[SCG74-P12] 固化過程におけるフォームの粘弾性特性とせん断変形挙動
キーワード:フォーム、複素粘性率、見かけの粘性率、キャピラリ数
カルデラ噴火で見つかる軽石は,気泡が一方向に伸びたような特徴的な構造を持ち,Tube pumiceと呼ばれる.本研究は,カルデラ噴火におけるマグマの挙動の鍵を握ると考えられる,Tube pumiceの成因解明を目指す研究の一部を成すものである.Tube pumiceの成因解明にあたっては,マグマのアナログ物質として,硬質ポリウレタンフォームを用いて実験を行う.ポリウレタンフォームは,ポリイソシアネート液とポリオール液を,触媒,発泡剤,整泡剤などと混合し,樹脂化させると同時に発泡させた,発泡プラスチックである.ポリウレタンフォームは粘弾性体であり,火道を上昇するマグマと同様に,発泡,流動,固化の過程を持ち,それを常温・常圧下の化学反応によって再現する.マグマも流体と固体の両方の性質をもつ粘弾性体である.粘弾性体の挙動は,粘性率,気泡の体積分率,温度によって変化し,さらに変形速度などの時間スケールに依存する.そして,火道におけるマグマの粘弾性挙動は,火山の噴火様式を決定づける重要な要素となる.
ポリウレタンフォームをマグマのアナログ物質として用いるにあたって,まずポリウレタンフォーム自体の挙動を把握しておく必要がある.そこで,本研究は,反応過程におけるポリウレタンフォームにさまざまな時間スケールでせん断変形を与えて,粘弾性特性を定量化することを目的とする.本発表では,ポリウレタンフォームに振動変形を与えたときの挙動と,一方向へのせん断変形を与えたときの挙動を比較した結果を報告する.
実験試料は,東邦化学工業株式会社製のポリイソシアネート液(ハイセル360P)とポリオール液(ハイセルHW-408 整泡剤なし)を使用した.
粘弾性の測定は,高性能粘弾性計測装置(AR2000ex,TA Instruments製)をベースにした,共軸二重円筒系の内筒回転式レオメータを使用した.外筒は固定されていて,内筒はモーターに制御されて回転する.本研究では,内筒にはアルミニウム製円柱(半径7.5 mm)を使用し,外筒にはポリプロピレン製ビーカー(半径11.5 mm)を使用した.容器底面から内筒底面までの高さは8 mmとした.
測定中,試料は円筒間に満たされ,発熱を伴いながら膨張し,気泡の体積分率は60%程度に落ち着く.そこで,赤外線放射温度計を用いて外筒側面の温度変化を記録した.さらに,ビデオカメラを用いて膨張の様子を記録して,その映像から内筒に触れる試料の長さの変化を読み取った.試料の長さの変化と,モーターが計測したトルクと回転角を合わせて,振動変形では複素粘性率を算出し,一方向へのせん断変形では見かけ粘性率を算出した.
実験は2種類の実験を行なった.
まず,角周波数20 rad/sで内筒を振動させ,複素粘性率のひずみ振幅依存性を調べた.その結果,ひずみ振幅が0.01以下であれば,再現性が良いことがわかった.
次に,一つの試料に,ひずみ振幅0.001の振動変形と,一方向へのせん断変形を交互に与えて,複素粘性率と見かけ粘性率を測定した.多くの高分子について,角周波数とひずみ速度が同じときに,振動時の複素粘性率の絶対値とひねり時の見かけ粘性率は等しくなるというCox-Mertzの経験則が知られている (Marrucci, 1996).気泡流においても,Cox-Mertzの経験則が成り立つことが,実験と近似的な理論から示されている (Llewellin et al., 2002a).その先行研究によると,気泡流における見かけ粘性率と複素粘性率の絶対値は,それぞれ無次元数であるキャピラリ数Ca (∝ひずみ速度) または動的キャピラリ数Cd (∝角周波数) に依存する.しかし,本研究の測定の結果は,Ca数が0.1より大きい場合,見かけ粘性率が複素粘性率の絶対値より有意に小さくなり,Cox-Mertzの経験則は成り立たなかった.さらに,Ca数が大きいほど,見かけ粘性率はより大きく低下した.
Ca数の増加とともに見かけ粘性率が低下することは,せん断変形による気泡の伸長の影響として理解されている (Rust and Manga, 2002b).しかし,本研究では,理論の予測する以上に粘性率が大きく低下している.本研究で用いたポリウレタンフォームはボイド率が非常に大きいことから,見かけ粘性率の低下は,気泡間の相互作用による,さらなる気泡伸長が生じた結果であると考えている.
ポリウレタンフォームをマグマのアナログ物質として用いるにあたって,まずポリウレタンフォーム自体の挙動を把握しておく必要がある.そこで,本研究は,反応過程におけるポリウレタンフォームにさまざまな時間スケールでせん断変形を与えて,粘弾性特性を定量化することを目的とする.本発表では,ポリウレタンフォームに振動変形を与えたときの挙動と,一方向へのせん断変形を与えたときの挙動を比較した結果を報告する.
実験試料は,東邦化学工業株式会社製のポリイソシアネート液(ハイセル360P)とポリオール液(ハイセルHW-408 整泡剤なし)を使用した.
粘弾性の測定は,高性能粘弾性計測装置(AR2000ex,TA Instruments製)をベースにした,共軸二重円筒系の内筒回転式レオメータを使用した.外筒は固定されていて,内筒はモーターに制御されて回転する.本研究では,内筒にはアルミニウム製円柱(半径7.5 mm)を使用し,外筒にはポリプロピレン製ビーカー(半径11.5 mm)を使用した.容器底面から内筒底面までの高さは8 mmとした.
測定中,試料は円筒間に満たされ,発熱を伴いながら膨張し,気泡の体積分率は60%程度に落ち着く.そこで,赤外線放射温度計を用いて外筒側面の温度変化を記録した.さらに,ビデオカメラを用いて膨張の様子を記録して,その映像から内筒に触れる試料の長さの変化を読み取った.試料の長さの変化と,モーターが計測したトルクと回転角を合わせて,振動変形では複素粘性率を算出し,一方向へのせん断変形では見かけ粘性率を算出した.
実験は2種類の実験を行なった.
まず,角周波数20 rad/sで内筒を振動させ,複素粘性率のひずみ振幅依存性を調べた.その結果,ひずみ振幅が0.01以下であれば,再現性が良いことがわかった.
次に,一つの試料に,ひずみ振幅0.001の振動変形と,一方向へのせん断変形を交互に与えて,複素粘性率と見かけ粘性率を測定した.多くの高分子について,角周波数とひずみ速度が同じときに,振動時の複素粘性率の絶対値とひねり時の見かけ粘性率は等しくなるというCox-Mertzの経験則が知られている (Marrucci, 1996).気泡流においても,Cox-Mertzの経験則が成り立つことが,実験と近似的な理論から示されている (Llewellin et al., 2002a).その先行研究によると,気泡流における見かけ粘性率と複素粘性率の絶対値は,それぞれ無次元数であるキャピラリ数Ca (∝ひずみ速度) または動的キャピラリ数Cd (∝角周波数) に依存する.しかし,本研究の測定の結果は,Ca数が0.1より大きい場合,見かけ粘性率が複素粘性率の絶対値より有意に小さくなり,Cox-Mertzの経験則は成り立たなかった.さらに,Ca数が大きいほど,見かけ粘性率はより大きく低下した.
Ca数の増加とともに見かけ粘性率が低下することは,せん断変形による気泡の伸長の影響として理解されている (Rust and Manga, 2002b).しかし,本研究では,理論の予測する以上に粘性率が大きく低下している.本研究で用いたポリウレタンフォームはボイド率が非常に大きいことから,見かけ粘性率の低下は,気泡間の相互作用による,さらなる気泡伸長が生じた結果であると考えている.