JpGU-AGU Joint Meeting 2017

講演情報

[JJ] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM20] [JJ] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2017年5月20日(土) 10:45 〜 12:15 A03 (東京ベイ幕張ホール)

コンビーナ:菅沼 悠介(国立極地研究所)、山本 裕二(高知大学 海洋コア総合研究センター)、畠山 唯達(岡山理科大学情報処理センター)、座長:菅沼 悠介(国立極地研究所)

11:15 〜 11:30

[SEM20-09] 篠窯跡群西山1号窯跡の考古地磁気強度-複数の手法によるクロスチェックの試み-

*北原 優1山本 裕二2大野 正夫3畠山 唯達4 (1.九州大学 大学院 地球社会統合科学府、2.高知大学 海洋コア総合研究センター、3.九州大学 大学院 比較社会文化研究院、4.岡山理科大学 情報処理センター)

キーワード:考古地磁気強度、綱川-ショー法、IZZI-テリエ法、クロスチェック、須恵器古窯

日本における考古地磁気学に関する研究は、近年ますます盛んに行われるようになり、考古学の現場においてもその注目度が徐々に高まりつつある。しかしながら、その実践の多くは標準曲線との対比によって年代決定が可能な古地磁気方位に関してであり、いまだ標準曲線が確立されておらず、実験手法も複雑な古地磁気強度に関する研究は、わずかな例(e.g. 酒井ほか, 2015)を除いてほとんど行われていないというのが現状である。発表者らは、これらの状況を憂慮して、古窯の焼土を用いた考古地磁気強度の復元を数年前より行っている。とくに、既に発掘に伴って試料が採取されているものの消磁がなされていない試料がある遺跡については、強度実験そのものの妥当性を検証するために綱川-ショー法(Yamamoto et al., 2003)とIZZI-テリエ法(Tauxe and Staudigel, 2004)の2種類の実験手法で強度を求め、その値が一致するかどうかクロスチェックすることを試みている。 発表者らはこれまでに岡山県備前市の佐山東山奥窯跡において採取された焼土試料に対してこのようなクロスチェックを行い、2つの異なる手法によって得られた強度値が10 %以内で一致することを確認している(北原ほか, SGEPSS 2016年大会)。

発表者らは今回、新たな事例研究として、京都府亀岡市に位置する篠窯跡群西山1号窯跡の床面から採取された焼土試料を用いたクロスチェック研究を行うことにした。なお本試料に対しては、すでに古地磁気方位測定が実施されており、信頼度が高く、考古学的見解ともきわめて整合的な結果が得られている(畠山ほか, 2017年連合大会)。現時点においては、窯体内から採取された3試片(ブロック試料から加工された1.5 cmキューブ)および焚口の外から採取された1試片に対する綱川-ショー法実験と、同様の場所から採取された3+1試片に対するIZZI-テリエ法実験が終了している。ショー法に関しては、窯体内の3試片から37.6+/-3.8 uT(変動係数=10.0 %, 合格率=100 %)という結果が得られている。また焚口の外の試片のショー法の値は26.3 uTであり、窯体内試料の平均値と有意に異なる値を示すことが確認されている。一方、テリエ法に関しては、すべてのグラフが下向きに湾曲し直線区間が認定できなかった。 今後はとくにテリエ法に関して実験を重ね、手法間でのクロスチェックを進めていく予定である。