向を示した。RH 10 %ではNaモンモリロナイトが0.33、Caモンモリロナイトが0.25なのに対して、RH 90 %ではNaモンモリロナイトが0.062、Caモンモリロナイトが0.037であった。また、同じ湿度では常に、CaモンモリロナイトよりもNaモンモリロナイトのほうが高い摩擦係数を示した。
【考察】
CaモンモリロナイトがNaモンモリロナイトよりも高い摩擦強度を示す傾向は、Behnsen and Faulkner(2013)と同様である。彼らによれば、水和エネルギーが小さいほど層間の距離が近く結合力が強まるため、Ca2+よりも水和エネルギーの小さいNa+を層間にもつNaモンモリロナイトのほうが高い摩擦強度を示す。湿度の増加に伴って摩擦係数が下がる傾向は、水和状態を変化させた先行研究(Bird, 1984; Ikari et al., 2007)と調和的である。水和に伴う摩擦係数の低下を説明する主なメカニズムとして、層間の膨潤に原因を求める説(Bird, 1984)と粒子間の膨潤に原因を求める説(Moore and Lockner, 2007)がある。常圧でのXRDの結果によれば膨潤による層間距離の変化は湿度の増加に対して不連続に起きている(Morodome and Kawamura, 2009)のに対して、層間や粒子間の含水量を含めたモンモリロナイト全体での含水量は、湿度の増加に対して連続的に増加している(Xu et al., 2000)。つまり、粒子間の膨潤は湿度の増加に伴い連続的に生じる。本研究で得られた摩擦係数の値は湿度の増加に対して連続的に減少していることから、湿度の増加に伴うモンモリロナイトの摩擦係数の減少は、主に粒子間の膨潤に起因するものと解釈できる。本研究の結果から、水和状態と層間陽イオンの影響が摩擦強度に大きな影響を与えることが分かる。特に、CaモンモリロナイトよりもNaモンモリロナイトの摩擦強度が高いという結果が完全に水和した状態だけでなく(Behnsen and Faulkner, 2013)、乾燥状態のモンモリロナイトにおいても得られたことは、地下深部での摩擦強度を考える上で重要である。
スメクタイトは断層近傍で普遍的に見られる鉱物で(Ohtani et al., 2000; Schleicher et al., 2006; Kameda et al., 2015)、低い摩擦係数で特徴づけられることから(Summers and Byerlee, 1977; Shimamoto and Logan, 1981)、断層運動において重要な役割を果たしていると考えられている(Ikari et al., 2007; Ujiie et al., 2013)。スメクタイトは、圧力・温度が増加するほど層間に含まれる水の量が減少するので、地下深部ほど含水量が減少すると考えられる(Bird, 1984)。また、天然には、層間に存在する交換性陽イオンの異なるスメクタイトが存在し、層間陽イオンの異なるスメクタイトの量比が深さによって変化することも知られている(Kameda et al., 2016)。したがって、水和状態や層間陽イオンの影響を評価することは、地下のスメクタイトの摩擦特性を理解する上で重要である。しかし、層間陽イオンを交換したスメクタイトについて、水和状態を制御して摩擦実験を行った研究はほとんど存在しない。そこで本研究では、Naモンモリロナイト(典型的なスメクタイト)と層間陽イオンをCaに交換したモンモリロナイトを用いて、水和状態を制御した条件下で摩擦実験を行った。
【手法】
水和状態は試料周りの湿度を制御することによって制御できるので、広島大学の二軸摩擦試験機に湿度制御システムを新設した。このシステムは、内部に試料をセットする圧力容器ユニットと、圧力容器内に蒸気を送り込む蒸気生成ユニットの2つのユニットから成る。圧力容器内の温度と圧力容器に送り込む蒸気の温度を独立に制御することにより、蒸気圧を独立に制御し、試料周りの湿度を制御した。本研究では、相対湿度(RH)が10・30・50・70・90 %の条件で、Naモンモリロナイトと層間陽イオンをCaに交換したモンモリロナイトの粉末を斑レイ岩ブロックの間に挟んでせん断させた。すべての実験で温度は95 ℃、垂直応力は10 MPa、せん断速度は3 µm/sとした。
【結果】
NaモンモリロナイトとCaモンモリロナイトともに、湿度が増加するのに伴って摩擦係数が減少する傾向を示した。RH 10 %ではNaモンモリロナイトが0.33、Caモンモリロナイトが0.25なのに対して、RH 90 %ではNaモンモリロナイトが0.062、Caモンモリロナイトが0.037であった。また、同じ湿度では常に、CaモンモリロナイトよりもNaモンモリロナイトのほうが高い摩擦係数を示した。
【考察】
CaモンモリロナイトがNaモンモリロナイトよりも高い摩擦強度を示す傾向は、Behnsen and Faulkner(2013)と同様である。彼らによれば、水和エネルギーが小さいほど層間の距離が近く結合力が強まるため、Ca2+よりも水和エネルギーの小さいNa+を層間にもつNaモンモリロナイトのほうが高い摩擦強度を示す。湿度の増加に伴って摩擦係数が下がる傾向は、水和状態を変化させた先行研究(Bird, 1984; Ikari et al., 2007)と調和的である。水和に伴う摩擦係数の低下を説明する主なメカニズムとして、層間の膨潤に原因を求める説(Bird, 1984)と粒子間の膨潤に原因を求める説(Moore and Lockner, 2007)がある。常圧でのXRDの結果によれば膨潤による層間距離の変化は湿度の増加に対して不連続に起きている(Morodome and Kawamura, 2009)のに対して、層間や粒子間の含水量を含めたモンモリロナイト全体での含水量は、湿度の増加に対して連続的に増加している(Xu et al., 2000)。つまり、粒子間の膨潤は湿度の増加に伴い連続的に生じる。本研究で得られた摩擦係数の値は湿度の増加に対して連続的に減少していることから、湿度の増加に伴うモンモリロナイトの摩擦係数の減少は、主に粒子間の膨潤に起因するものと解釈できる。本研究の結果から、水和状態と層間陽イオンの影響が摩擦強度に大きな影響を与えることが分かる。特に、CaモンモリロナイトよりもNaモンモリロナイトの摩擦強度が高いという結果が完全に水和した状態だけでなく(Behnsen and Faulkner, 2013)、乾燥状態のモンモリロナイトにおいても得られたことは、地下深部での摩擦強度を考える上で重要である。