15:00 〜 15:15
[SCG74-18] フェーズフィールド法による発泡マクスウェル流体内き裂進展過程の数値解析
キーワード:爆発的噴火、破砕、フェーズフィールド法
発泡マグマの脆性破砕は爆発的噴火のカギを握る素過程である.天然の噴火における減圧時間の見積もりによると,その破砕は「脆性的破砕」 (Kameda et al. JVGR 2013) の様式をとると考えられる.すなわち,固体的な破砕であるが,マグマのレオロジー的物性は流体的とみなせる時間スケールで生じている.また,最近,我々が行った室内実験から,脆性的破砕は,気泡分布の空間的な非一様性を主な要因とするき裂の進展によって引き起こされると考えられる (Kameda et al. in preparation).
我々の仮説を数値シミュレーションとしてモデル化するために,ここでは,フェーズフィールド法 (Spatschek et al. Phil. Mag. 2011) を用いて,粘弾性体内のき裂を連続体として表現することを提案する.フェーズフィールド法では,一般に秩序変数(以下PF変数)と呼ばれるパラメータを用いて,連続体内に存在するマグマと気泡(あるいはき裂)を分別する.本研究では,PF変数の時間発展は,局所的な弾性ひずみエネルギ,表面エネルギ,および,数値計算上必要な付加変数から構成されるAllen-Cahn方程式により求める.この場合,き裂の進展は,弾性ひずみエネルギにより駆動される.数値シミュレーションのプラットフォームとしてはCOMSOLを用いた.PF変数の時間発展式は,我々の手で弱形式の形で定式化し,COMSOLのPDEソルバーを用いて解いた.応力/ひずみ場の時間発展は,COMSOLに実装されている有限要素法 (FEM) ソルバーを用いて解いた.マグマのレオロジーは,線形マックスウェル粘弾性体と仮定した.
計算モデルとして,図1のような,気泡を含む球形のマクスウェル粘弾性体を考えた.計算負荷の低減のため,球全体の8分の1のみを計算領域とした.1個の大きな気泡を球の中心に置き,その近傍に,もう一つ小気泡を置いた.小気泡の配置として,3つの対称面から等距離の場合 (Case 1),および,対称面の一つに近づけた場合 (Case 2)の2つをテストした.材料の物性値は,我々の行った過去の室内実験 (Kameda et al. 2013)をもとに設定した.球の外側には,減圧として,等方的,かつ,時間とともにある一定値に到達する負圧を与えた.
気液界面の時間発展を図2に示す.この図から,気泡の配置は,き裂の進展に大きな影響をおよぼすことが分かる.進展は4つの過程に分けられる: まず,大気泡と正対する小気泡の表面部が尖ってくる.つぎに,その先端が大気泡に到達する.続けて,小気泡を偏らせて配置したCase 2のみに見られる現象として,小気泡を寄せた対称面に向かって平面状のき裂が急激に広がる.最後に,平面状のき裂が外側境界に向けて進み,鋭いき裂が開口する.
発泡材料におけるき裂の進展を支配する主な要因として,気泡同士の相互作用による応力集中が考えられる.単一気泡に対する厚肉球殻理論によると,気泡周りの差応力は,半径で規格化した気泡中心からの無次元距離の3乗に反比例して減少する (Zhang Nature 1999).複数の気泡が存在する場合,局所的な差応力は自身の作り出すものに加えて,隣接気泡が作り出すものが付加される.これは,大気泡近傍の小気泡表面に差応力の最大値が発生することを意味する.図2に示すき裂進展過程はこの局所的な応力集中で良く説明できる.
本計算から,発泡体におけるき裂進展過程は,気泡配置の影響を強く受けることが分かった.気泡配置の影響を考慮に入れた発泡マグマの破砕基準を考える必要があるかもしれない.
我々の仮説を数値シミュレーションとしてモデル化するために,ここでは,フェーズフィールド法 (Spatschek et al. Phil. Mag. 2011) を用いて,粘弾性体内のき裂を連続体として表現することを提案する.フェーズフィールド法では,一般に秩序変数(以下PF変数)と呼ばれるパラメータを用いて,連続体内に存在するマグマと気泡(あるいはき裂)を分別する.本研究では,PF変数の時間発展は,局所的な弾性ひずみエネルギ,表面エネルギ,および,数値計算上必要な付加変数から構成されるAllen-Cahn方程式により求める.この場合,き裂の進展は,弾性ひずみエネルギにより駆動される.数値シミュレーションのプラットフォームとしてはCOMSOLを用いた.PF変数の時間発展式は,我々の手で弱形式の形で定式化し,COMSOLのPDEソルバーを用いて解いた.応力/ひずみ場の時間発展は,COMSOLに実装されている有限要素法 (FEM) ソルバーを用いて解いた.マグマのレオロジーは,線形マックスウェル粘弾性体と仮定した.
計算モデルとして,図1のような,気泡を含む球形のマクスウェル粘弾性体を考えた.計算負荷の低減のため,球全体の8分の1のみを計算領域とした.1個の大きな気泡を球の中心に置き,その近傍に,もう一つ小気泡を置いた.小気泡の配置として,3つの対称面から等距離の場合 (Case 1),および,対称面の一つに近づけた場合 (Case 2)の2つをテストした.材料の物性値は,我々の行った過去の室内実験 (Kameda et al. 2013)をもとに設定した.球の外側には,減圧として,等方的,かつ,時間とともにある一定値に到達する負圧を与えた.
気液界面の時間発展を図2に示す.この図から,気泡の配置は,き裂の進展に大きな影響をおよぼすことが分かる.進展は4つの過程に分けられる: まず,大気泡と正対する小気泡の表面部が尖ってくる.つぎに,その先端が大気泡に到達する.続けて,小気泡を偏らせて配置したCase 2のみに見られる現象として,小気泡を寄せた対称面に向かって平面状のき裂が急激に広がる.最後に,平面状のき裂が外側境界に向けて進み,鋭いき裂が開口する.
発泡材料におけるき裂の進展を支配する主な要因として,気泡同士の相互作用による応力集中が考えられる.単一気泡に対する厚肉球殻理論によると,気泡周りの差応力は,半径で規格化した気泡中心からの無次元距離の3乗に反比例して減少する (Zhang Nature 1999).複数の気泡が存在する場合,局所的な差応力は自身の作り出すものに加えて,隣接気泡が作り出すものが付加される.これは,大気泡近傍の小気泡表面に差応力の最大値が発生することを意味する.図2に示すき裂進展過程はこの局所的な応力集中で良く説明できる.
本計算から,発泡体におけるき裂進展過程は,気泡配置の影響を強く受けることが分かった.気泡配置の影響を考慮に入れた発泡マグマの破砕基準を考える必要があるかもしれない.